予言と根源
(美優の涙の告白を受け、彩花ももらい泣きしながら、強く美優を抱きしめた。そして、二人の関係の原点となった、警察学校時代の秘密の会話を語り始めた。)
彩花:(美優を抱きしめながら)
「美優。警察学校時代、初めて美優に会ったとき、『なんて凄い人なんだろう』と思ったんだ。文武両道を絵に描いたような人に出会ってしまった。同期でこんな凄い人に出会ってしまったなぁ、と思った。で、同期で目標に出来る人に出会えて良かったな、と思った。」
彩花は、一度息を整えた。
ここからが、今日、この場で美優に伝えなければならない、最も重要な『真実』だった。
彩花: 「でもね、あの頃、加藤教官が、登山訓練中、最後尾にいた私に呟いたんだ。」
美優は、その話に驚き、少し顔を上げた。
彩花: 「『橋本、一番先を歩く上村は凄いと思うか』と。
私が『凄いと思います』と答えたら、加藤教官はね・・・」
彩花は、その時の加藤教官の厳しい視線と、温かい声を再現するように、言葉に力を込めた。
彩花: 「『凄くない。たまたま先頭に立っているだけだ。先頭に立てるのは、その後ろに他の生徒がたまたまいるだけだ。このまま、後ろを振り返らない上村だったら、あいつは潰れる』」
美優は、その言葉に息を呑んだ。まるで、長年自分自身に課してきた「常に強くあれ」という呪いを、恩師が見抜いていたかのようだった。
彩花: 「そして加藤教官は続けたの。
『橋本、あいつに後ろを振り向かせろ。それが同期にしてあげられる、本当の優しさだ』
って……。」
彩花は、美優の顔を見つめ直した。
彩花: 「だから、美優。私は、教官の言う通りにしただけなんだ。あなたの『頼りがい』は、私が後ろにいるから生まれたものなんだよ。私は、あなたの弱さを知るために、あなたの隣にいるんだ。」
二人の愛は、単なる感情ではなく、孤独な天才を救うための、恩師の深い配慮と、二人の真面目さから生まれた、必然の絆だったのだ。




