王様との邂逅、もしくは
「んんっ……」
「ふわあぁ~……」
「おいおい、マジか」
「来ないと思って、起こしに来たら…」
「おはようマスター、マダム」
「おはようピュアちゃん」
「おはようピュア、それで?これはどういう状況だ?」
「状況…?」
「あんたとテスターが何で、同じベッドで寝ているんだい」
「……どうして?」
「どうしてって、こっちが聞いてるんだよ…」
「分からない、多分スターが悪い」
記憶が無いのか、とぼけているだけなのかはピュアのみぞ知る。
「…まぁ良いや、とりあえずテスターを起こして降りて来な」
「朝飯にするぞ」
「ご飯…!スター、起きて」
「んっ、何だよ、もう朝―――」
「スター?」
「……そうだ、俺こいつと一緒に寝たんだ」
昨晩の出来事を思い出し、自分の家ではなくマスターとマダムの家に泊まったことを思い出す。
「早く、ご飯出来てる」
「はいはい、今行きますよ」
裾を引っ張ったり、バシバシと叩かれながら眠気の残る体を起こす。
(てか叩き過ぎだろ、どんだけ飯が食いたいんだ)
とは言え昨日の出会った時と比べると、随分と明るくなった。
最初はこんなことになるとは想像もしていなかったが、楽しそうなピュアの顔を見れるのは悪くない。
「スター、何で笑ってる?」
「何でもねぇよ、ほら行くぞ」
階段を降りて、一階の食卓に顔を出す。
「おはようテスター、朝飯は出来てるよ」
「つーか、俺まで良いのか?」
「元々子供が二人居たんだ、今更戻ってきた所で構わんさね」
「んじゃ、お言葉に甘えて頂きますか」
「にしてもテスター、ヤるなら俺らがいない時にヤれって言ったろ」
「何の話だよマスター」
「何の話って、お前ピュアちゃんと一緒に寝てただろ?」
「……見られてたのかよ」
「盛んなのは良いが、時と場所と場合を選べ」
「いや一緒に寝はしたけど、ヤってはいねぇよ」
「そうさ、臭いもしなかったし服もちゃんと来てたんだから」
「マダム…!」
「大体、ヤるなら一晩じゃ済まんだろ」
「マダム…?」
「テスターだって男の子なんだ、こんな可愛い女の子相手なら三晩ぐらいは余裕さね」
「俺、性欲の権化か何かだと思われてる?」
「スター、性欲って?」
「子供は知らんくて良いことだ」
「私子供じゃない、18」
「へぇー、何だ同い年なのか」
「意外とお姉さんなんだな」
「お姉さん?」
「大人って意味さ、これなら心配ないさね」
「……待て、お前18なの?」
「うん」
「同い年なの?」
「うん」
「………マジか」
白人はその強力な魔法を使用するに辺り、膨大な魔力を要するせいか栄養が体全体に行き渡らない為、見た目が幼いことが多い。
ピュアもその例に漏れず、見た目と年齢が合致していない。
「テスター、あんたこんなことも知らなかったのかい」
「学校で習わんかったのか?」
「うーん、習ったような習わなかったような…」
ある程度は知っているものの、白人が存命と言われていた時代を生きたマスターとマダムはともかく、絶滅したと伝えられたテスターは、深くは聞いていなかった。
ハンバーグに肉を使うことは知っているものの、細かいレシピを知らないようなものだ。
まぁ料理をしないテスターなら仕方が無いだろう。
「それより早く食べな、ピュアがあんたの朝飯を欲しそうに見てるよ」
「うおっ!?本当だ、急いで食うか…」
「あっ…」
涎を垂らして見つめてくるピュアを無視し、朝食を掻き込む。
「ごちそーさん!」
食べられる前に、ピュアが我慢出来なくなる前に食べ終わる。
「……」
隣を見ると、物足りなさそうに指を咥えている。
「おかわり、いるかい?」
「いる…!」
「じゃあ、ちょっと待ってな」
そう言うとマダムは、席を離れた。
昨日も思ったが、ピュアは本当によく食べる。
追い出された理由が食費の問題なのでは?と思ってしまう程。
(実際には、そんな事はないんだろうが)
30分程すると、マダムが大量の料理を運んできてピュアは来た料理を全て平らげた。
「ははっ、本当によく食べる子だね」
「マダムの料理、美味しかった」
「ありがとう、あんたの食いっぷりも見事なもんだったよ」
「よし、飯も食ったし仕込みをしてくるか」
朝食を済ませ、マスターが最初に席を立つ。
「んじゃ俺は、仕事に」
それに続き、テスターも席を立とうとしたが。
「どこに行くの、スター」
「仕事だよ、モンスターはまだまだいる。この国を守るのが俺の仕事なんだ」
「私も付いて行く」
「ダメだ、お前はここにいろ」
「どうして」
「外に出て白人だとバレたら、お前の身が危ない」
「むっ」
「あと今日は城に行くんだ、王様はともかく周りの連中がピュアの魔法に興味を示さないとも限らない」
「むむっ」
「もしバレた時に、俺がお前を守り切れる保証はない」
「むむむっ」
「だから連れて行けない、行くにしても明日だ」
「……分かった」
(全然分かったって顔してないが、まぁ無理矢理付いて来ることも無いだろ)
これから王様と会おうと言うのに、冒険者としての服のままでは無礼千万。
それには一度、自分の家に戻り身なりを整える必要がある。
罰が当たれば身を滅ぼすと言っても過言ではないぐらい、テスターにとっての王様と言う存在は大きい。
だからと言って、無闇に信用しピュアが傷付くことにはしたくない。
口元以外を隠せるコートであれば、バレないだろうが問題は別にある。
それは隠し切れない彼女の魔力だ、常人であれば恐怖を持つ程の大きな魔力。
王様は魔法を使えないが、隣にいる大臣は元魔法使いだ。
今は大臣としての手腕を振るうべく、戦線には立たなくなってしまったが、テスターが生まれる前は王国最強の魔法使いとして名を馳せていた。
そんな者が白人の魔力に気が付かない訳がない。
大臣も人柄は良いが、国を案じるものとして白人を利用する手を考えないことは有り得ないだろう。
(どういう扱いでも、この子には手出しさせたくねぇ)
例え優遇されようと、女の子が戦線に立つことになるのはテスターとしては避けたい。
「じゃあなピュア、留守番を頼むぜ」
明らかに不機嫌そうにしているピュアを置き去りにし、まずは一度自宅に帰る。
散らかってはいるが、王様に会う時の服装だけはそれなりに綺麗にしている。
早速着替え、何十Kmも離れた王城に足を運ぶ。
純白の大きく、そして美しくもある城に辿り着く。
門には門番がおり、普通であれば許可証を発行しなければ関係者以外は立ち入り禁止だ。
「あ、あの顔は…!」
(やっべ…)
「やはり間違いない、貴方はテスター・サブジェクト様ですね!」
「…人違いだ」
「ならば何故、王城に来ているのですか。王にお会いに来たのでしょ?」
「そ、そうだが、様呼びは止めてくれ…」
「では何と、お呼びすれば…?」
「テスターで良い」
「分かりました、ではテスター殿と」
「ああ、それで良いよ」
(まぁ、様呼びされるよりはマシか…)
「して、後ろのサイズの合っていない服を着た少女は?」
「こいつは昨日迷子になってた所を見つけて、保護して――――って、何で居んのお前!?」
そこにはピュアがいた。
「付いて来た」
「付いて来た、じゃなくて!」
あれだけ言ったにも関わらず、ピュアはテスターに付いて来てしまった。
「スターだけずるい」
「ずるいって、子供の遠足じゃねぇんだよ」
「でもスター、楽しそう」
「…!まぁ、そりゃ楽しみではあるがよ」
「だから私も付いて来た」
「だとしてもだ、お前はここに入れねぇよ」
「どうして?」
「ここには関係者か王様から直々の許可証を貰った人間しか、入れねぇんだよ」
「それなら問題は無かろう」
「問題だらけだ、こいつを入れる訳にはいかねぇ」
「何故だ?」
「何故って、王様に会いに行くのに、こんな格好の少女をあげる訳にはいかねぇだろ」
「儂は気にせんぞ?」
「そりゃ王様は優しいし、許してくれるだろうけど、それとこれとは別問題だ」
「す、スター……」
「どうした、何かあったか?」
「こ、この人…!」
「この人?………って、王様じゃねぇか!?」
何事かと振り向くと、そこに居たのはミリタリー王国国王ヴァイス・ミリタリーその人である。
「むっほほほ久しいのう、テスター」
「お、お久しぶりです!」
「よせ、儂とお主の関係だ。敬語など要らぬよ」
「で、でも…!」
「要らんと言っておろう、確かに儂は王ではあるが、その前にお主の父親だ」
「っ、父さん…!」
「むほほ、出会って早々に息子に抱き締められるとは、親冥利に尽きるの」
テスターは王様の息子ではあるが、捨て子なので本当の親子では無いが。
「けど、何で門まで来たんだ?」
「何を言う、月一で可愛い息子に会えるのだ。親なら飛んで駆けつけるのが当然であろう」
「そっか…!」
二人は会えなかった時間を埋めるように、抱き合った。




