差し出されたハンカチの行方(ごめんなさい!)
なんだかんだで、オリエンテーションは無事とは、ほど遠い終わり方した。
(これが続くの…?地獄が続くの…?絶対、後ろの席しか座れないようぅぅぅぅぅ)
散々暴れまわり、満足したように、私の谷間を布団替わりに挟まって寝ている。
それが一番迷惑なんですけど…。
オリエンテーション初日が終わり、私は机に突っ伏して諦めモードに。
そんな私を心配してなのか、となりの亜美ちゃんが私の方に手を置いて心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫?水無瀬さん。顔が赤いけど、熱でもある?」
あああ…、こんな私を心配してくれるなんて女神さま?否、菩薩様?
顔を上げた私はきっと不細工な涙目になってるかもしれないのに、亜美ちゃんはハンカチを私に貸してくれた。受け取ったハンカチを握りしめてしまった。
(人の優しさが染みるぅぅぅ…)
「ありがとう…ぅぅぅ…やざじい…」
「あ、う、うん。ほら、泣かないで?」
涙と鼻水に多少引き気味の亜美ちゃんは、ひきつる笑顔で私を宥める。
受け取ったハンカチで私はこともあろうか、鼻水をチーンとかんでしまう。
「あ!ご、ごめん!あ、新しい…の買って返します!!!」
可愛いハンカチについた鼻水に、私は恥ずかしくなり(自分を呪った…)、リュックを引っ掴んで講義室をダッシュで人の間を器用に回避しつつ飛び出した。
キャンパスを通り抜け、そのまま坂の下の駅まで息をつく暇もなく走り抜けた。
「ふぁ…!目が回るおぉぉぉ…!」
寝ていたミズチが突然の、揺れで目を覚まし叫ぶが無視!
(明日から、顔を会わせにくくなるじゃんかーーっ!)
ホームに入って来た電車に飛び乗り、私は空いていた席に座りやっと気持ちを落ち着かせることができた。
周囲の視線なんて、今は気にしていられない。
(ショッピングモール、よって帰ろう…新しいハンカチ、明日…返そう)
電車が動き始めた。
「カイ、酷い…目、回った…ぉ…」
脳内でミズチの非難の声がするが、私はオリエンテーションの間の事を思い出し、背負っていたリュックを胸元で強く抱きしめた。(お返しです)
「ふぅぎゃ…!潰れるぅぅぅ!紐になっちゃう!カイ~(涙目)」
胸元が激しくぴょんぴょん動くが私は構わず、しばらく解放してあげなかった。
オリエンテーションの間、普通の人には見えないことをいいことに、お隣さんの亜美ちゃんの前でとぐろを巻いて小さな口を開けて、シャー、シャー、威嚇したりちょろちょろしたりしていたのを思い出し、なおさら、お仕置きをすぐに(八つ当たりもチョット、あるけど…)
傍から見ると、ひとりで何かわけの分からなに事をと見えてるんだろうなぁ。
「視ることのできない人が羨ましい…」
言っても仕方ない事を私は、ぽつりとつぶやいた。
そんな私の前を、黒髪の三白眼(靈影暁人)が通り過ぎたことに私は気づかなかった。
相手も、一瞬こちらを一瞥しただけで、何事も無く隣の車両に消えていった。
(疲れた…)
押さえていたリュックをシートに置いた私はただただ、今日の事を忘れられないだろうと、頭を抱えるのだった。
誰か、私を助けてぇ!




