当たり前のことだが、食べなければ生きてはいけぬ。
「ところでユウ、お前そのすげえポイントどうすんだよ。」
「ん?あぁ、そうだよな。200なんてどうすればいいんだかわかんね。ここまで選択の幅が広がると逆に何が正解か・・・」
正直機械の一覧を流していくだけで2000を超えるほどの候補が出てくる。この渋谷のようなイベントが各地で行われたかもしれないとすると、どこかで自分と同じように膨大なポイントを手にしたものがいるはずだ。そいつらは一体何になったんだろう。
「なあ、ユウ。前から思ってたんだけどよ」
「んあ?」
「何が正解かなんてどうでもよくねえか?だってよ、転生だぜ?好きに使って好きなものになっていいんだよ。スキルに振ってもいいし、神を目指したっていい。何でもいいと俺は思うんだ。」
まさか握力に全振りした奴に言われるとは。しかし、タケヒロの言葉ももっともだ。何が正解かが問題ではない、何になりたいのか、どう生きたいのかが重要なんだ。
「そうだな、お前の言う通りかもしれない。それなら俺は・・・」
そう答えて機械を操作している時、ふと画面がブレる。今まで綺麗に写っていた画像がうっすらモザイクがかかったようになった。
「なんだ、おいどうした?壊れたんじゃないだろうな!」
トントンと指先で画面を叩くと何事もなかったように画面が戻った。画像は最初の画面に戻っている。この機械が壊れたら一体どうやって生きるんだよ。本気でビビったわ。
「あれ?」
「ん、どうしたユウ。」
おかしい。タケヒロが自分の画面を覗き込む。なんとまだ何も選んでいないのに転生ポイントが0になっているのだ。知らない内に何かを選択してしまったというのか?
「えええ!!おま、何したんだよ!」
「知らねえよ!え?俺なんか変化ある!?なんか変わった?」
慌てて顔やらお腹を触って確認する。よかった、人間のままのようだ。するとタケヒロが突然胸を揉みだした。
「大丈夫だ!正常だぜ!」
「っふんす!」
思いっきり腹にパンチを入れる。みぞおちにしっかり入った拳にタケヒロが地面に沈んだ。
「うむ、身体能力に振ったというわけでもないようだ。なら何に振ったんだ?スキルでもないし・・・」
「何事も・・・なくて・・・よかった・・・」
少し悦に入ったような表情で口からよだれを垂らしながらタケヒロが這いつくばって見上げてくる。それを足で踏みながら機械を見る。故障ではなさそうだが・・・200ものポイントがなくなるなんて異常じゃないか?アスラは見てないのか?全く肝心な時に役に立ちやしない。
「なあ、ユウ。」
「ん?もっと踏んでほしいのか?」
「もちろんそれもだけど、ンフッ!!アァ!!は、腹減らないか?」
なおもタケヒロの腹を踏みつけながら空を見上げる。もう周囲にいた人はどこかへ旅立っていったようだ。そうだな。
確かに生きるには食べなければ生きていけぬ。
「それでよ!俺さっきの30ポイントを全部ここに振ったんだよ!肩の周辺の身体能力!これなら握力と合わせていけんじゃねえかな!」
勢いよく起き上がるタケヒロから足をどけて、ユウがタケヒロの全身を見る。なんか、こう、上半身のみがたくましくなったような・・・逆三角形のマッチョになってるのが微妙に気持ち悪い。
「多分、これでよ。」
タケヒロは小石を拾ってそれを握力で握りつぶして粉々にする。そして思いっきり振りかぶって、近くの木に向かって全力でぶん投げた。
すると鋭い貫通音と共に木が穴だらけになって倒れた。これは一種のショットガンのようなものに近い。なるほど、投げるものによってはかなり強力な攻撃になるな。
「すげえー!いいじゃん!ん?どうしたタケヒロ。」
「あ、あの・・・こ、腰をやったみたい・・・」
まるで生まれたての小鹿のように足をぷるぷるさせながら地面に座り込むタケヒロ。
「あー・・・足腰は全く強化してなかったもんな・・・次の課題はそこだな。」
「しかし、お前のポイントどうしたんだろうな。消えたのか?」
「まあ・・・いいや。今はまだこの魔法だけでなんとかなると思うし、多分俺にはあれは持て余しそうな気がするからな。」
とりあえず、戦えるくらいの力を手に入れた俺たちは別の地区も回ってみることにした。何にしろ、色々な人と情報交換もしてみたいというのもあった。その方が互いにプラスになるし、単独より安全のはずなのだから。




