帰るとしたら
ここはとある海岸の防波堤。
近衛華那14歳。私は今、死のうとしている。
5年前のいつかの土曜日か日曜日
夕暮れ時の防波堤。
上向けばにはオレンジ色に輝く夕焼けが、下を向けばブクブクと泡を立てる白波が私の視界へ入ってくる。
同じような風景は過去何度も見てきたけれど、今日は不思議といつもより綺麗で虚しい夕焼けと白波だった。
人生つまらないことばかりだ。自分はいくら真面目過ごしてもにいくら笑顔で楽しく振る舞っていてもいいことの一つありやしない。
この世の人間はあーしなさいかこうしなさいかしか言えないのかな。私は分かりましたか承知しましたしか言えないのかな。
私ばっかり、我慢したり耐えたりしてるのはいつも私ばかり。○○らしく居ればいい訳でもない、かといってよくわからない上下関係や意味も理解できない伝統とやらに縛られたり。
私ばっかり、いつもいつも。いつまで耐えればいいのかな私。いつ自由になれるのかな、私。
人生のレール敷かれすぎてて走るのも面倒だ。
(色々考えたり思い出すだけで時間の無駄だなとっとと飛び降りよ……)
「お嬢さんこんなとこで座って何やってんのよ、そこは俺だけの特等席なんで、どいていただけないだろうか」
誰だ、私に話しかけてきてるのか?まあ私以外居ないのだけれど。
声がする方を振り向くとどこかの学校の制服を着ている私と歳が近そうな少年が立っていた。
「珍しいなここに人が居るなんて。まあそんなことどうだっていいや、そこどいてくれ」
「……」
私はその場を離れず、座ったままじっと下を向く。
「あっそう、そういうことなら」
そういうと少年は私の真隣に突然座ってきた。
「うわっ!ち、ちょっと近いですよ、さっきから何なんですか……」
「いやあ、ここに誰かが先に居るだなんてあんまりないからさ」
「いやだからって……」
「えぇ、いつもおっちゃんやじいちゃんたちならもっとノリがいいのに」
(それはおっちゃんやじいちゃんたちだからこそでしょうに)
私は彼と少し距離を置き立ち上がり、
「あの、ごめんけど私帰りますんで……」
「へ?帰るってどこに?」
「い、家よ……それ以外何があるのよ」
(本当は天国に帰るつもりだったのに……)
「お嬢さん、ここ来るの初めてでしょ」
「ま、まあそうだけど」
そういうと、彼はとんでもないことを口走った。
「帰れないよ、後ろ見てみろよ」
「え?」
後ろを振り向くと、衝撃の光景が広がっていた。




