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白人少女と浮浪冒険者  作者: 逆張りオタクの天照大御神


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13/17

真実に迫る日、もしくは



 4人が寝静まる頃、大臣はピュアを探し続けていた。


「やはり、テスターには敵いませんでしたか」


「だ、大臣…?な、何であんたが、ここに…」


「それで、白人の少女はどこに行きましたか?」


 ブレイズの傷を心配する素振りすら見せず、ピュアの居場所を聞き出す。


「悪いが、知らねぇよ…」


「会ったはずでしょ、向かった方角を教えなさい」


「だから、知らねぇって…」


 出会ってもいない相手のことなど、分かるはずもない。


「ならばテスターはどこに」


「さぁな、俺を倒してどこかに向かったよ…」


「ですから、どこに向かったかを教えろと言っているでしょ!」


「がはっ…!?だ、大臣、てめぇ…!」


 容赦無く傷口を蹴られ、動けないブレイズは精一杯の抵抗として睨みを利かせる。


「負け犬が何をしようと運命は変えられない、言いなさい。テスターは、あの化け物はどこに行った!」


 だが重傷で動けない者の睨みなど、意味はない。


「……向こうだよ」


「それで良い、城の者には貴方の救援を要請してあります」


 ここで貴重な戦力に死なれては困るのか、それとも民間人に軍の人間が街中で倒れているのを見られるのが困るのか。


(相変わらず、仕事の早い奴だ…)


 ともかく大臣は、ブレイズに教えられた()()()()にテスターとピュアを探しに向かった。



 *  *  *

 

 日が昇り、昨夜のことを悪夢のように思い出す。


「……」


「……スター?」


 目覚めは最悪だが、無事でいてくれているピュアを見ると安心する。


「なぁピュア、お前は王様が悪だと思うか…?」


 そして昨日から気になっていたことを聞いた。


「あの王様、凄く黒かった」


「……そっか」


 何の迷いも無く断じられ、色々な感情や考えが重荷となる。


 ピュアの言うことが正しいのであれば、何かを企んでいるのは確かだ。


(つっても、俺は優しい顔の父さんしか知らねぇ…)


 悪事など無縁だと思っていた人間は、一番身近な人間な可能性がある。


 何も分からないが、何かを知らなければならない。


 外せない重りを外そうと、頭を悩ませているとドアを軽く叩く音が鳴る。


「テスター、ピュア起きてるかい?」


「ああ、起きてるよマダム」


「…朝飯、出来たよ。食べるかい?」


「……貰うよ」


「なら降りて来な、準備は出来てるから」


 考え事をしていても、腹の虫の機嫌は変わらない。


 何をするにしても、食事は大事だ。


 重荷を降ろす為にもマスターとマダム、テスターとピュアの4人で食卓を囲む。


(どうすれば、ピュアと一緒に…)


 いられるのだろうか、このままではピュアが満足に生きることは出来ない。


 白人が絶滅したと言ったのは、他でもないヴァイスだ。


 ブレイズが改造を受けたのは間違いなく、その後。


(……父さんは、嘘を吐いている)


 なら一体どうして、そんな嘘を吐いたのか。


 白人を守る為か、それとも白人を捕らえ我が力にする為か。


 黒と言うことは後者の方が近いのだろう。


 ならば何故、そんなことをする必要があるのか。


 国の為か、他の目的があるのか。


(……俺には、分かんねぇよ)


 大した学も無いテスターには、何も分からない。


「テスター、大丈夫かい…?」


「ああ、大丈夫だよマダム…」


「……」


 口では言うが、顔は酷く落ち込んでいる。


 気負わない言葉を掛けたいが、マスターもマダムも傷心中。


 テスターの方が傷付いていると分かっていても、掛けられる言葉に覚えがない。


「俺、王城に行く」


「…!」


「……ダメだ、行っちゃいけねぇ」


「止めないでくれマスター、決めたんだ」


「ダメだ、行ったらお前がどうなるかが分からねぇ」


 ヴァイスが悪人であるのなら、例え拾い自分の子供として育ってた義理の息子だとしても。


 悪事をバラされないように、どんな仕打ちをしても可笑しくはないがマスターが心配しているのはそこではない。


 育ての親が悪だと分かれば、計り知れない悲しみが、後悔の海にテスターが沈んでしまう。


 そうなった時に、モンスターから国を守り続けているテスターの役目を誰が補えるのだろうか。


 それこそ国にとっての損失であり、マスターやマダムだけでなく他の皆が苦しめば一番苦しむのはテスターだ。


 トラウマがあっても尚、国を守ろうと人々を守る為に生きているテスターの悲しむ姿をマスターが見たくない。


「それでも、行かないといけない気がするんだ」

 

 全てを理解した上で、テスターは真実を確かめないといけないと感じた。


「…!そうか」


 覚悟の灯を宿した瞳に、同じ誰かを守る立場として、その炎の大きさを前に退く。


「ちょっとアンタ!」


「俺達じゃ、止められねぇし止めて良い理由にはなれない」


 この大きく燃え盛る炎を消せる者は、いない。


 昨夜は使えなかった剣を手に、テスターが出ようとした時。


「スター」


 ピュアが声を掛けた。


「お前の頼みでも、俺は」


「私も、連れてって」


「連れて行けって、でもお前」


 ピュアは魔法が使えない。魔力があるにも関わらず、そのせいで見捨てられたと言っていたのに。


(いや、そもそも何でピュアを逃がしたんだ…?)


 いらないと捨てたのなら探す理由が無い。


「私、魔法使える」


「使えるのか!?」


「うん、嘘吐いてた」


「じゃあ、使えないから見捨てられたってのは」


「それは本当」


「…?」


 曰く、見張りの人間に言われ逃がされたと言うが、誠に信じ難い話ではある。


(逃がす理由は何だ…?)


 逃がしたことがバレれば、その見張りの人間の立場も危ういはず。


 しかも隠蔽している白人の存在となれば、首を狙われても可笑しくはない。


 そんなことをするメリットなど、無いはずだ。


(誰かに、見つけて欲しかったのか…?)


 危険を犯してまで、国の悪事をバラしたかった善人と言うのが一番納得出来る。


(まぁ何にせよ、こいつがここに居れる理由ではあるが…)


 少し不思議ではあるが、今はもっと大事なことがある。


「スター?」


「何でもねぇ、それよりもピュア」


「何?」


「お前の魔法って、どういうのなんだ?連れて行くのは良いが、魔法次第じゃ置いて行かなきゃいけねぇ」


 戦闘力が数倍になるとか、巨人になれるとか、ビームを打てるだとかでないと万が一が不安だ。


「結界魔法」


「随分あっさり言うのな」


「ダメ?」


「ダメじゃねぇけど、俺とかマスターとマダムなら良いけど…」


「なら大丈夫」


「そ、そうか…?」


「うん」


「なら良いけどよ、人は選べよ…?」


「人なりが分かるからこそ、信用してんだ。ピュアはピュアで選んだんだろうさ」


「た、確かに」


「そう言えば、ずっと気になってたんだが俺達は何色に見えるんだ?」


「今聞くことかよ」


「気になるもんは気になるんだ、別に良いだろ」


「マスターとマダムは明るいオレンジ色」


「オレンジってことは、良いってことか?」


「二人共、凄く優しい感じ」


「あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない」


「へへっ、そうか優しい感じか…!」


 2人してピュアに褒められ照れくさそうにしている。

 

 息子しかいないからか、可愛いく見えるのだろう。


「じゃあ、テスターは何色に見えたんだい?」


「俺のも聞くのかよ」


「当たり前だろ?初対面で信用するだなんて、よっぽどだよ?」


「確かに…」


 出会ったのが一昨日だと言うのに、途轍もない信用度。


 一目惚れのゾッコンか、前世で固い絆で結ばれたのかと疑いたくなる程だ。


 傍から見ていても、どうしてなのかが気になるらしい。


「スターは、黒い光」


「黒い」


「光?」


「うん」


「……どういうこと、それ」


 相反する属性であろう2つが、見えているのは不思議なものだ。


 もう少し詳しく言うと、太い黒線の中が輝いて見えると言うが理解するには誤差だろう。


「分からない」


 まぁ当の本人も、よく分かっていないらしいので3人が理解出来ないのも仕方がない。


「分からねぇのかよ」


「でもスターは優しいから多分、良い意味」


 真っ直ぐな綺麗で、美しい笑顔に少し照れくさくなる。


「…まぁ、お前が言うならそうなんだろうけど」


 どこか納得のいかない気もするが、悪い意味ではないのは確かだろう。


(黒いってのが、ちょっと気になるが)


「照れてる?」


「照れてねぇよ!?」


「違うの?」


「恥ずかしいから嘘吐いてんのさ」


「ちょっマダム!?」


「そうなの?」


「ち、違う!」


「違うって言ってる」


「嘘に決まってるさ、どうせ好きだってバレたくないだけさね」


「そうなの?」


「だから違う!」


「これも嘘?」


「ああ、大嘘さね」


「~~~っ!」


「スター、顔が真っ赤」


「赤くねぇ!」


 限界に達したのか、テスターは寝室に急いで行ってしまった。


「全く、素直になれば良いのにね」


「やっぱテスターは、こういう子が好みだったんだな」


「もう俺のことは良いから、話を戻すぞ!」


 どこか嬉しそうにしている2人を無視して、ピュアに魔法のことを聞く。


 ピュアの魔法は結界魔法と呼ばれるもので、範囲内に様々な条件を付けることが出来るのだと言う。


 例えば、1Km以内の食べ物は全てピュアのものになると条件をつければ、1Km以内の食べ物はピュアの元に来る。


 逆にすれば、ピュアは1Km以内の食べ物を食べることが出来なくなる。


「よく分かんねぇけど、凄い便利そうだな」


「うん、これを使えば沢山食べれる」


「お前あれ、魔法で食ってたのかよ!?」


「今更?」


「道理でおかしいと思ったよ…」


「それだけの魔法を食べることに使うなんて、どんな食い意地だい」


「美味しいものは全部、私のもの」


 とんでもない強欲発言に軽いドン引きをしつつ、テスターは一つ疑問に思う。


「…だったら何で、魔法が使えないって言われたんだ?」


「魔法は使える、でもいつ使えるか分からない」


 ピュアは自分でも発動条件が分かっておらず、そのせいで使えないと言われていた。


「でも、飯を食う時は使えてるんだろ?」


「うん」


「なら条件はある、ってことだよな」


「でも、ご飯以外で使えたことない」


「…じゃあ飯なんじゃねぇのか」


「けど、魔法ってのは発動条件があるようなものじゃないだろ」

 

 マスターの言う通り、魔法に発動条件は無い。強いて言うのなら魔力があるかどうかだ。


「気持ちの問題じゃないのかね?」


「そんな簡単な話だとは思えねぇけど」


「お前も、魔法が使えるんだし何か分からないのか?」


「うーん、そうは言われてもな…」


 考えたこともないので、テスターもさっぱりだ。


「大丈夫、頑張れば使える」


「本当か?」


「多分」


「多分って…」


「だから私も連れて行って、スター」


「…足は引っ張んなよ」


「分かった」


 どこか自信あり気な表情に惑わされた訳ではなく、真剣な眼差しで自分を見るピュアが信用に値すると思った。


 昨日の話ではピュアは同じ白人を救いたいと考えていると聞いた、仲間を救いたいと思う気持ちをテスターはよく理解している。


 それが、テスターが魔法を扱えるか分からないピュアを信用に値すると思った理由だ。


 その時、ドアを誰かがノックする音が鳴る。


「こんな朝に誰だい」


「…もしかしたら、また大臣かもしれねぇ」


「大丈夫かい…?」


「昨日は何も無かったんだ、大丈夫だろう」


 マスターはテスターとピュアを、視界に入らないように言いながら扉を開けた。


「昨日の今日で申し訳ありませんマスター」


「大臣か、まだ見つかっていないのか?」


(兵士もいるってことは、結構な大人数で探しているらしいな…) 


 居たのはやはり、大臣だった。

 

 しかし昨日と違うのは護衛として付いている兵士2人がいること、そして隙間から見えるのは他の大勢の兵士達。


「ええ、一晩中探していたのですが手掛かり一つすら…」


「そうかい、悪いけど俺も何も知らねぇ」


「もし、こちらに来ていればと思ったのですがね」


「すまんが、他を当たってくれ」


「ええ、そうすることにします。一応少女を見つけたら、ご連絡頂けますか?」


「ああ、必ずするよ。大臣には世話になってるからな」


「恩に着ります、それではまた」


 昨日と同じく、何事も無く去っていた。


 だが、2日連続で訪れていると言うことは確実にバレているのだろう。


 このままでは数時間もしない内に、ここを訪ねるに違いない。


(この家に居るのは危険だ、マスターとマダムを巻き込むことになる)


 かと言って、外に出れば大臣や他の軍の兵士達と出くわすかもしれない。


 事情を知らない兵士達と言えど、少女であることは伝わっているはず。


 それにテスターの顔を知らない兵士は少ない。


 まず間違いなく声を掛けられるし、大臣も声を掛けてくるだろう。


「テスター、ピュア」


「何だ、マダム」


「結界の魔法なら、何とか出来るんじゃないか?」


「何とかって、どうするんだよ」


「例えばだけどさ、一定範囲ならバレない!みたいなのは出来ないのかい?」


「マダム、魔法ってのは全能じゃないんだ。そんな都合良く出来る訳が―――」


「多分、出来る」


「出来るのかよ!?」


「じゃあ、それを!」


「でも、出来るか分からない…」


「……そうかい」


 何が問題なのか分からないが、ピュアは思い通りには魔法を使えない。


 不安そうにするピュアを、今慰めるのは少し難しい。


(何か言えれば良いんだろうけど、私には何も言えないさね…)


 魔法を使えないマダムでは、励ますことは出来ない。


「大丈夫だ、ピュア」


「大丈夫…?」


「お前は俺が守る、何があってもだ」


「…!」


「だから魔法を無理に使おうとしなくて良い、お前はお前のままでいれば良い」


「テスター…」


「……分かった、私頑張る」


「頑張るって、そのままでも」


「私とスターが皆に見えないようにした」


「はい?」


「やったら出来た」


「この一瞬でかよ!?」


「でも、声は聞こえてるさね」


 周囲を見ながら、マダムはそう言う。どうやら本当に見えていないらしい。


「姿が見えないだけ、音は消えない」


「なるほど?」


 声は聞こえているようで、会話は出来る。


「何か、お化けみたいで怖いな…」


「何ビビってんだい、相手はテスターとピュアだよ?」


「だ、だけどよぉ」


 意外と怖がりなのか、マスターはどこか怯えている。


「これが出来るってことは、外に出てもバレないってことだよな?」


「音を出さなかったら、気付かれない」


「なら、このまま外に出て父さんに会いに行く」


「…止める気は無いが、本当に良いのかい?」


「……父さんが悪かどうかは分からねぇ、でも囚われてる人達がいるんだろう?」


「うん」


「だったら、その人達を助ける。それが一番先だ」


「そうかい…」


「大丈夫だマダム、心配はいらねぇよ」


「……気を付けて、行ってくるんだよ」


「ああ、行ってくる」


 テスターとピュアは、扉を開けて出て行った。


 誰かを助ける為に、真実を確かめる為に。


(父さん、あんたは一体何が目的なんだ…?)


 多くの疑問を抱えながら、兵士の波を掻き分けて王城へと辿り着いた。


「そういや、どんくらいまで魔法が掛かってるんだ?」


「もう切れた」


「……は?」


「おおテスターよ、昨日ぶりだな。どうしたんだ?」


「と、父さん…!」


「それに、少女も一緒みたいだが」


「あ、ああ、実はちょっと野暮用があってさ」


「ほう…?まぁ良い、上がりなさい」


「ありがとう、でも今日は良いんだ…」


「どうしたんだ、いつになく暗い顔をして…?」


「…………父さんは何で、()()()()()()()()()()()()()()()()


「……誰に、それを」


「ち、違うなら良いんだ!違うなら…」


「…付いて来なさい」


「どこに…?」


「地下じゃ、そこでこの国の真実を見せよう」


 唾を飲み込み、2人はヴァイスの後を付いて行った。


あと3つぐらいで終わりの予定

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