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護衛騎士?ヴィンセント  作者: れすた
第二章 アイリス初公務
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第十四話 私たちって…


 盗賊たちを無力化した後。


 一行は再び南方都市へ向けて進んでいた。


 しかし――。


 親衛隊の間には、どこか複雑な空気が漂っていた。


「…………」


「…………」


 しばらくして、一人の隊員がぽつりと呟く。


「……わたしたちって、いります?」


「…………」


 誰も答えない。


「いや……もちろん、皇女殿下の護衛として必要なのは分かっていますよ?」


「ですが……」


 別の隊員が前方を見る。


 そこではヴィンセントが、アイリスの荷物を運んでいた。


「荷物を持とうとすれば、ヴィンセント殿が全部持ってくださる……」


「テントの設営もヴィンセント殿」


「料理もヴィンセント殿」


「しかも料理、美味しいんですよね……」


「…………」


 さらに別の隊員が続ける。


「休憩の準備までしてくださいますし……」


「飲み物もお菓子も出してくださる……」


「索敵だって……」


 そこで、全員の顔が曇った。


「他国の監視を見つけ……」


「しかも、あっという間に二十人を……」


「…………」


 沈黙。


 一人が深刻な顔で呟いた。


「全部してくださる……」


「…………」


「このままでは……」


 ごくり。


「ダメ人間になってしまう……」


「それは……困ります……」


 親衛隊員たちは真剣に悩み始めた。


 しかし。


 隊長が静かに口を開く。


「……皆さん」


「はい」


「一つ、忘れてはいけません」


 隊長はヴィンセントを見る。


「ヴィンセント殿は、我々を不要だとは考えていません」


「……そうですね」


「むしろ……」


 先ほどまでのヴィンセントの様子を思い返す。


 荷物を持とうとすれば嬉しそうに受け取り。


 料理を手伝おうとすれば「ありがとうございます」と笑い。


 護衛を任せれば、当然のように信頼している。


「ヴィンセント殿は、我々を信頼してくださっている」


「……はい」


「そして、我々に頼られることを……」


 隊長は少し考え。


「喜んでおられるのでは?」


「…………」


 全員が黙った。


 確かに。


 思い返してみれば、ヴィンセントは何かを頼まれるたびに嬉しそうだった。


 まるで、


「任せてもらえた」


ことそのものを喜んでいるかのように。


「…………」


 隊長が頷く。


「ならば」


 親衛隊員たちを見る。


「我々が無理に遠慮する必要はありません」


「……つまり?」


「殿下の護衛は、我々が責任を持って行う」


「はい」


「警戒も怠らない」


「はい」


「そのうえで――」


 隊長は少しだけ笑った。


「ヴィンセント殿には、甘えましょう」


「…………!」


「なるほど……!」


「そういうことですか!」


「では、ありがたく……!」


 その瞬間。


「皆さん!」


 ヴィンセントの声が聞こえた。


「紅茶とケーキの準備ができましたよ!」


「…………」


 親衛隊全員が顔を見合わせる。


 隊長が代表して答えた。


「ありがとうございます、ヴィンセント殿!」


「どういたしまして!」


 ヴィンセントは嬉しそうに笑った。


 親衛隊員たちは紅茶とケーキを受け取りながら、心の中で決意する。


 護衛は自分たちがする。


 警戒も決して怠らない。


 そして――


 ヴィンセント殿がしてくださることは、ありがたく甘えさせていただこう。


 それが、ヴィンセントの信頼に応えることでもあるのだから。

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