第48章 世界羅針盤の核
神殿を震わせる重低音が響く。
黒い霧は柱を侵食し、白銀の床を闇へと染め上げていく。
世界羅針盤の核には、新たな亀裂が一本、また一本と刻まれていった。
「急げ!」
創世の選定者が叫ぶ。
「核が完全に砕ければ、すべての門は崩壊します!」
レイはアリアをゆっくり床へ寝かせた。
「待ってろ。すぐ戻る。」
アリアは弱々しく頷く。
「……必ず。」
レイは立ち上がり、虚界王を真っ直ぐ見据えた。
「今度こそ終わらせる!」
虚界王は愉快そうに笑う。
「終わるのは貴様たちだ。」
右手を掲げると、神殿中の闇が集まり、巨大な漆黒の剣となった。
「世界は希望では守れぬ。」
「最後に残るのは絶望だけだ。」
剣が振り下ろされる。
轟音とともに床が砕け、巨大な亀裂が走った。
レイは横へ飛び、羅針盤を構える。
「《羅針盤展開》!」
黄金の羅針盤が宙に現れ、針が高速で回転する。
《未来選択を開始します》
光の文字が浮かんだ。
──────────────
① 正面から迎え撃つ
② 世界羅針盤の核を守る
③ 虚界王の力の源を探す
──────────────
(また選択か……。)
レイは虚界王を見る。
その身体には以前より濃い闇が渦巻いていた。
正面から倒せる相手ではない。
そして核を守るだけでは終わらない。
ならば――。
「③だ!」
光が弾ける。
《選択を確認》
《解析開始》
羅針盤の針が虚界王ではなく、その背後を指した。
「後ろ?」
闇の奥に、小さな黒い結晶が浮かんでいる。
鼓動のように脈打ち、周囲の闇を吸い込み続けていた。
「まさか……。」
創世の選定者が驚く。
「虚界核!」
虚界王が顔色を変えた。
「見るな!」
闇の槍が無数に放たれる。
レイは走る。
槍をかわし、柱を蹴り、一直線に黒い結晶へ向かった。
「止まれぇぇぇ!!」
虚界王が絶叫する。
神殿全体が揺れた。
だが、その時だった。
倒れていたアリアの紋章が淡く光る。
「……レイ。」
小さな声。
アリアは震える手を伸ばした。
「私も……戦います。」
「駄目だ!」
「これは……二人の戦いです。」
アリアの身体を白い光が包む。
本来なら変身できる状態ではない。
それでも彼女は立ち上がった。
光の羽がゆっくりと広がる。
だが以前よりずっと小さく、輝きも弱い。
レイの胸が痛んだ。
「無茶するな!」
アリアは笑う。
「約束しました。」
「最後まで、一緒に歩くって。」
その言葉に、レイも笑みを返した。
「ああ。」
「一緒に終わらせよう。」
二人の紋章が共鳴する。
神殿中に黄金の光が広がった。
創世の選定者は静かに目を閉じる。
「これが……最後の同調。」
レイとアリアが手を重ねる。
羅針盤の針が止まり、世界が静まり返った。
虚界王だけが驚愕の表情を浮かべる。
「馬鹿な……!」
「まだ同調できるはずが!」
アリアは優しく微笑んだ。
「私たちは……力で繋がっているんじゃありません。」
レイが続ける。
「信じ合ってるから繋がれるんだ!」
黄金の光が二人を包み込む。
その瞬間――。
世界羅針盤の核から、一筋の光がレイへと降り注いだ。
《最終権限を確認》
《選定者・レイ》
《世界管理権限、一時解放》
レイの目の前に、これまでとは比べものにならない巨大な光の文字が現れる。
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【最後の選択】
① 虚界を完全に消滅させる
② 虚界と世界を融合させる
③ 新たな世界を創り直す
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創世の選定者も、ゼロも、ノアも息を呑む。
「ついに……最後の選択が。」
レイは静かに三つの選択肢を見つめた。
この選択一つで、世界の未来が決まる。
そして虚界王は狂気に満ちた笑みを浮かべる。
「さあ選べ、選定者。」
「その答えこそが、この世界の結末だ!」
レイはゆっくりと息を吸い、決断の時を迎えた。




