第三十九話 縁談ですわ!?
サウレア王国からの使者
ある日、皇宮へサウレア王国からの使者が訪れていた。
目的は、両国の友好をさらに深めること。
そして、そのための一つの提案を持ってきていた。
「友好関係をより深めるため、我が国の第二王子と、アイリス殿下とのご縁談を提案させていただきたく」
「まあ!」
アイリスが目を瞬かせる。
「相手はどなたですの?」
「サウレア王国の第二王子でございます」
「あら……」
アイリスは少し考える。
(お見かけしたことがあるような、ないような……)
エルナは第一皇女。
まだ正式な縁談が決まっていないとはいえ、王族同士の婚姻を考えるなら、第二皇女であるアイリスに話が来ること自体は不自然ではない。
「一度、ご挨拶してみますわ」
「ええ、お願いいたします」
そして、顔合わせの日。
アイリスは向かいに座る第二王子を静かに眺めていた。
(……タイプではございませんわね)
悪い方ではない。
身なりも整っている。
礼儀もある。
王子としても、それなりに優秀なのだろう。
(でも……)
アイリスは少し考える。
(これも皇室の者としてのお務めですもの)
政略的な婚姻。
国と国との関係を考えれば、受け入れることも必要なのだろう。
だが、ふと別の考えが浮かんだ。
(……そもそも、結婚をしなくても友好関係を結ぶことはできますわよね?)
両国が互いに発展していけば、それで十分に友好関係は築ける。
ならば――
(わざわざ結婚する必要があるのでしょうか?)
アイリスは首を傾げた。
その頃。
「これは良い殿方ですな!」
皇帝が満足そうに頷いていた。
「ありがとうございます!」
サウレア王国の第二王子も頭を下げる。
そして心の中では、
(アイリス殿下、とても可憐な方だ!)
(この人が僕の妻に……!)
と、すっかり乗り気だった。
「では――」
話が進みかけた、その時。
「……あ」
アイリスが口を開いた。
「ちょっとお待ちいただいても宜しくて?」
「もちろんです、アイリス殿下」
「ありがとうございますわ」
アイリスは少し考えてから、皇帝を見る。
「一つ条件がございますの」
「……なんじゃ、急に」
皇帝は嫌な予感を覚えながらも促した。
「とりあえず申してみよ」
「はい」
アイリスは第二王子へ向き直る。
「私の護衛騎士と、決闘していただけませんこと?」
「…………」
皇帝の表情が止まった。
「勝てれば、この縁談を進めさせていただきたいですわ!」
アイリスはにっこりと微笑む。
「私の夫となる方には、強さも欲しいのですわ!」
「…………」
皇帝がゆっくりとアイリスを見る。
「アイリス……」
「はい?」
「ヴィンセントとか?」
「もちろんですわ!」
「…………」
皇帝は目を押さえた。
そして、そのまま頭を抱える。
「それは、おまえ……」
だが。
「決闘、受けて立ちましょう!」
第二王子が力強く答えた。
「…………」
皇帝の手が、さらに深く額へ沈む。
アイリスは満足そうに頷いた。
「まあ! 頼もしいですわ!」
――皇帝には、もう結果が見えていた。




