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護衛騎士?ヴィンセント  作者: れすた
第二章 アイリス初公務
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第十三話 盗賊消失


「皇女の一行だな!」


 盗賊たちは、アイリスたちを見て下卑た笑みを浮かべていた。


「周りの護衛も、噂通り美人揃いだな!」


「これは儲かるぞ!」


 親衛隊の者たちは、アイリスを中心に警戒態勢を取る。


 しかし、その前へ。


 ヴィンセントが一人、歩き出した。


「……なんだ、この男は?」


「騎士……か?」


 盗賊の一人がヴィンセントの服装を見る。


「騎士の服は着てるな……」


 だが、すぐに眉をひそめた。


「武器は……?」


「…………」


「素手!?」


 盗賊たちがざわめく。


「なんだこいつ!」


「生贄でも寄越したのか!?」


 ヴィンセントは、そんな言葉を気にする様子もない。


 ただ静かに、盗賊たちへ近づいていく。


「…………」


 そして。


 ――姿が消えた。


「え?」


 次の瞬間。


 ドンッ!


 ――と、何か一つの音が響いた。


 同時に、街道を砂埃が覆う。


「なっ――!?」


 盗賊たちの姿が見えなくなる。


 数秒後。


 砂埃がゆっくりと晴れていく。


 そこには――


 街道のあちこちに転がる、約二十名の盗賊たち。


「…………」


「…………」


 親衛隊も。


 アイリスも。


 誰も言葉を発しなかった。


 聞こえた音は、一つだけ。


 そして、その一音の後には。


 二十人全員が倒れていた。


 そんな状況だった。


「終わりました!」


 場違いなほど明るい声が響く。


 ヴィンセントが、何事もなかったように戻ってくる。


「これで安心して進めますね!」


「…………」


「…………」


 アイリスも親衛隊も、呆然としている。


 ヴィンセントは首を傾げた。


「あれ?」


 そして、周囲を見回す。


「視線が一つ消えましたね」


「……視線?」


「はい」


 ヴィンセントは森の奥へ視線を向ける。


「皇国の影のものだと思っていましたが……別のものもいたみたいですね」


「…………」


 アイリスと親衛隊が顔を見合わせる。


 そんなものまで気づいていたのか。


「……」


 ヴィンセントが振り返る。


「あれ? 皆さん、どうしました?」


 そしてアイリスを見る。


「アイリス殿下?」


 アイリスはしばらく黙っていた。


 やがて。


「あなた……」


「はい?」


「音が一つしか聞こえませんでしたのに……」


 アイリスは街道に転がる盗賊たちを見る。


「盗賊の皆さんが、同時にゴロゴロと……」


「はい」


「何をしたんですの?」


「え?」


「全く見えませんでしたわ」


 親衛隊へ視線を向ける。


「親衛隊の皆さんは?」


「わ、わたくしたちもです……」


 隊員の一人が答える。


「何も見えませんでした……」


 隊長も、しばらく倒れた盗賊たちを見つめている。


「……私もです」


 アイリスは改めて盗賊たちを見る。


「といいますか……」


 少し不安そうに尋ねる。


「盗賊は、生きてますの?」


「ああ、それは大丈夫だと思います!」


 ヴィンセントは笑顔で答えた。


「頑張って手加減しましたので!」


「…………」


 アイリスの眉が僅かに動く。


「……手加減?」


「はい」


 ヴィンセントは頷いた。


「副団長の時よりは、強めに行きましたが」


「…………」


 親衛隊の空気が凍る。


「生きているとは思います!」


「……思います?」


「ただ、すぐに回復術師に診てもらわなければ、ひどい後遺症に悩む可能性はあると思います!」


「…………」


 「まあ、近くの太陽教の教会に這ってでも行くでしょう。」


 アイリスは、倒れている盗賊たちを見る。


 そしてヴィンセントを見る。


「あれで……」


 一拍。


「手加減……?」


「はい!」


 ヴィンセントは元気よく答えた。


「でも、殺してません!……たぶん!」


 アイリスと親衛隊の声が重なった。


「「そういう問題ではありません!!」」


「…………?」


 ヴィンセントだけが、きょとんとしていた。


 その一方。


 先ほど「消えた」とヴィンセントが言った視線の主は、


 すでに森の奥へ姿を消していた。


 そして、もう一人。皇国が密かに同行させていた監視役も。


 その者もまた、今見た光景を前に――


 報告すべき言葉を失っていた。

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