第49話 結婚式後編
僕達は二人並んで重厚な扉の前で待機している。勿論隣は純白のドレスを、身に纏い白いレースのベールを被った三和子さんだ。
決して良子さんではない確認したから間違いない筈だ。
静かな曲が流れ始める。彼女達が選んだ曲だけど、僕には良く分からなかった。
扉が開かれ僕達にスポットライトが当てられ、ゆっくりと歩みを進める。
ベール越しにでも分かる三和子さんの美しさに、ゲスト席からは感嘆の声やため息があちらこちらから、聞こえてくる。
厳かな雰囲気のなか僕達は神父様の前に立った。
「新郎、神島サトルあなたはここにいる美和三和子を、病める時も 健やかなる時も富める時も 貧しき時も、妻として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「新婦、美和三和子あなたはここにいる神島サトルを、病める時も 健やかなる時も富める時も 貧しき時も、夫として愛し 敬い 慈しむ事を誓いますか?」
「はい、誓います」
「指輪の交換を……」
式場のスタッフが指輪の入ったケースを僕達の目の前で広げ、僕は三和子さんの指輪を彼女の左手薬指にそっと嵌める。
三和子さんも指輪を取り出し僕の左手薬指にゆっくりと嵌めてくれた。
「では、誓いのキスを……」
二人は向かい合い僕は、三和子さんのベールをあげると、息を飲む様な三和子さんの美しさに僕の手は震えてしまった。
三和子さんと目が合うと少しの緊張と照れ臭さで彼女の頬が赤く染まっていくのが分かった。
僕が顔を近づけると彼女は目をつぶって僕を受け入れてくれた。
「神の前にて、誠心誠意の誓いの言葉は
神に届き、見守ってくれるでしょう!
皆様、新しい夫婦の誕生です!
祝福の拍手を送りましょう!」
「「おめでとう!」」
皆の拍手が会場に響き渡る。
「三和子ちゃんきれいだよ!」
「三和子ちゃん俺とも結婚してくれー!」
「アンタ!何言ってんのよ!」
「痛って!」
一瞬、場が静まり返ったが直ぐに爆笑が起こり拍手も起こった。
三和子さんの親戚の方だろう奥さんに頭を殴られていた。
僕達は人に囲まれて、お祝いを言われたり、握手をしたり、背中を叩かれたり、何人かがボディにパンチを入れたりと僕は、人気者になったようだ。
新太君が花束をもってやって来た。
「お父さん!結婚おめでとう!」
「なっ!……こらこら、新太君今ここでそんな事言ったら、お兄ちゃんびっくりするぞ!」
ほら、周りの人の僕を見る目が変わったじゃ無いか……
「お姉ちゃんはい!」
「ありがとうね新太君」
三和子さんが頭を撫でてあげる。
会場の奥の方でニヤつきながらコチラを伺う連中がいた。
糞っめが!美紅もいるのか!
誰だやらせたのは……皆んなやりそうで犯人が絞れない!
「新郎新婦さんはこちらの方へ」
スタッフさんが迎えに来た。次の準備に控え室に僕達は戻った。
両家の顔合わせという事で、こぢんまりとした部屋に案内された。
僕達は上座中央に座らされ左右に両家が分かれている。
まず、ウチの親父が自己紹介を始めて次々と立ち上がり挨拶をして行く。
そして、全ての挨拶が終わると先程奥さんに殴られていた旦那さんが僕に質問をして来たのだ。
当然新太君の事だった。
僕は慌てず騒がず事の次第を話した。
あの子は今回の発起人の方のお子さんで誰かがイタズラを仕掛けたと、見つけ次第とっちめてやる事も宣言した。
三和子さんも補足の説明をしてくれた
もし、彼女が知らないと言ったら僕はその場で吊るされていただろう。
僕達は信頼で結ばれた夫婦なんだから。
「披露宴の時間です扉の前にて待機して下さい」
大音量のJPOPが会場を揺るがし目の前扉が開かれる。
眩しいスポットライトが僕達を照らし出されると、感嘆の悲鳴があがり沢山の写真のフラッシュがたかれた!
三和子さんの美しさに誰もが唖然としていた。僕達は歩みを進める。
三和子さんが通ると皆がため息を吐く
あるテーブルだけは騒がしかった発起人のテーブルだ。
美紅よ!何故お前はこのテーブルに居る親父達のテーブルだろ!
糞っ!僕に向かって中指を立てやがって、お前の生乳写真を学校の裏サイトに流してやる!
席に着くと仲人の酢蛾部長の挨拶、そして乾杯の音頭で披露宴は始まった。
「あ、この料理お父さん達が来た時に出た料理だよ」
「見覚えはあるけど、あの時は味が全くしなくてさ何食べているか分からなかったんだ」
「えー!サトルさんそうだったの?今はどうなの?」
カチャカチャとナイフとフォークを使い肉を切り分ける。ソースをつけて口に含み咀嚼をする。
「うん、ちゃんと味がする美味しいよ」
「良かったわ」
「三和子さんはドレスだから、飲み物や食べ物に気を使うよね」
「その辺も良子さんに聞いたのよ、ナプキンは二つに折りたたんで膝の上に置く、口を拭くときは内側で拭くんだって、更に胸元を覆うのはマナー違反って言ってたわ」
「そうなのか、一番胸元が汚れそうだけど……」
「良子さんはそうかもね」
貴方もですよと言ってあげたいわ。
「それでは新郎新婦の初めての共同作業
ウェディングケーキへの入刀です!
お二人こちらへどうぞ!」
僕達は紅白のリボンが付いたナイフを二人で持ち巨大なケーキの前で微笑むと、多くの人達が押し寄せビデオや写真を取り始めるのだ。
殆どが三和子さんだけを撮っているが
その気持ちは僕にも分かるぞ!
だって彼女は美しいのだ。
結婚行進曲が流れ司会者の合図でケーキにナイフを入れて、またゲストに向かって微笑むと拍手が巻き起こった。
ゲスト達のスピーチを聞いて僕達は一旦席を外す、お色直しの為だ。
その間僕達のプロフィール映像が流れる仕組みになっている。
「完成品、見てないんだけど大丈夫かな
変なの紛れ込んでないよね」
「僕もそれが、気掛かりなんだ黒歴史を掘り返されたら式をメチャクチャに出来る気がするよ」
「駄目よ暴れちゃ」
「分かってるよ」
いきなりの大爆笑はとても気になった二人だった。
「皆様、新郎新婦のお色直しが終わったようです!それでは新郎新婦入場!」
またも、僕の知らない曲が大音量と共に流れ出し扉が開かれスポットライトを浴びる。そうさ今日は僕達が主役なのさ!
おおーー!!キャーー!!
三和子さんを見る度に響めきが起こる
彼女はスカイブルーのオフショルダーのカラードレスを身に纏い、アップされた髪には眩いティアラが輝いている。
僕達は長い装飾を施されたロウソクを持って各テーブルをまわるキャンドルサービスを行っている。
「お越しくださりありがとうございます」
「神島が美和さんを射止めたのかよ!」
「三和子さんとってもキレイよ」
三和子さんは微笑む。
順次ロウソクに火を灯して行くと最大の難関、馬鹿の集まりのテーブルに着いた
「誰だ!ロウソクの先にワサビを盛ったのは!糞美紅お前か!ロウソクの代わりにお前の頭を燃やしてやる!」
「駄目ですよ、貴方」
「あ、はい!」
イキナリ言われたのでドキドキしてしまった。それを見ていた馬鹿共が三和子さんを囃し立てる。
「お前ら自分で付けろ!」
最後に誓いのキャンドルって言う導火線に火を付けると仕掛け花火の様に次々とキャンドルに、火が灯って行き大きなハートの形になったのだ。
「成る程手が込んでいるね」
「サトルさん淡白過ぎるよ」
「そうかな」
「そうです」
「あい」
「そろそろビール瓶片手に集まって来るようだね」
「サトルさん笑顔でね」
「分かってますよ奥さん」
「まあ、サトルさんったら」
本当に嬉しそうな三和子さんだ。
「三和子ちゃんおめでとう!こんなにキレイになるんだったら二十年前に告白しておけば良かったとつくづく思うよ」
「私その時は4、5歳だよおじさん」
「本当この人は馬鹿事ばかり言って御免なさい三和子ちゃんでも、本当にキレイになったわ、おばさんも嬉しいよ」
「ありがとうございます」
「旦那さんも三和子ちゃんを幸せにしてあげてね」
「はい!」
「浮気して三和子を悲しませたら許さないからな!」
「僕は浮気はしません!」
「その言葉信じていんだな!」
僕は真っ直ぐにおじさんの目を見て言った。
「はい!」
「サトルやったな!凄い美人さんじゃないか!」
「僕の自慢の奥さんです」
「サトルさん」
「ひぇー今日は猛暑日が冷房が弱いぞ」
「そうかもね」
「三和子!」
「げっ!メグミ!」
「アンタ人の顔見る度にげっ!と言うわね」
「いや、言わないとダメかなと思って」
「ネタかい三和子ちゃん」
呆れる良子さんとメグミさん。
「ねぇ、新太君に特攻させたの誰だ?」
「ああ、あれ皆んな腹抱えて笑ったわね」
「確か美紅ちゃんだ」
「本当か中田!」
「何かサトル君に弱みを握られたとか言っていたわね」
「神島、何やったんだよ!」
「あれだよ、中田以外に送った写真」
「あーあれね女子高生じゃ不味いわね」
「なあ、なんだよ教えろよー!」
「後で誰かに見せて貰えよ人生変わるぞ」
「そんなに……美紅ちゃんの楽しみだ」
ああ、一生皆んなの奴隷生活だ中田。
余興ではメグミさん良子さんの二人がステージに上がると大歓声が起こった。
男達がステージに齧り付きカメラやスマホを向けている。一人望遠レンズで激写の音が聞こえる。カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ!
「フィルムの無駄じゃね、でもあの二人なら有りか」
昭和歌謡の金字塔のピン◯レディのカルメ◯だ!勿論完璧な振り付けでだ。
圧倒的な声量にキレのあるダンス
見る者の目を釘付けにするのだ。
ユッサユッサ揺れる良子さん胸、メグミさんも負けじと揺れている。僕は隠れ巨乳だとメグミさんを分析していのだ。
いや、実際見てるし揉んだり吸ったりもしていた。
「あの二人とてもキレイねサトルさん
良子さんを連れ込みたくなった?
凄くセクシーだよね」
「いえ、僕は三和子さんの方がキレイだと思います。そして三和子さんの方がセクシーだと思います」
そう、と三和子さんは確認が取れて満足げに僕に微笑んでくれた。
「なんで親父が歌っているんだよ!ビール瓶持ってお袋と挨拶にわまれよ!」
余興タイムが終わり司会者が祝電を読み上げてくれる。
マツザカコーポレーション代表取締役
社長、松田様、
マツザカコーポレーション代表取締役
福社長、米田様
マツザカコーポレーション代表取締役
専務、下衆様
マツザカコーポレーション従業員一同様
次々と有名所の議員や国家議員の名も告げられる。顔も見た事ないのにいいのかコレでと思った。
後は会場まで来れなかったり友達関係からも少なからず来ていた。
知らない名前は三和子さんの方だろう。
「最後に特別なお方からの祝辞も承っております。代理の方から直接に新郎新婦にお伝えくださります」
「それではマツザカコーポレーション社長秘書室の北方玲華様、お願い致します」
「北方玲華です。
GMZホールディングス会長
獄門坂 偽善次郎様からの新郎新婦への祝辞で御座います」
会場が響めく考えもしなかった超大物の名が出たからだ。
「なに!!会長自らの祝辞だと!」
「あの、闇の総統が祝辞?」
「信じられん!」
「新郎新婦は何者なのだ」
いや、普通の一般人ですよ。
「神島君、美和さん、結婚おめでとう御座います。我グループで優秀なお二人がご結婚成された事はGMZグループ全体の躍進となる事でしょうお二人のご活躍陰ながら楽しみにしています。
GMZホールディングス会長
獄門坂 偽善次郎」
「以上で御座います。
神島さん、美和さん、ご結婚おめでとう御座います」
深々と頭を下げて会場を後にする北方玲華。
皆が慌てふためくのも理解できる今のこの国を表と裏から牛耳る王様みたいもんだ!
そんな、糞ジジィが僕達の結婚式に何の用だ?三和子さんか?それとも僕なのか?全然分からん!
祝辞の文章なんてあのジジィが書くはずは無い適当に傀儡が作ったんだろ!問題はあのジジィが僕達の結婚を知っている事だ!
僕達を知っている?……
メグミさんはポカ〜ンと口を開けているから聞いていなかったのか?或いは当てにもされていないのか?
「糞っ!気にいらねぇ!」
「サトルさん!」
「あっ、御免なさい」
その後何をしていたのか記憶に無かったが、そつなくこなしていたと、言われて安心した。
そして僕達の結婚式は無事に終演を迎えたのだ。
勿論、二次会は部屋を借りてホテルで行う騒がしくなりそうだ。




