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護衛騎士?ヴィンセント  作者: れすた
第五章 縁談&スポーツ
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第四十一話 決闘当日・闘技場

 決闘当日。


 闘技場には、皇国とサウレア王国の関係者が集まっていた。


 決闘場へ入る前。


 第二王子サウロスは、少し離れた場所にいるアイリスを見つめていた。


(アイリス殿下……なんて可憐なんだ……)


 自然と胸が高鳴る。


(この決闘で勝って、良いところを見せるぞ!)


 そんなサウロスのもとへ、従者たちがやって来る。


「殿下、こちらを」


「ん?」


 従者が持ってきたのは――重厚な鎧。


「……これは?」


「お召しください」


「なぜだ?」


 従者たちは黙々とサウロスへ鎧を装着していく。


「いや、待て。なぜそんなに重鎧をつけようとしているのだ?」


「王命でございます」


「父上の?」


「はい」


「…………」


 さらに従者が、巨大な大盾を運んでくる。


「そして、こちらを」


「なんだこの大盾は!」


 サウロスが目を見開く。


「私くらいあるではないか!」


「こちらも王命でございます」


「これでは一歩も動けなくなるではないか!」


「そのように承っております」


「……王はどういうおつもりだ?」


 従者が一礼する。


「大盾を構えて、踏ん張れと……言伝を預かっております」


「ますます意味が分からん!」


 サウロスは大盾を見る。


「それでは勝てんではないか!」


「……」


「ええい! こんな鎧はいらん!」


 サウロスが鎧を脱ごうとする。


「なりません!」


 従者が慌てて止める。


「これが決闘の規定ですので!」


「規定だと!?」


「これを脱がれては、試合そのものが取り消しとなります!」


「ぐぬぬ……」


 サウロスは渋々、大盾を構える。


「……どういうことなのだ」


 しかし、王の命令ならば仕方がない。


 そのまま決闘場へ向かった。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「開始!」


 開始の合図。


 サウロスは大盾を構え、踏ん張る。


 向かいにはヴィンセント。


 身体強化は使っていない。


 ヴィンセントがゆっくりと歩み寄る。


「……来い!」


 サウロスが叫ぶ。


 ヴィンセントが拳を構える。


「では」


 次の瞬間。


 ドンッ!!


「ぐ――っ!?」


 拳が大盾を捉えた。


 大盾ごとサウロスの身体が浮き上がる。


「な――」


 そのままサウロスは空中へ打ち上げられ、


 地面を何度か転がった。


 そして――気絶。


 残された大盾は、大きくひしゃげていた。


「…………」


 皇帝陛下が呆然とする。


「おい……」


 アイリスを見る。


「あいつ、身体強化使ってないんだよな?」


「ええ……使っておりませんわ」


「…………」


 皇帝はひしゃげた大盾を見る。


「……あれ、ゆっくりの方が嫌じゃないか?」


 エルナとアイリスが頷く。


「私たちもそう思います」


「ですわね……」


 闘技場には、なんとも言えない沈黙が流れていた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 決闘の後


 サウロスが倒れた後も、決闘は終わらなかった。


「次は私が!」

 

 鎧を身につけたサウレア王国の精鋭騎士たちが、次々と名乗りを上げる。


 しかし――


「ぐふうぅぅ……!」


 ドンッ!


 身体が宙を舞う。


 そして、


 どさぁ。


 地面へ落ちる。


「次!」


「お願いします!」


「ぐふうぅぅ……!」


 どさぁ。


「次!」


「…………」


 どさぁ。


 何人目か分からなくなった頃。


「も、もう良い……」


 サウレア王が、力なく手を上げた。


「なんじゃ、あれは……」


 王は闘技場の中央に立つヴィンセントを見る。


「実際に見ると……訳が分からん……」


 ヴィンセントはというと、特に疲れた様子もなく立っている。


「まだお相手できますが?」


「もうよい!」


 王が即座に止める。


「十分じゃ!」


「かしこまりました」


 ヴィンセントが素直に下がる。


 王は一度深く息を吐き、皇帝陛下へ向き直った。


「……では!」


 先ほどまでの困惑を振り払うように姿勢を正す。


「今後の両国の関係について、お互い話し合おうではありませんか! 皇帝陛下!」


「うむ。そうであるな!」


 皇帝も頷いた。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 その後、一同は迎賓館へ場所を移した。


 こうして、縁談をきっかけに始まった一連の騒動は――


 いつの間にか、両国の本格的な交流について話し合う場へと変わっていた。


 技術の共有。


 道路整備の方法。


 料理のレシピ。


 そして、それらを広めるための条件。


 両国の担当者が細かな内容を一つひとつ確認していく。


「こちらの技術については、ライセンス料をこの程度で」


「それならば問題ありません」


「こちらのレシピについては――」


「その条件で結構です」


 交渉は順調に進んでいった。


 その一方で――


「…………」


 サウロスは少し離れた場所で、泣きそうな顔をしていた。


 アイリスとの縁談。


 そして、男として良いところを見せようと挑んだ決闘。


 結果は――


 完敗。


 しかも自分だけではなく、騎士団の精鋭たちまで次々と吹き飛ばされた。


 それでも両国の交渉は進んでいく。


 やがて――


「これでよろしいですな」


「ええ」


「では、今後とも良き関係を築いていきましょう」


「もちろんです!」


 皇国とサウレア王国。


 両国の技術・文化交流は、これを機にさらに活発になっていく。


 縁談そのものは、思わぬ形で流れた。


 しかし――


 道路。


 料理。


 技術。


 そして新たな文化。


 両国の友好関係は、婚姻に頼ることなく、確実に深まっていくことになった。


 ――そしてサウロスだけが、最後まで泣き顔だった。

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