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護衛騎士?ヴィンセント  作者: れすた
第五章 縁談&スポーツ
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第四十話 条件ですわ!?

 サウレア王国・王宮


「そうか。縁談はつつがなく進んでいるのだな」


 サウレア王は、報告を聞いて満足そうに頷いた。


 しかし――


「……え?」


「はい?」


「アイリス殿下の護衛騎士と、決闘?」


 王の表情が固まる。


「何故そうなった?」


 その問いに、第二王子サウロスは胸を張った。


「ええ! アイリス殿下を射止めるために、強い男であることを証明して参ります!」


「…………」


 王はしばらく息子を見つめた。


「……お主、何か勘違いしていないか?」


「何をです?」


「政略結婚だぞ?」


「はい!」


「両国の友好のためだぞ?」


「承知しております!」


「ならば、なぜ決闘になるのだ……」


 王には理解できなかった。


 しかしサウロスは至って真剣だった。


「私が勝てばいいだけの話です!」


「…………」


 王は額に手を当てる。


「……お主、相手の護衛騎士のことは?」


「噂でしか知りません!」


「それで決闘を受けたのか?」


「ですが、私もこれまで鍛えて参りました!」


 サウロスは自信満々だった。


 王は深くため息をついた。


「……そうか」


 しばし考えた後、王は側近へ告げる。


「皇帝陛下に確認したい」


「はっ」


「会談を申し入れてくれ」


◇ ◇ ◇ ◇


皇国・迎賓館


 後日。


 迎賓館には、両国の代表が集まっていた。


 皇帝陛下。


 皇后陛下。


 エルナ。


 アイリス。


 そしてサウレア王。


 王はまず、皇帝へ向き直る。


「此度のことは……」


 皇帝もまた、どこか疲れたような顔をしていた。


「……アイリス」


「はい、お父さま!」


「お前の口から言いなさい」


「はい!」


 アイリスは姿勢を正す。


「皇室の務めであることは、もちろん分かっておりますわ!」


 サウレア王が頷く。


「うむ」


「ですが、政略結婚などせずとも、お互いの国で友好は深められるはずですわ!」


 アイリスは続ける。


「道中の道や、街の賑わい……ご覧になられましたでしょう?」


「……ああ」


 サウレア王も頷いた。


「これを、両国でさらに発展させて参りましょう?」


「それは分かる」


 王もそこは認める。


 皇国とサウレア。


 両国が交易や技術交流を深めれば、婚姻だけに頼らずとも関係を強固にすることはできる。


 だが――


「しかし、婚姻の重要性も……」


「それは……」


 アイリスが少し視線を逸らす。


「……タイプでは、ないのですわ」


「…………」


 静寂。


 皇后陛下が口元を隠す。


「あらあら」


 エルナも、隣で目を見開いている。


 サウレア王は黙り込んだ。


「……それは」


 反論しようとして――やめた。


 そして、ちらりと皇帝を見る。


(しかし……皇国の方が国力は上……)


 サウレア王は冷静に状況を考える。


(手を取り合いたいということは見えた、ここで無理に押し通す必要もない)


 先日、自信満々に胸を張っていたサウロスの姿が目に浮かぶ


(……サウロスには、泣いてもらうか)


 王は静かに目を閉じた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ということで!」


 アイリスがヴィンセントへ向き直る。


「ヴィンセント? あなた、決闘していただきますわ!」


「かしこまりました」


 ヴィンセントはいつものように頷く。


「決闘相手はどなたですか?」


「サウレア王国の第二王子ですわ!」


「…………え?」


 ヴィンセントの動きが止まった。


「王子ですか?」


「ええ!」


「アイリス殿下? 私、手加減が苦手なのをご存知ですよね?」


「存じておりますわ!」


「…………」


 ヴィンセントは少し考える。


「隣国の王子を、面前で?」


「ええ、そうですわ!」


「吹き飛ばせと……?」


「ええ、そうですわ!」


 あまりにも迷いのない返答だった。


 ヴィンセントは困ったような顔をする。


「……本当に大丈夫なんでしょうか」


 アイリスは胸を張った。


「良い方なのですが、タイプではありませんの」


「……理由、それですか?」


 ヴィンセントが思わず呟く。


 皇后陛下が口元を隠す。


「まあ……年頃ですものね。うふふ」


 エルナも穏やかな表情を浮かべる。


「まあまあ……」


 その横で、皇帝陛下は頭を抱えた。


「皇室の娘だぞ……」


「お父さま?」


「なんじゃ」


「わがままではありませんわ」


「では何だ」


「条件ですわ!」


「……同じようなものではないか」


 皇帝が深いため息をつく。


 ヴィンセントは再びアイリスを見る。


「……では、決闘をお受けします」


「お願いしますわ!」


「ただ……」


「なんですの?」


「本当に、怪我をさせてしまっても?」


 アイリスは少し考えた。


「……できれば、ほどほどにお願いしますわ」


「最初からそう言ってくださいよ……」


 ヴィンセントが苦笑した。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「……顔は、やめておきますね」


 ヴィンセントが少し考えてから言った。


「お主、顔を狙うつもりだったのか?」


 皇帝陛下がすぐさま反応する。


「いえ、そういうつもりでは……」


 ヴィンセントが困ったように答える。


 アイリスは腕を組んで考える。


「別に顔でも構いませんわ」


「アイリス?」


 皇帝が眉をひそめる。


「良くなるかもしれ――」


 そこまで言って、アイリスが止まった。


「……ちょっと言い過ぎましたわ」


 皇后陛下が小さく微笑む。


「まあまあ」


 エルナも何とも言えない表情を浮かべている。


「アイリス……」


「ですから!」


 アイリスが仕切り直す。


「腹ですわ! 腹!」


「腹ですか……」


 ヴィンセントが少し考える。


「……いや、鍛えているとはいえ王子ですよ?」


「そうですわね」


「私が普通に殴ったら、穴が開くかもしれません」


「…………」


 皇帝が頭を抱える。


「なぜ決闘の相談で『穴が開く』という話になるのだ……」


「では、どうしましょう?」


 ヴィンセントが尋ねる。


 アイリスは少し考えたあと、ぱっと顔を上げた。


「そうですわ!」


「何でしょう?」


「いつもの重鎧と大盾ですわね! それに身体強化はもちろんなしですわ」


「……ああ」


 皇帝が頷く。


「それならまだ……いや、全然安心できんが」


 アイリスも頷く。


「それでいきましょう!」


「かしこまりました」


 ヴィンセントも素直に了承する。


 皇帝は三人を見ながら、深いため息をついた。


「……どうして縁談の話が、こうなるのだ」


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