恩師の教えの深化
美優の、自身への「ライバル視」という予想外の告白を聞いた彩花は、再び、加藤教官との登山訓練中の会話を思い出した。
あの時、最下位をさまよい、体力的に限界で、弱音を吐きそうだったのは、加藤教官の目には見えていたはずだ。しかし、教官は叱責する代わりに、励ましの言葉をかけてくれた。
彩花: 「美優……。あの時、加藤教官は、私にはまた違う言葉をかけてくれたんだ……。」
彩花は、当時の情景を思い浮かべながら、その言葉を再現した。
彩花: 「教官は、最後尾を私と一緒に登りながら、『大変だよな、登山訓練も、いつもの訓練も』と、優しく言ってくれた。そしてね、『だがな、橋本からこう見える風景は大事だぞ。先を行く他の同期の風景は、お前しか見られない』って。」
美優は、その教えの深さに、静かに耳を傾けた。
彩花: 「『警察官には、いろんな目線が必要なんだ。強いものからの目線。弱いものからの目線。様々な目線を持つからこそ、人を助けたり、人を見つけたり、人を捕まえたりできる』」
彩花の瞳は、その当時の温かい記憶を呼び起こし、潤ませていた。
彩花: 「そして最後に、『橋本、お前はお前の目線から警察官となれ。俺は、お前を買っているから。頑張れ』って……。あの時の教官の言葉と、優しい目線を思い出すと、今でも胸がいっぱいになる。」
美優は、「トップの美優」を心配し、「最下位の彩花」には、その目線に価値があることを説いた、加藤警部補の人間性の深さに、ただただ感動した。
美優: 「……加藤教官は、本当に私たちを、ただの生徒ではなく、一人の人間として見てくれていたんだね。彩花。君が、私に『弱さを見せてもいい場所』を与えてくれたのは、あの教官の教えがあったからなんだ。」
二人は、異なる強みを持つ自分たちが、一つの警察官の理想像を目指すために、いかに必然的に結ばれていたかを再認識し、愛の絆をさらに強くした。




