危険の訪れ、もしくは
「大臣、どうしたんだ。こんな時間に」
「いえ、実はちょっと野暮用がありまして」
「野暮用…?」
「少女を探しているのですが、ご存知ありませんでしょうか?」
「…!」
大臣が国民一人を探すなど、本来なら有り得ない。
だが、これが有り得てしまう状況をマスターは知っている。
(な、何でバレて―――)
白人の魔力は高く、かなり特殊だ。
王国最強の魔法使いと呼ばれた過去がある大臣なら、尚更気が付かない訳が無い。
マダムは勘付いた、信じられない話ではあるがピュアの感じたものは正しいのだと。
絶対に渡すものか、危険に遭わせるものかと強く抱きしめる。
「何やら行方不明になった子がいるらしく、捜索をしているのですが」
「…悪いが大臣、俺達は知らねぇ」
バレバレの大噓だ。マスターも体格は良い方だが、軍にいたことがある訳でも、魔法を使える訳でもない。
戦えば確実に負けるだろうが、それでも子供の命を差し出すことはしたくない。
「そうですか…」
「力になれなくて、すまんな」
「いえいえ、ではもし見かけましたら一報頂ければと思います」
「ああ、その時は連絡するよ」
大臣は、あっさりと何事も無く帰って行った。
(…行った、のか?)
一般人を相手に、わざわざ危険を犯せば大臣は自分が黒であると自白するに近い形になる。
そうなれば今の自分の立場と、王様を危険に晒すことになってしまう。
マスターとマダムは大臣にも認知されている、白人を利用するとは思えないと言うのもあり、一度引き下がる判断をした。
例え、嘘を吐いていると分かっていても。強引な手段を取るのは今ではない、と。
しかし大臣は知る由も無いだろう、訪ねてしまったことで自分が真っ黒だとバレたことに。
(大臣が黒、ってことは王様も恐らく…)
マスターとマダムの中で、信じたく無いことが確信に変わる。
一体、何が目的なのかは分からないがピュアを渡すことは出来ない。
「アンタ」
「ああ、テスターを呼ぼう」
「そうさね、あの子なら安心出来る」
「マダムあの人、凄い魔法使い…」
テスターの身を案じているのか、不安げにマダムの服の裾を掴む。
魔法は使えないが魔力がある以上、相手の魔力を感じることが出来る。
その量からピュアは大臣が、相当な魔法使いであることを見抜いていた。
「安心しな、テスターはそれ以上さね」
魔法は使えず、戦闘の経験も無いマダムだがテスターが国で一番強いことは知っている。
「…うん」
とは言え、ピュアもテスターがどれだけの強さかは知らなくとも、その魔力の多さを出会った当初から感じている。
しかし、それでも不安に感じ身を案じるのは何か特別な感情があるのだろう。
(随分、可愛い子に好かれてるじゃないかテスター)
尚更この子を渡す訳には行かない。本人の為にも、テスターの為にも。
「…ちょっと出てくる」
「任せたよ、アンタ」
静かに頷き、マスターは外に出て行った。
その一方で、テスターは傷だらけの体を引きずりながら、マスターとマダムの自宅へと向かって行った。
(は、早くピュアが危険だって伝えねぇと…!)
まだ二人の自宅までは距離がある。そこまで遠くは無いが、近くも無い。
「テスター!?どうしたんだ、その傷は…!」
「ま、マスター…?どうして、ここに…」
「それより、お前の傷は誰にやられたんだ!?」
「じ、実は―――」
テスターは襲撃を受け、自宅が炎上したこととピュアが狙われていることを伝えた。
「ま、マジか…そっちにまで手が…」
「そっちにまでって…!」
「さっき大臣がうちに来た」
「…!」
「行方不明になった少女を探している、って言ってた。それと王様も大臣も多分、黒だ」
マスターも大臣が訪れて来たこと、ピュアが人を表す色が見え王様と大臣には黒色が見えたことを話した。
「……そうか」
直前でブレイズから話を聞いていたテスターは、声を荒げることも無く俯いた。
「とりあえず戻るぞ」
傷を治す為にも、一度ピュアから話を聞く必要もある。
白人のことについて、この国のことについて。




