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第61話 無題

 イナミの家は流石に上流階級の層を成していた。家と一体になったガレージがある。二台分のスペースがあり一台はドイツの有名な高級車だ。


 普段使いは国産のこれまた高級車で通勤している。



 頭がぼぅーとする。何も考えたく無い何もしたく無い。


玄関ドアは開いていた。


 中に入ると目の前に幸せそうに微笑んだ家族写真が飾られていた。


 それを見て頭の中で何かが弾ける音が聞こえた。


 その偽善な写真に私の怒りが、身体の奥底から噴き出してくるのだ!


 咄嗟に傘立てに入っていた金属バットを引き抜き壁の写真に叩きつけた。


 バッゴンッ!と額縁に飾られた写真はガラスが飛び散り写真もひしゃげ壁に大きな穴が空いた。


「うぎゃーーーーーーーっ!!!」


辺り一面金属バットで殴りつけた。


バッキン!ガヂャン!バッゴン!


「キャーーッ!何をやっているのよイナミちゃん!!」


「あん?お前があの糞と結婚して私を産んだのが一番悔しいんだー!!

責任を取れーー!!」


「あの糞……」


 バットを高く振り上げると慌てて母親は奥の部屋に逃げていった!


「糞っが!!」


 リビングのあの糞と一緒に写った写真を見るともう止まらなくなっていた。


「ぎゃーーーーーーーーーつ!!」


 私は奇声を上げてバットを振り回し辺りを壊し尽くした。


 あの糞の書斎に入ろうとしたが鍵が掛けられていた。


 ドアノブをバットでへし折りドアを蹴破って中に入ると更に私の怒りが激増した。あの糞のタバコの臭い!

あの糞の持ち物!全てを破壊したくなったのだ。


「うぎゃーーーーーーーーーーっ!!!

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」


 窓ガラスをブチ破り、デスクのPCごと叩きつぶし、壁に飾ってある写真ごと壁をぶち抜いた!


「はぁ、はぁ、はぁ、まだ収まらない!」


 ガレージに行きドイツの高級車を滅多滅多にバットで叩きつける。ボディーがベコベコになり塗装が剥げ落ち、ウインドウガラスがひびが入り真っ白になっている。


 防犯のクラクションが止まる事なく鳴り響いている。


 ふと、私はガソリンが入った携行タンクを見つけた。


「満タンに入ってある」


 ボロボロになった車にガソリンを掛け私は火をつけた。


 まだ残っているガソリンを持ってリビングに戻りあの糞の書斎にガソリンを撒いた。


「ああああーー!!私にも、あの糞の血が流れてるー!私は汚れているんだ!」


「うぎゃーーーーーーーっ!!!」


 自分の血が汚くて、けがわらしくて、

喉や胸、腕、顔などを思い切り引っ掻いた。皮膚がめくれ肉からは止めどもなく血が流れ出してきても、顔の皮膚もグチャグチャになって身体中が血だらけになっていてもだ。


「イナミちゃん!!なにをしてるのよ!」


 母親は血だらけの私を見て怯えている。そして私は残りのガソリンを頭から被ったのだった。


「イナミちゃーーーん!!」


 母親の絶叫が聞こえたが気にもならない。


「私の血はあの男の血で穢れいる……

だから、浄化しないといけない……

その為には私の全てを焼き払わなければならない……」


 ポケットから取り出した透明のオレンジ色の安いライター。


「いやーーー!!辞めてーーーー!!

イナミちゃん早まらないでーーー!!

私を一人にしないでよーーー!!」


「お前があの糞男の子を産んだのが元凶だもう止められない」


 イナミはライターの着火装置を押した

バチっと火花が飛び身体中に燃え広かった。


「ギャッーーーーーーーーーーー!!!」


 この世の物と思えない絶叫が燃え盛る書斎に響いた。


「イナミちゃんーーーーーーーー!!!

イヤーーーーーーーー!!!

辞めてーーーー!!!」


薄れゆく意識の中で私は願った。


「神様、私の身体と魂を全てを無にして下さい……もう二度とこんな呪われた魂は必要ありませんので……」


『ほう、お前面白いな……妾の所で使ってやるか……お前の好きな王女に転生してやるぞ……ガゼリ王国だ目一杯妾の為に奉仕しろ』


「イヤーーー!!神様消して下さい!!」


『ハハハ、妾の世界は楽しいぞ!』


「駄目ーー!!辞めてーー!!

行きたくないーーー!!!」


 火に包まれたイナミの身体は焼け焦げ膝をつき、前に倒れた。


「イヤーー!!イナミちゃーーーん!!」



 遠くから消防車のサイレンが幾つも聞こえてくる。


 酢蛾峰子は燃え盛る炎の熱に耐えきれず命がながら家の外に脱出した。


家の前で泣き崩れる峰子。


消防士に付き添われて避難をした。


 二時間後に火事は消し止められて燃え残った家の中から性別不明の遺体が回収された。


 ニュースではただ、この家の娘がガソリンを撒き火を放ったとしか伝えられなかった。




 火災から一週間後、酢蛾イナミの葬儀か執り行われた。


 母親の峰子は憔悴しきって目の焦点も合っていなかった。


 頭や顔には包帯やガーゼが巻かれ、両手にも痛々しく包帯が巻かれていた。


 お棺の中のイナミは全身を白い包帯に幾重にも巻かれ、ミイラのようだった。

ところどころに赤黄色いシミが包帯に滲んでいた。


 お棺にしがみ付き泣きじゃくる峰子に誰もが声を掛けられなかった。


「イナミちゃん!イナミちゃん!

どうして!どうしてなのよ!!

あの糞の所為なのね……」


「姉さん、酢蛾が来た」


 一瞬、肩が跳ね上がり峰子の雰囲気がガラリと変わったのだった。


酢蛾の母親が声を掛けてきた。


「峰子さんイナミちゃんは本当に……」


「本当に何だ!言ってみろ」


「えっ!峰子さん……」


「本当に何だと聞いているだろうが!」


「ああ……峰子さん」


「お前があの糞を産んだから、イナミがこうなったんだろ!!

元凶のお前がなぜ飄々と生きている?」


「……峰子さん……」


「ざけんなっ!お前の所の糞がイナミを殺したんだ!!イナミを返せ糞ババァ!」


 峰子は怒りに任せて酢蛾の母親を突き飛ばした。


姉さん!峰子の弟が慌てる。


母さん!酢蛾の息子が母親を庇う。


 峰子は参列者が周りを囲う中、椅子を持ち上げ酢蛾の母親に叩き付ける。


何回も何回も椅子で殴りつける。


「痛い!痛い!峰子さんすみません!

すみません!許してください!」


「止めるんだ姉さん!そんな事してもイナミちゃんは喜ばない!」


「峰子さん!!」


 くっ……最後に椅子を投げつけた。その一撃が酢蛾の母親の意識を刈り取った。


「救急車を早く!」


斎場は騒然となった。


 峰子は棺にしがみ付き泣きじゃくっている。


 救急車が到着してその後にパトカーも現れた。


 酢蛾の母親に付き添い息子が救急車に乗り込む。


峰子と弟がパトカーに乗り込んだ。


 葬儀は峰子の弟の奥さんが代表となり何とか終える事が出来た。



 その日の夜遅くに酢蛾の母親が亡くなったと連絡が入った。


「姉さん、酢蛾の……あれ姉さんは?」


「可笑しいわね、さっきまでイナミちゃんに寄り添っていたのに……」


「まさか……」


 峰子の弟は不安に駆られ外に飛び出した。


「姉さんーー!!姉さんーー!!」


「くそ、何処に行った……」


 次の日、自宅の焼け跡から峰子が変わり果てた姿で発見された。




「そんな事があったんですよ!酢蛾元部長聞いてきます?」


 俺は弁護士を通じて酢蛾に面会を申し込んだのだ。勿論AIロロのおかげだ。


 俺が話し終わる前からずぅっと泣きじゃくっているオッサンの泣き顔誰得だと俺は思った。


「結局はどうしようもないクズのお前のせいで娘がお前の罪を被ってしまったようだな」


「なあ、ゴミクズよ、何人が死んだ?

全部お前の所為だぞ!分かってんのか!ボケ!何とか言えよ」


「……」


「お前の帰る場所は焼け落ちてもうないんだぞ家族も全て死んだ!お前どうすんだよ?まだ何も罪を償っていないし賠償責任も相当なもんだ」


「おい!誰に命令された」


「それは……」


「まだまだ、お前の親類が居なくなりそうだな……」


「まだ続くのか……」


「馬鹿か?いい歳こいて気づけよ!

お前は簡単には死ねないんだよ

分かってんのか!

早く言えよ人間のクズがよ!」


「お前はこの国一番の嫌われ者だ。

もし出所しても直ぐに捕まりリンチに会うだろうな楽しみだろう?」


「あ、ちなみに、マツザカコーポレーションは営業停止に追い込まれたぞ!

これもお前の功績だな、その内に命も狙われるよな気をつけな!」


「株価なんで毎日ストップ安で今じゃ証券なんてただの紙屑にだよ!これもお前のの功績だ!流石酢蛾元部長様だ」


「……」


「これ前から聞いてみたかったんだ。

ねぇ、今どんな気持ち?

ギャハハハハ!なんか楽しいな

笑えよ酢蛾!だから、誰の指示だ!」


「……」


「ダンマリか、娘の命よりも妻の命よりも母親の命よりも大事なものか?

所でよ、お前被害者に対してどう思っているんだ?」


「それは……」


「言えよ!お前ってトコトン腐っているな本当死んだ方が人類の為だと本気で思えて来たわ!娘も奥さんも母さんも浮かばれないわ!犬死にって訳か、こんな親父ならサッサと死んだ方がマシか……」


「……」


「お前の訃報楽しみにしてるよ」


 俺は席を立つと酢蛾が何か言いたそうにこっちを見ていた。


「……ざか……だ……」


「ん?」


「獄門坂だ」


「知ってるよ」


「へっ?」


「腐ったお前の口から聞きたかったんだ。ただそれだけで、ここにきた訳だ。

じゃあな、刑期終えるまで生きてろよ」


 項垂れる酢蛾はもう抜け殻のようだった。もっともっと苦しめばいいんだ!


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