個室での祝賀会
二人が案内された夕食会場は、隣の客席との距離が完全に保たれた落ち着いた個室だった。これならば、他のお客様に気づかいなく、ゆっくりと食事を楽しむことができる。
席に着くと、二人はすぐに、グラスに注がれたノンアルコールビールを手に取った。
美優: 「では、改めて。巡査部長と巡査長への昇進、そして、私たちの揺るぎない愛に。乾杯!」
彩花: 「乾杯!」
グラスを静かに合わせ、二人は地元の食材を使った料理に舌鼓を打った。昼間の寿司とはまた違う、料亭ならではの繊細な味付けが、二人の幸福感を高めていく。
食事が進み、ちょうど良いタイミングで、仲居が小さなワゴンを押して入ってきた。その上には、可愛らしい小さなホールケーキが載せられていた。
仲居: 「お祝いのケーキでございます。『昇進おめでとう』のメッセージが入っております。」
ケーキのプレートには、確かに「昇進おめでとう」とシンプルに書かれていた。彩花が事前に手配したものだ。二人とも昇進したのだが、事前に宿に依頼した際、彩花が美優を祝う形に限定してメッセージを頼んでいたのだ。
仲居: 「お二方とも、『会社』の昇進でいらっしゃいますか? 特に、そちらの奥様(美優)を祝う形になっているようですが、思いやりのある部下をお持ちですね。」
仲居は、美優と彩花を「上司と部下」、あるいは「夫婦」として捉えているようだった。
その言葉に、美優と彩花は、少し照れて顔を見合わせた。
(*美優(心の中で):「部下というより、私の人生を導くパートナーだがな。」 *)
(*彩花(心の中で):「部下だけど、恋人です。そして、私だって昇進したんですよ。」 *)
美優: 「ありがとうございます。はい、まぁ……おかげさまで、二人とも良い報告ができました。」
美優は曖昧に答え、彩花の手をそっとテーブルの下で握った。個室という聖域の中で、公にはできない秘密の愛と、公に認められた昇進の栄誉を、二人は最高の形で分かち合った。




