第46章 導者の祈り
「アリア!!」
レイの叫びが、終焉の地に響き渡る。
抱きかかえたアリアの身体は冷たくなり始めていた。
胸に突き刺さった黒い槍は、虚界王の力そのもの。
白い光を少しずつ侵食していく。
「いやだ……」
レイは首を振る。
「こんな終わり方、認めない。」
何度も治癒魔法を試みる。
羅針盤の力も流し込む。
しかし、黒い槍はびくともしない。
「どうしてだ……!」
セレスが涙を浮かべる。
「虚界王の呪いです……普通の力では消せません。」
ノアも唇を噛み締めた。
「時間を巻き戻しても無理だ……。」
ゼロが静かに前へ出る。
彼は槍に手を触れ、目を閉じた。
「……やはりか。」
レイが顔を上げる。
「何かわかったのか!」
ゼロは苦しそうに頷いた。
「これは『終焉の楔』。」
「選定者を守った導者の命を代価に、世界の均衡を崩すための呪いだ。」
レイは拳を握る。
「助ける方法は!」
長い沈黙。
そしてゼロはゆっくりと答えた。
「……ある。」
全員が顔を上げる。
「本当か!」
「だが、その方法を使えば。」
ゼロはレイを真っ直ぐ見た。
「選定者である君が、すべての力を失う。」
静寂が訪れる。
羅針盤。
選定者。
門。
これまで戦ってきた力。
そのすべてを失うということだった。
「それでも。」
レイは迷わなかった。
「アリアが助かるなら。」
アリアが弱々しく首を振る。
「駄目です……。」
「レイは世界を……。」
「世界なんかより、お前が大事だ!」
思わず叫んでいた。
誰も言葉を発しない。
アリアの瞳から、一筋の涙が流れる。
「……そんなことを言う人だから。」
「私は……。」
その時だった。
突然、終焉の門が眩く輝き始めた。
ゴォォォォォ……。
門がゆっくりと開いていく。
中から現れたのは、一人の女性だった。
純白の衣。
長い銀髪。
そして、レイと同じ羅針盤の紋章。
アリアは驚きに目を見開く。
「まさか……。」
ゼロが膝をついた。
「創世の選定者……。」
女性は静かに微笑む。
「長い間、ご苦労さまでした。」
優しい声が響く。
彼女はレイの前まで歩いてくると、アリアを見つめた。
「よくここまで導きましたね。」
アリアは涙を浮かべながら頷く。
「……はい。」
女性はレイへ視線を向ける。
「最後の選定者。」
「あなたには、まだ知らない真実があります。」
「真実……?」
「選定者と導者は。」
一拍置いて、静かに告げる。
「本来、別れる運命ではありません。」
レイは目を見開いた。
ゼロも驚いている。
「どういうことですか……?」
女性は終焉の門へ振り返る。
「虚界王との最後の戦いの前に。」
「あなたには、この世界が生まれた理由を知ってもらいます。」
その瞬間、終焉の門の奥に光の階段が現れた。
世界創生へと続く道。
すべての始まりが眠る場所。
レイはアリアの手を強く握る。
「必ず助ける。」
アリアはかすかに微笑んだ。
「……信じています。」
最後の真実が、今、明かされようとしていた。




