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白人少女と浮浪冒険者  作者: 逆張りオタクの天照大御神


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終わりの始まり

前話の続き


 熱い抱擁を思う存分に交わした後、王様の誘いでテスターとピュアは玉座の間に来ていた。


(随分、警戒しているな…)


 ピュアは依然として、テスターの後ろにくっついて王様と顔を合わせようとはしない。


「悪いけど、もう少しだから我慢してくれ」


「うん…」


「所でテスターよ、今日は泊って行くのだろう?」


「そうしたいけどモンスターのこともあるし、こいつを一人にする訳にはいかねぇんだ…」


「そうか…」


「悪い父さん…」


 この場には兵士はおらず、硬い呼び方をしなくて済むので普段通りに王様を父と呼ぶ。


「王よ、テスターももう子供ではありません」


「だが、大臣よ…」


 兵士がいないとは言ったが、王の側近であり大臣でもあるこの男はいる。


 名をウォー・スキーマーと言い、テスターとの付き合いは王様であるヴァイスと同じくらい長い。


 彼もまた、両親がいないテスターを息子同然に思っている。


「我儘を言ってはいけません、確かに幼い少女と言うのはあれですが」


「ちょっと待ってくれ!?」


「ですがテスターなら安心でしょう、我々の自慢の息子です。きっと誠実な付き合いをしているはずです」


「だから、こいつはそういうのじゃ」


「そうだな、儂らの自慢の息子であるテスターが年端も行かぬ少女を誑かしているはずが無い」


「…誑かす?」


「お前は知らなくて良い言葉だよ」


「…?」


「とにかく、父さん達は誤解してる」


「誤解?」


「ふふっ、テスターよ」


「…何だよ」


「彼女でも無い女性に、自分の服を着せませんよ普通」


「……確かに」


「つまり、その少女はテスターの妾であることは間違いない!これは国を挙げて祝うしかあるまい!」


「だから違ぇって!?」


「王よ、流石に気が早いです。まずは二人の家と指輪、それから赤ん坊用品を用意してからです」


「大臣も充分に気が早ぇよ?」


「おおっ、そうじゃった準備を怠っては行けんからのう」


「いや、だから俺とピュアは付き合ってもいないんだって」


「安心せい、夫婦の営みの邪魔はさせん!」


「もう好きにしてくれ…」


「……して、テスターよ」


「何だよ大臣、改まって」


「我が国の軍隊に、再び戻る気は無いか?」


「…!」


 実は冒険者になる前、テスターは軍に所属していたが事情があり、辞めてしまった。


「大臣、その話をしないと約束しただろ」


「ですが王、今この国は―――」


「悪い大臣、まだ戻る気はない…」


「…そうですか」


 申し訳なさそうに答えるテスターに、大臣も言葉を飲み込む。


「…何れは戻りたい、もう少しだけ時間をくれないか…?」


「構いませんよ、言ったでしょ?貴方は我々の大事な息子なのですから」


 この国は今、危機にあり抗ってはいるものの、滅びが顔を出している。


 その為、無理な願いとは分かりつつも頼んだのだ。


 だが戦争で沢山の人を殺めてしまい、精神を疲弊させてしまった。


 暫く引きこもりとなってしまっていたが、ある日モンスターの大群が国を襲って来たのだ。

 

 モンスター達は手強く、兵士達が数人掛かりでも一匹すら倒せない。


 当時、部屋にいたテスターでもその異変はすぐに感じた。


 戦いたくは無いが、これでは国が危ないと察知し、震える身体を抑えて外に出て軍に加わる。


 そして戦いは終わり、このままでは人ではなくモンスターに国を滅ぼされると考えたテスターは軍を辞める代わりに、モンスターを討伐する冒険者になるのを条件として正式に軍を辞めた。


「すまん、大臣…」


「謝らないで下さい、貴方の傷は我々の傷でもありますから」


 大事な息子に、そんな思いをさせてしまった事でヴァイスもウォーも傷を負った。


 自業自得ではあるものの、胸の内を察してやれなかった罪悪感は今も残っている。


「そうじゃテスター、モンスターはどうだ?」


「それが全然減らねぇんだ、毎日倒してはいるんだけど…」


「むっ、お主の実力でも数を減らせないとなると軍の者を遣わすしか…」


「ですが、我が国にそこまでの人手がありません」


「だが、これでは数年前の二の舞ではないか…!」


(父さん…)


 数年前、モンスターの大群に襲われ滅びかけた歴史のあるミリタリー王国。


 その上で今も尚、他国との戦争が続く中で王国は限界を迎えていた。


 テスターがピュアを王城に連れて行くことを危惧していたのかは、こういう理由だ。

 

(けど、このままじゃ何も変わらねぇ…)


 国も、テスター自身も。


 愛する人、愛する国を守る為に立ち上がらなくてはいけない。


 だが、いざ戦争に加わることを想像すると震えで動けない。


(くそっ、父さんと大臣が困ってるのに、俺は何も出来ねぇのか…?)


 自分の無力さに打ちひしがれ、拳を強く握る。


「テスター、大丈夫…?」


「すまん、しばらく一人にしてくれ…」


 ヴァイスとウォーに別れを告げ、王城を後にする。


 マスターとマダムの家にピュアを帰らせ、テスターは一人自宅に戻る。


(俺は、俺は一体どうすれば良いんだろうか…?)


 その答えを教えてくれる者はいない。


 静かな夜に、瞼を閉じようとした時だった。


「我が焔に焼かれよ!上位魔法・煉獄の業火!」 


(魔法!?しかも上位魔法!)


 テスターの家が一瞬で燃え尽き、炎は隣家(りんか)にも燃え移っている。


 下位魔法は焚火が出来る程度の炎。中位魔法は火事のような燃え盛る炎。


 そして上位魔法は家を数軒、一瞬で燃え尽きる程の業火だ。


「おいおい、隣の家にも人は住んでるだぞ!」


(一体、どういうことだよ…!)


 何とか脱出したものの、悲鳴が聞こえる。


 助けようと思った時には遅く、悲鳴は鳴り止み、家も炭に変わってしまった。


 ここまでの魔法と躊躇の無さは、相当な手練れと見て良いだろう。


 だがテスターには分からないことがある。


(何で俺が、狙われてるんだ!)


 そもそも、この家は親しい者にしか教えていない。


 どこから漏れたのか、親しい者の中に自分の命を狙う者がいるのかは分からない。


「何だよ、ガキは一緒じゃねぇのか」


「…誰だ、てめぇは」


「名乗る程のものじゃねぇよ、ミリタリー王国軍最強の兵士テスター・サブジェクト」


「…俺の名前を知ってるのか」


「まぁあんたは有名だからな、俺も割と名は知られてるんだがな」


「それで、何が目的だ」


「ふん、わざわざ言うかよ」


「…そうか」


(命を狙われるような覚えは無い、つーかさっき「ガキ”は”」って言ってたよな…?)


 この男の目的はテスターではない誰か、と言うことになる。


(ガキって、命を狙われるようなヤバい子供なんか知らな―――)


「お、お前!まさか…!」


 一人だけ、身に覚えがある。それはピュアだ。


 白人であることを誰かに知られたのだ。

 

「何だ、気付いたか」


(いや、だとしたら何でバレた!)


 街中を歩いてた時か、門番が勘付いたか、城内の誰かが気が付いたのか。


 マスターとマダムが怪しくない訳じゃないが、もしそうなら寝ていた時にでも襲えば良い。


 だがそれをしなかったと言うことは、あの二人ではない。確実に、絶対に違うとは言い切れないが可能性はかなり低いだろう。


 ならば街中か、城内の誰かに気付かれてしまったのが妥当だ。


(このままだとピュアが危ない、急いで戻らねぇと!)


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