番外編⑤ 西方視察・西国の対応
「参謀殿!」
戦闘には加わらず、離れた場所から一行を監視していた暗部の男が、何かを思い出したように声を上げた。
「そういえば、一つ情報が!」
「……なんだ?」
「最初は見間違えかと思っていたんですが……」
男は少し考えてから口を開く。
「鐘を持った男は……」
「ヴィンセントか」
「はい」
「何か分かったのか?」
「……最初、使用人かと思いました」
「使用人?」
参謀が眉をひそめる。
「騎士服は着ています。ただ……なんと言いますか」
暗部の男は言葉を探す。
「動きが、全て使用人のようなのです」
「…………」
「いえ……」
少し迷った後。
「専属の世話係、と言いますか……」
「世話係?」
「はい。ただ、本人は嬉々として動いておりまして」
「…………」
参謀は頭を抱えた。
「なんだ、その情報は……」
「申し訳ありません」
「それが何になるというのだ?」
「……ですよね」
暗部の男も困った顔をする。
しかし、そこで別の男が口を挟んだ。
「ですが、もう一つあります」
「まだあるのか?」
「はい」
参謀が顔を上げる。
「都市での滞在中も観察しておりました」
「それで?」
「ヴィンセントは、皇女殿下や侍女たちの荷物を持ったり、飲み物を用意したり……とにかく自分から世話を焼いていました」
「ふむ」
「ところが」
「ところが?」
「頼まれた相手によって、露骨に態度が違っておりました」
「…………」
参謀の眉が動く。
「どういうことだ?」
「それが……」
「話を聞く限り、雑用が嫌いなわけではないのだろう?」
「はい」
「むしろ自分から進んでやっているのだろう?」
「はい」
「それなのに、相手によって態度が変わる?」
「……そうなのです」
「…………」
参謀は黙り込んだ。
意味が分からない。
「どう違う?」
「皇女殿下方やリゼットという騎士からの頼みには、非常に素直に応じていました」
「…………」
「ですが、他の者には……気分次第、とでも言いますか」
「気分次第?」
「はい」
参謀は深いため息をついた。
「……なんだ、その男は」
「私にも分かりません」
「私にも分からん」
しばしの沈黙。
結局。
今回の調査で判明したのは――
リゼットという非常に強い女騎士がいること。
ヴィンセントという男が、なぜか皇女たちの世話を焼きまくっていること。
そして――
頼まれた相手によって、態度が大きく変わること。
肝心の戦闘能力の詳細については。
「……それで?」
「はい」
「ヴィンセントの詳しい実力は?」
「…………」
「金色の閃光のように速いこと以外は、分かりません」
「…………そうか」
参謀は天井を見上げた。
「……何しに行ったんだ、お前たちは」




