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第52話 婚姻届

「あっ!肝心な事忘れていた」


 新太君とゲームをしていて負けが込んで

ふと、思い出したのだ。


「悪い中田役所まで乗せてくれないか?

今日は大安だから、婚姻届を出してくるよ」


ふんー!ふー!ふんー!


「そうか、ありがとう三和子さん用意をして直ぐに行くよ」


「はい!中田さんお願いしますね」


ふー!ふんー!ふー!


中田はまた晒されていた。



「悪い中田直ぐに終わると思うからここで待ってくれ」


ふー!ふー!


「よし、行こう三和子さん」


僕達は役所の夜間受付に向かった。


 途中三和子さんから中田さんの口のガムテープ剥がしてあげた方が良かったかしらと訊かれたが、対して変わらないからどうでも、いいんでないと答えた。


「それもそうね」


 今は日曜日の夕方六時だ。呼び出しのチャイムを押し係の人を呼び出した。


「どの様なご用件でしょうか?」


「婚姻届を持って来ました」


「それは、おめでとう御座います」


 感情のこもらない言葉に、僕は感情のこもらない礼を返す。


「ありがとうございます」


「では、書類を拝見いたします」


 まさに、事務的に、さっさと終わらせたい気持ちが良く伝わって来る。


「お二人の身分証明をご提示下さい」


僕と三和子さんの運転免許証を出した。


 なっ!三和子さん自動二輪の大型持ってるの?それに大型特殊まで……


 すると、若い職員は三和子さんの免許証の写真を見て、改めて僕の後ろにいる彼女に目を向けた。


「えっ?」


 係の若いお兄さんは、目を見開きぽか〜んと口を開けている。


 誰もが取る、初対面の三和子さんを見た症状なのだ。


 それに、気付いた三和子さんは僕の背中の後ろに隠れた。その姿に僕を嫉妬の目を向ける若い職員。


 いやぁ〜!君の気持ちも僕は分かるよ。

だって僕の婚姻相手は三和子さんなのだから、彼女と近くなってから絶えずこの視線に僕は晒されていたのだよ。ファハハハハ!


 だから、僕は勝ち誇った顔で三和子さんの肩を抱き、彼に細く笑む。


「書類はこれで、よろしいですか?

では、婚姻届は受理されたと言う事ですね」


「……はい」


何悔しそうなんだよ!僕の嫁さんだぞ!


「それでは、お願いしますね」


僕が言うと三和子さんも頭を下げた。



 僕と三和子さんは車の後部座に座り見つめ合っていた。


「サトルさん」


「三和子さん」


「私サトルさんのお嫁さんになったのね」


「三和子さんこれからも、末長く宜しくお願いします」


「私こそ、宜しくお願いします」


見つめ合ったまま二人は唇を重ねた。


ピコ〜ン!


 僕のスマホがナインの通知音がならされたのだ。


「ん、誰だ僕達、夫婦の時間を邪魔するのは!」


「そうですわ!」


ナインを開いて見るとそこには、


(車の中でイチャイチャすんな!

まして、キスなどは絶対ゆるせん!)


「三和子さんこれ」


「えー!嫌だー!覗かれているよ!」


 三和子さんは嫌悪感に、自分の身体を抱きしめる。


「あ、これ中田だ」


 えっ?と私は前の座席を見ると、バッグミラーに映る恨みの籠った中田さんの目と合ってしまった。


「キャッ!」


「あ、中田いたんだ」


ピコ〜ン!


(僕の車だ!)


「見てたら言ってくれたら良いのに」


ピコ〜ン!


(ガムテが取れないんだよ!痛いんだよ)


「案外、痛みに弱いんですね意外でしたわ。皆んなに色々されているから、そう言う事が好きな人だと思ってました」


ピコ〜ン!


(奥さん!酷いよ!)


「まあ、奥さんだってサトルさん」


 両手で頬を押さえクネクネし出す三和子さんは本当に嬉しそうだ。


「つまり、すね毛にぬった脱毛ワックスが怖くて剥がせないんだな」


ピコ〜ン!


(ちょっと違うが予々そう言う事だ)


「よし、僕が剥がしてやるよ」


ピコ〜ン!


(サトルさん、僕初めてなの優しくして下さいね)


 なんか、そのナインを見てムカついたのは言うまでも無かった。



「行くぞ!覚悟はいいか中田!」


 プルプル震える中田は可愛い小型犬の様だ。コイツは全く可愛く無いけど。


「中田、3、2、1で行くからな」


涙目で縋る様に頷く。


「やるぞ!3、2、それっ!」


ベリッ!


「ぎゃーーーっ!!」


「神島……図ったなぁ……1がねぇぞ!」


「意識をずらした方が痛く無いだろ」


「そうなのか?」



部屋に帰ると既に宴会が始まっていた。


「お、帰って来た〜!」


「新婚さん、いらっしゃ〜い!」


美紅のモノマネは糞も似てなかった。


「いいじゃん、明日も休みなんだから朝までやろうよー!」


 意味深な事を言わないで下さいメグミさん、良子さんも中田を酔わせないで下さいね。美紅お前は早く寝ろ!


ああーー!悪夢は的中した。


 良い子の新太君は熟睡、で糞妹の美紅はガムテで巻かれていた。


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