第52話 婚姻届
「あっ!肝心な事忘れていた」
新太君とゲームをしていて負けが込んで
ふと、思い出したのだ。
「悪い中田役所まで乗せてくれないか?
今日は大安だから、婚姻届を出してくるよ」
ふんー!ふー!ふんー!
「そうか、ありがとう三和子さん用意をして直ぐに行くよ」
「はい!中田さんお願いしますね」
ふー!ふんー!ふー!
中田はまた晒されていた。
☆
「悪い中田直ぐに終わると思うからここで待ってくれ」
ふー!ふー!
「よし、行こう三和子さん」
僕達は役所の夜間受付に向かった。
途中三和子さんから中田さんの口のガムテープ剥がしてあげた方が良かったかしらと訊かれたが、対して変わらないからどうでも、いいんでないと答えた。
「それもそうね」
今は日曜日の夕方六時だ。呼び出しのチャイムを押し係の人を呼び出した。
「どの様なご用件でしょうか?」
「婚姻届を持って来ました」
「それは、おめでとう御座います」
感情のこもらない言葉に、僕は感情のこもらない礼を返す。
「ありがとうございます」
「では、書類を拝見いたします」
まさに、事務的に、さっさと終わらせたい気持ちが良く伝わって来る。
「お二人の身分証明をご提示下さい」
僕と三和子さんの運転免許証を出した。
なっ!三和子さん自動二輪の大型持ってるの?それに大型特殊まで……
すると、若い職員は三和子さんの免許証の写真を見て、改めて僕の後ろにいる彼女に目を向けた。
「えっ?」
係の若いお兄さんは、目を見開きぽか〜んと口を開けている。
誰もが取る、初対面の三和子さんを見た症状なのだ。
それに、気付いた三和子さんは僕の背中の後ろに隠れた。その姿に僕を嫉妬の目を向ける若い職員。
いやぁ〜!君の気持ちも僕は分かるよ。
だって僕の婚姻相手は三和子さんなのだから、彼女と近くなってから絶えずこの視線に僕は晒されていたのだよ。ファハハハハ!
だから、僕は勝ち誇った顔で三和子さんの肩を抱き、彼に細く笑む。
「書類はこれで、よろしいですか?
では、婚姻届は受理されたと言う事ですね」
「……はい」
何悔しそうなんだよ!僕の嫁さんだぞ!
「それでは、お願いしますね」
僕が言うと三和子さんも頭を下げた。
僕と三和子さんは車の後部座に座り見つめ合っていた。
「サトルさん」
「三和子さん」
「私サトルさんのお嫁さんになったのね」
「三和子さんこれからも、末長く宜しくお願いします」
「私こそ、宜しくお願いします」
見つめ合ったまま二人は唇を重ねた。
ピコ〜ン!
僕のスマホがナインの通知音がならされたのだ。
「ん、誰だ僕達、夫婦の時間を邪魔するのは!」
「そうですわ!」
ナインを開いて見るとそこには、
(車の中でイチャイチャすんな!
まして、キスなどは絶対ゆるせん!)
「三和子さんこれ」
「えー!嫌だー!覗かれているよ!」
三和子さんは嫌悪感に、自分の身体を抱きしめる。
「あ、これ中田だ」
えっ?と私は前の座席を見ると、バッグミラーに映る恨みの籠った中田さんの目と合ってしまった。
「キャッ!」
「あ、中田いたんだ」
ピコ〜ン!
(僕の車だ!)
「見てたら言ってくれたら良いのに」
ピコ〜ン!
(ガムテが取れないんだよ!痛いんだよ)
「案外、痛みに弱いんですね意外でしたわ。皆んなに色々されているから、そう言う事が好きな人だと思ってました」
ピコ〜ン!
(奥さん!酷いよ!)
「まあ、奥さんだってサトルさん」
両手で頬を押さえクネクネし出す三和子さんは本当に嬉しそうだ。
「つまり、すね毛にぬった脱毛ワックスが怖くて剥がせないんだな」
ピコ〜ン!
(ちょっと違うが予々そう言う事だ)
「よし、僕が剥がしてやるよ」
ピコ〜ン!
(サトルさん、僕初めてなの優しくして下さいね)
なんか、そのナインを見てムカついたのは言うまでも無かった。
「行くぞ!覚悟はいいか中田!」
プルプル震える中田は可愛い小型犬の様だ。コイツは全く可愛く無いけど。
「中田、3、2、1で行くからな」
涙目で縋る様に頷く。
「やるぞ!3、2、それっ!」
ベリッ!
「ぎゃーーーっ!!」
「神島……図ったなぁ……1がねぇぞ!」
「意識をずらした方が痛く無いだろ」
「そうなのか?」
☆
部屋に帰ると既に宴会が始まっていた。
「お、帰って来た〜!」
「新婚さん、いらっしゃ〜い!」
美紅のモノマネは糞も似てなかった。
「いいじゃん、明日も休みなんだから朝までやろうよー!」
意味深な事を言わないで下さいメグミさん、良子さんも中田を酔わせないで下さいね。美紅お前は早く寝ろ!
ああーー!悪夢は的中した。
良い子の新太君は熟睡、で糞妹の美紅はガムテで巻かれていた。




