第43章 最後の門、開戦
終焉の地エンデ・ロード。
純白の大地が、黒い稲妻によって裂かれていく。
空には巨大な亀裂。
その奥から、虚界王アザ=グラドの禍々しい気配が世界を覆っていた。
レイは二つの羅針盤を握り締める。
一つは、自分に与えられた《選定者の羅針盤》。
もう一つは、初代選定者ゼロから託された《始まりの羅針盤》。
二つは共鳴し、淡い金色の光を放っていた。
「レイ。」
ゼロが静かに口を開く。
「虚界王は、この世界では完全な姿になれない。」
「それなら勝てる!」
レイが言うと、ゼロは首を横に振った。
「……だからこそ厄介なんだ。」
その瞬間。
黒い亀裂から、無数の黒い球体が降り注いだ。
ズズズズズ……。
球体は地面へ着地すると、人型へと姿を変えていく。
騎士。
魔導士。
獣人。
竜。
その数、数百。
「まさか……!」
セレスが青ざめる。
「歴代の英雄たち……。」
ノアも息をのむ。
「違う。英雄の記憶を利用した虚界の人形だ。」
ゼロは剣を構えた。
「奴は直接戦わない。」
「まず希望を折る。」
黒い騎士たちが、一斉に剣を抜く。
ガシャッ!
その音だけで大地が震えた。
「来るぞ!」
レイが叫ぶ。
同時に、アリアが杖を掲げた。
「《聖域展開・ルミナスフィールド》!」
純白の結界が仲間たちを包み込む。
黒い騎士たちが突撃してきた。
ドォォォン!!
激突。
ゼロは一閃で三体を斬り伏せる。
ノアは時間魔法で敵の動きを止める。
セレスは聖なる炎で魔物を焼き払う。
レイも羅針盤を掲げる。
「導け!」
羅針盤から光が放たれ、仲間たちへ降り注ぐ。
《支援選択発動》
《仲間能力上昇》
アリアが驚く。
「レイ……!」
「俺一人じゃ勝てない。」
レイは笑う。
「だから、みんなで勝つ!」
その言葉に仲間たちの表情が変わる。
「行くぞ!」
ゼロが叫ぶ。
「おう!」
全員が応えた。
激しい戦いが続く。
だが、その最中――。
空が再び裂けた。
今度は巨大な腕ではない。
一人の少女が、黒い翼を広げて降り立った。
銀色の髪。
漆黒の瞳。
アリアとよく似た顔立ち。
しかし、その身体から放たれる気配は真逆だった。
アリアが震える。
「そんな……。」
少女は静かに微笑む。
「久しぶりですね、お姉様。」
レイが目を見開く。
「姉妹……なのか?」
少女はゆっくりと一礼した。
「私は《導者イリス》。虚界王に仕える第三の導者です。」
アリアの手が震える。
「イリス……。」
「私はあなたとは違います。」
イリスは冷たい笑みを浮かべた。
「私は選定者を導くのではなく、終わらせるために生まれました。」
虚界王の笑い声が空から響く。
『さあ始めよう。』
『導者同士の最後の戦いを。』
レイはアリアの前へ立った。
「アリア。」
「……はい。」
「一人じゃない。」
アリアは小さく頷く。
そして杖を握り直した。
「はい。私は、もう迷いません。」
白い光と黒い光。
二人の導者が向かい合う。
その戦いは、世界の運命を左右する新たな決戦の幕開けだった。




