支え
彩花の告白と、加藤警部補の言葉の真実を知り、美優は再び、そして激しく泣き始めた。
美優: (彩花を抱き返しながら、嗚咽混じりに)
「彩花……。そんなことが……。知らなかった。加藤教官が、そんな言葉を……。彩花が同期にいて、私も本当に、本当にいて良かったと思っているよ。ホント……。」
美優の言葉には、彩花の存在に対する、計り知れない感謝が込められていた。
彩花は、美優の深い感謝を受け止めながらも、美優自身が持つ強さと優しさを、謙虚に認めようとした。
彩花: 「でもね、美優。私は、ただ加藤教官の言葉通り、美優を振り向かせただけだよ。後ろを振り向いて、私を助けてくれたのも、私が卒業まで導いてくれたのも、女性警察官として生きていけるようにしてくれたのも、そして、巡査長にまでさせてくれたのも、全部、美優なんだ。」
彩花は、美優の肩から顔を離し、潤んだ瞳で美優を見つめた。
彩花: 「美優は、誰かを支える力を持っている。その力を、一番最初に見つけて、そして私に使ってくれたのが美優だよ。だから、美優は、私の目標なんだ。」
二人の愛は、どちらかが弱く、どちらかが強いという関係ではない。
孤独な強さを持つ美優と、他人を支える優しさを持つ彩花が、互いの足りない部分を埋め合い、巡査部長と巡査長という、より大きな責任を果たすための強靭な二人一組を作り上げていた。
二人は再び、強く抱擁し合い、その愛の真実を、心に深く刻み込んだ。
加藤警部補の言葉の真実と、お互いの愛と弱さを分かち合った美優と彩花は、抱擁を終えてようやく我に返った…。
露天風呂で火照った身体から流れ出た汗と、これまでの抑圧が解放されたことで二人が流した大量の涙で、着ていた浴衣はすっかり湿ってしまっていた。
美優: 「……彩花。見ろ。これでは、まるで土砂降りに遭ったみたいだ。夕食をこの浴衣で出掛ける訳には、さすがに行かないな。」
彩花: 「ふふっ。私たち、本当に……バカみたいに泣きじゃくってしまいましたね。また泣き顔になってしまって……。」
二人は、お互いのひどい泣き顔と、濡れた浴衣を見て、たまらず苦笑した。その笑いは、涙の後だからこそ生まれる、清々しい安堵に満ちていた。
改めて洗面所へ行き、顔を洗い、目元を冷やす。腫れた瞳と赤くなった鼻の頭は隠せないが、もうここで隠す必要もない。
そして、部屋に置いてあった替えの浴衣に着替えた。新しい浴衣はさらりとした肌触りで、二人の体を再び心地よく包み込む。
彩花: 「よし。これで、巡査部長と巡査長としての体裁が整いましたね。」
美優: 「ああ。この新しい浴衣で、美味しいものを食べに行こう。さあ、二人の昇進と、新たな絆に、乾杯しに行くぞ。」
互いの手を握り、静かに部屋の障子を開け、食事処へと出掛ける二人だった。
その足取りは、来た時よりも遥かに軽く、満たされていた。




