第36章 虚界王の囁き
◆選択の先
地下神殿を埋め尽くす黒い霧。
その中心で巨大な目がゆっくりと開いている。
見るだけで意識が削られるような圧迫感。
レイの前には光の文字が浮かんでいた。
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【緊急未来選択】
① 残滓を今ここで消滅させる
② 情報を優先し撤退する
③ 残滓へ接触し真実を知る
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「レイ!」
アリアが必死に叫ぶ。
「接触してはいけません!」
セレスも珍しく強い口調だった。
「虚界王は認識そのものを侵食する存在よ」
だが。
レイは違和感を覚えていた。
今までの選択は危険か安全かだった。
しかし今回は違う。
まるで世界そのものが。
真実を知る覚悟があるかと問うている。
「……」
レイは静かに目を閉じた。
そして。
選んだ。
◆③ 残滓へ接触し真実を知る
光文字が砕け散る。
《選択を確認》
《因果保護を開始》
《観測権限を一時解放》
次の瞬間。
世界が反転した。
◆始まりの記憶
気づけばレイは真っ白な空間に立っていた。
「ここは……」
誰もいない。
音もない。
ただ白だけが広がる世界。
すると。
一人の少女が現れた。
銀色の髪。
蒼い瞳。
どこかアリアに似ている。
「ようやく来ましたね」
「誰だ?」
「私は最初の導者」
レイの目が見開く。
「最初の……導者?」
少女は頷いた。
「門が作られた時に生まれた存在です」
◆門の創造者
白い空間に映像が浮かぶ。
まだ世界が若かった時代。
空を覆う巨大な黒い海。
大陸を飲み込む闇。
「それが虚界王」
少女が語る。
「虚界王は怪物ではありません」
「え?」
「世界そのものが生み出した存在です」
レイは息を呑む。
「世界が……?」
「はい」
映像が変わる。
人々が争う。
国が滅ぶ。
憎しみ。
絶望。
恐怖。
無数の負の感情。
「世界は限界を迎えました」
少女は静かに続ける。
「そして生まれたのです」
「虚界王が」
「そう」
つまり。
虚界王は侵略者ではない。
世界自身が生み出した膿だった。
◆選定者の真実
さらに映像が変わる。
無数の人影。
歴代の選定者たち。
「こんなに……」
「あなたは三百二十七代目です」
レイは絶句した。
三百二十七。
想像を超える数字。
「全員が世界を救おうとしました」
「そして?」
「失敗しました」
重い言葉だった。
誰一人として虚界王を倒せなかった。
◆アリアの秘密
その瞬間。
映像が再び変わる。
そこに映っていたのは。
見慣れた少女。
「アリア……?」
だが幼い。
いや違う。
今とほとんど変わらない。
何百年も前の服装をしている。
それでも顔は同じだった。
レイの背筋が凍る。
「まさか……」
最初の導者は静かに頷いた。
「アリアは最初の導者の系譜です」
「系譜?」
「導者は死にません」
レイの思考が止まる。
「……え?」
「肉体を失っても再構築されます」
「それじゃ……」
「彼女は数千年の時間を生きています」
◆繰り返された別れ
映像が流れる。
一人目の選定者。
笑っているアリア。
そして死。
二人目。
死。
三人目。
死。
十人目。
百人目。
二百人目。
三百人目。
全ての選定者の最期を。
アリアは見届けていた。
何度も。
何度も。
何度も。
たった一人で。
「だから……」
レイはようやく理解した。
なぜアリアが。
あれほどレイの死を恐れていたのか。
なぜ泣いたのか。
なぜいつも無理をしていたのか。
なぜ笑顔の奥に寂しさがあったのか。
全部。
全部。
失い続けてきたからだ。
◆虚界王の囁き
突然。
白い世界に亀裂が走る。
バキィィィッ!!
巨大な黒い目が現れた。
『選定者』
声が響く。
世界全体が震える。
『哀れな導者を救いたいか』
レイは睨み返した。
「何が言いたい」
『ならば門を壊せ』
「!」
『門がある限り導者は永遠に戦う』
『永遠に失う』
『永遠に泣く』
黒い目が笑う。
『門を壊せば終わる』
『全て終わる』
甘い誘惑だった。
確かに門が消えれば。
アリアは解放される。
だが。
本当にそれでいいのか。
『選べ』
『世界か』
『導者か』
その言葉と共に。
新たな選択肢が現れた。
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【運命選択】
① 世界を守る
② アリアを救う
③ まだ答えを出さない
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今までで最も重い選択。
そして。
その選択を見た瞬間。
レイの紋章がかつてないほど激しく輝き始めた。




