隠されたライバル心
加藤警部補の登山訓練中の秘話から、二人は警察学校時代の思い出を次々と掘り起こしていた。
美優: 「考えてみれば、私たち二人とも、倍率が厳しい女性警察官採用試験をくぐり抜けたことは同じなのに、入校後の成績は対照的だったな。」
美優は、警察学校時代、常に成績はトップクラスを維持し、卒業時には首席だった。それは周知の事実だ。
彩花: 「ええ。私は……正直に言うと、最下位をさまよう成績でした。体力も、座学も。教官や同期の間では、『橋本はいつ自主退学してしまうんだろう』って、みんなヒヤヒヤしていたらしいです。」
彩花は苦笑しながら、当時の辛かった日々を語る。しかし、美優は、彩花がその裏で陰の特訓を重ねていた事実を知り、改めて感動を覚えていた。
美優: 「だが、君は絶対に諦めなかった。あの頃の彩花が、陰でそんな努力をしていたことに、私はちょっと感動しているよ。本当に、凄い。」
そして、美優は、当時の本心を打ち明けた。
美優: 「そして彩花。最下位だった君に対して、私がそういう視点でちょっとライバル視していたのにも、今思えば驚く。」
彩花: (驚いて)「え? 私を、ですか? トップの美優が、最下位の私をライバル視なんて、まさか……。」
美優:「本当だ。君の成績は最下位でも、常に誰よりも諦めない眼差しを持っていた。授業中、一度も目を逸らさない、あの真剣さ。私は、『成績では負けないが、この精神力だけは勝てないかもしれない』と、実は焦っていたんだ。だから、君の真面目さこそ、私が目標にしていたものなんだよ。」
美優からの思いがけない告白に、彩花は衝撃を受けるとともに、込み上げる喜びを感じた。
彩花: 「美優……。私が目標にしていた美優が、私を……。」
二人の愛は、互いの弱さを補い合う関係であると同時に、互いの持つ真の強さを認め合い、切磋琢磨する、ライバルのような絆でもあったことを、この静かな離れの部屋で、改めて知ることとなった。




