浴衣姿の深掘り
露天風呂から上がり、温かい湯で心が満たされた二人は、浴衣姿のまま、和室でくつろいでいた。畳の上に並んで座り、茶菓子を摘みながら、昼間の会話を反芻する。
彩花: 「まさか、加藤教官が私に、あんな言葉をかけてくれていたなんて……。美優と同じ時、同じ教官の下で学んでいたのに、私たちには見えていない部分がたくさんあったんですね。」
美優: 「ああ。特に、あの人は、私たちには『真面目さ』と『完璧さ』を求める一方で、その裏側で、『人間らしさ』をどう守るかを見ていた。私たち二人とも、あまりにも必死すぎて、周りの状況が見えていなかったのかもしれない。」
加藤警部補の言葉は、二人が共有していたはずの警察学校時代という記憶に、新たな奥行きを与えた。それは、厳しい規律の中で、喜怒哀楽を重ねていた、二人の関係の原点を深掘りする絶好の機会となった。
彩花: 「美優は、私が陰で腕立て伏せの特訓をしていたの、知っていましたか? 剣道も体力も美優に追いつきたくて、隠れてやってたんです。」
美優: 「知らなかった。だが、私は、彩花が休憩中にいつも、教官の講義のノートを、完璧な字で清書していたのを知っている。その真面目さに、私は常に『この子に負けられない』と焦っていたよ。」
彩花: 「ええっ、美優が私に……?」
美優: 「ああ。だから、私にとっては、彩花が『後ろを振り向かせた』というより、『前を向かせてくれる、一番の目標』だったんだ。本当に、あの頃の話を、こんな風にゆっくり話すのは初めてだ。」
二人は、同期であり、恋人であり、今は上官と部下という複雑な関係を理解し合う上で、互いが互いをどう見ていたかという真実の歴史を、浴衣姿の安息の中で、一つ一つ丁寧に辿っていった。その会話は、夜が更けるまで尽きることはなかった。




