第54話 取らぬ狸の皮算用
すみません53話が抜けていました。
割り込みも何も出来ないので削除してのやり直しです
もう、訳わからんわ!
会社からの帰り道いつもの三人だがいつもと違ってメグミさんが三和子さんに寄り添っている。
普段なら無駄話に華が添えられキャキャとなるし、どこから聞いたのか話題も尽きない。しかし、今は誰も話さないと言うか警戒されている。
「メグミさんマンションまで送るよ」
「今日は三和子が心配だから家迄行くわ」
心配ね余計な事を言わないか心配なんだろう。
「何食べますか?僕は大して食欲はないですけどリクエストに応えますよ」
「あら、ありがとうサトル君」
「じゃ、生姜焼きが食べたい」
「承りました。奥様」
「えっ、サトルさんったら、うふふ」
冷蔵庫から食材を取り出し一気に豚肉を炒める。
「はい!お待たせしました。
当店自慢の生姜焼き定食でございます」
「いつ見ても美味しそうね」
「メグミ美味しそうでは無くて美味しいのよ!」
「分かってるわよ」
「僕は素麺だけでいいや」
前振りも無く唐突に僕は話し始めた。
「三和子さん結婚前のお父さんとの約束覚えていますか?」
「えっ約束?」
「そう約束です」
「御免なさい、分からないです」
「じゃ、確認のためお父さんとの約束を教えます」
三和子さんは姿勢を正して僕を見るその顔は少しの緊張と不安が入り混じっていた。
「お父さんとの約束は、不貞一発即離婚ですね。どの様な理由に関わらずです」
一瞬三和子さんの顔が強張るのが僕には見えた。
メグミさんも目を見開いていた。
「三和子が不貞をすると思っているのか」
「そうじゃないですよ、お互いにですよ
例えば、僕が朝、目が覚めたら隣に知らない女性がいたとか、三和子さんが騙され脅されレイプされたとしても、不貞は不貞ですから即離婚となります」
「なっ!私がレイプ……離婚……」
「それが、お父さんとの約束ですから約束は守らないといけないでしょう?」
「でも、相手が知らなければ、そうならないじゃない」
「その時点でアウトでしょう?直ぐにバレるのだから、そんな人間と暮らしたいと思いますかメグミさん」
「お、思わないわね」
「でしょう」
僕は立ち上がり台所で三人分のコーヒーを淹れる。メグミさんはブラック、僕のはミルク入り、三和子さんは砂糖とミルクだ。
「どうぞ」
「あら、ありがとうサトル君」
「サトルさん、御免なさい私が効かなくて……」
彼女は申し訳なさそうな顔をする。僕は三和子さんの肩にそっと手を置きニコッと笑う。
「気にしないで下さい僕が好きでやっている事ですので」
少し言い方が冷たかったかな、多分僕はこの状況にイラ付いているんだろう。
「所で何故三和子さんは、僕に出張を勧めるのですか?」
突然の僕の問いにピクっと反応する。
こう来る事は、はなから想定していただろうに何故今更ビク付く?
「それは、サトルさんの事を思ってそうしました」
「僕の何の為ですか?」
「それは……」
何故言わない。
「三和子はアンタの為にそう言っているんだから素直に言う事を聞けば良いのよ」
はぁ〜僕は深い溜め息が出た。
僕より、メグミの言い分を聞くわけか
なんだかどうでも良くなったわ……
「分かりました。福岡には行きましょう
後で日程を教えて下さい。
それと、暫く部屋に篭りますので、決して覗かないで下さい」
「えっ、どうしてですか?」
「機織りの姿を見られたくないから」
「えっ?」
「鶴かよ!」
おっ流石、元ネタバレた。
「それと、松坂!お前直ぐに帰れ!」
静かだけど威圧の籠った声にビクッと反応するメグミ、僕に見透かされている事にやっと気付いた様だ。
「分かったわよ、じゃ三和子明日ね」
「メグミ!そこ迄送るわ」
はあ〜何度目の溜息だ……結婚したのは勇み足だったかな……
「メグミ!御免なさい!サトルさんも悪気が無いはずよ。多分あの事でイラついているのよ」
「いいよ、三和子気にしていないから
それと三和子はどうするの」
「私、サトルさんの為メグミの言う通りにやってみるよ」
「そう、私も応援するよ」
「ありがとう」
あー面倒臭い……
一人薄暗い部屋に籠りPCのキーボードを叩いたり、スキャンをしたりする。
僕は結婚式に来てくれた人達の住所とご祝儀の金額の一覧表を作り、そして詫び状の文章を考えていた。
結婚して直ぐに離婚なんて絶対詐欺に思われるんだろうな、僕なら絶対疑う!
お金さえ返せば良いとは思えないけどコレばっかりは早い方が良いに決まっている。
まあ、向こう側に瑕疵があるのは間違いないから、全ての責任を負って貰うけどね。
取らぬ狸の皮算用のサトル、まだ不貞も働いてないウチに事を進める男。
どう考えても無理ゲーだよ、何も起きていないのに離婚なんて出来ないし
分かっていても何も出来ないんじゃ終わってるね僕も……
☆
「いつから出張なの?予定表見せてよ」
三和子さんは立ち上がり、自分のビジネスバッグから一枚の書類を取り出し僕に渡してくれる。
「ありがとう三和子さん」
書類に目を通すと、明日からの出張だ
火曜日に出て水曜、木曜、金曜と三日間で土曜の朝に帰宅の為新幹線に乗る。
「えーー!明日からなのー!!
バッカじゃない!何焦ってんだよ!」
「えっ?」
あっ!ヤベ口に出してしまった。
やはり、女は鮮度か……新婚ホヤホヤの飛び切り美人の新妻だもんな、我慢も出来ないんだろ。
改めて僕は三和子さんに聞いた。
「どうして僕を出張に行かせようとしているの?五日間もここに僕は居ないんだよ」
見つめる僕の視線に、しどろもどろに、なりながらやっと口を開いた。
「そ、それは、サトルさんの事を思っての事ですので……」
同じ事しか言わない三和子さんに、呆れて僕はソファから立ち上がった。
「明日も早いから僕は寝るよ。準備は君が会社に出掛けてからするから、何もしなくてもいいからね
「でも、お手伝いくらいは……」
「本当何もしないで、僕も起こさないで良いから、そのまま会社に行って下さい」
それでも何か言いたげな三和子さん。
僕は更に頭を下げてお願いをすると渋々了解して貰った。
「あっ!ゴメンまだやる事があったわ!
また部屋に籠るから入って来ないでね
お兄さんとの約束だよー!」
チョットおちゃらけてみたけど
三和子さんは悲しげな顔をしていた。
本当はもう、関わりを持ちたく無かった遅かれ早かれこうなる事が分かった今、
僕にはコレしか出来ないのだ。
彼女なら直ぐに流されて従順になるだろう、そうなれば、僕は用済みだ。
海外出張で消されるのがオチだ。今まで何人も消されたんだろうな。
余談だが、彼女は夜中に侵入を試みたが部屋の鍵を突破出来なかったようだ。
☆
「それじゃ、行ってきます。サトルさん気をつけて行ってくださいね」
彼女はそっとドアを閉めた。
行ったか……これで良いんだ……
僕は腹を決めたのだから……
顔を洗い、まかなってから、食事を取るが美味しく無い。
「さあ〜て、掃除でもするか!」
僕は部屋中をきめ細かく掃除をした。
あっ!こんな所にも盗聴機だよ!
あの馬鹿どんだけ仕掛けているんだよ
カメラも片手じゃ足りないほどだ!
勿論、口には出さない誰に聞かれているから分からないから。
いつからだ?一番怪しいのは北方玲華が接触して来てからだろう。
「お、これ使えそうだね」
一個だけ残してバケツの塩水に漬けてあげた。喜んでくれるかな?
PCに繋ぎ逆探知を試みた。
「おお、出たぞ」
マップと重ねて見るとやっぱりあのマンションだわ!おー嫌だ嫌だストーカーじゃん
ついでに、僕のスマホの二人のGPSをこのタグ移し替えてアプリは完全削除
「出ていて良かった大学院工学部!
先生、教授ありがとうございます!」
「さあて、始めるか」
僕はスーツを纏いリックを背負いドアの鍵を掛けた。




