第35章 虚界王の残滓
第三の門を安定化させたことで、世界に張り巡らされていた歪みは大きく減少した。
しかし――。
それは終わりではなかった。
むしろ、本当の敵が動き始める合図だった。
◆静かな異変
レイたちは次なる目的地へ向かう途中、小さな村へ立ち寄っていた。
平和な村だった。
子供たちは走り回り、畑では農夫たちが働いている。
だが。
「……変だな」
レイが呟く。
アリアも頷いた。
「はい……空気が重いです」
セレスが空を見上げる。
「上を見て」
三人は同時に空を見た。
青空。
その中に。
黒い線が一本だけ走っていた。
まるで空そのものに傷が付いたように。
「綻び……じゃないな」
「違います」
アリアの顔色が悪い。
「これはもっと古いものです」
◆地下神殿
調査を始めたレイたちは村の地下に封印された古代神殿を発見する。
石壁には見覚えのある紋章。
門。
選定者。
導者。
そして――。
「虚界王」
セレスが読み上げた。
空気が凍る。
「虚界王?」
レイが聞き返す。
アリアは苦しそうに目を閉じた。
「……やはり」
「知ってるのか?」
「はい」
長い沈黙。
そしてアリアは語り始めた。
◆世界最大の敵
「今まで現れた虚界獣や監視者は、すべて枝葉です」
「枝葉?」
「本体が存在するということです」
レイの背筋に冷たいものが走る。
アリアは石碑へ触れた。
「遥か昔。
世界は一度、滅びかけました」
壁画が光る。
巨大な闇。
空を覆う無数の目。
大陸を飲み込む黒い海。
「それが虚界王」
「……」
「門は本来、この存在を封印するために作られました」
レイは息を呑む。
今までの戦いが前座だったというのか。
◆残滓
その時。
神殿全体が揺れた。
ゴゴゴゴゴ――!!
「来る!」
セレスが叫ぶ。
石壁が崩れる。
奥の封印が砕け散った。
そこから現れたのは。
黒い霧。
ただの霧ではない。
見ているだけで頭が痛くなる。
存在そのものが世界と噛み合っていない。
「これは……!」
アリアの顔が青ざめた。
「虚界王の残滓です!」
霧の中心に巨大な目が開く。
ギョロリ。
その瞬間。
全員の脳内へ直接声が響いた。
『門は開く』
『封印は崩れる』
『王は目覚める』
レイの紋章が激しく発光する。
警告。
今まで見たことがないほど強烈な警告だった。
◆未来選択
視界に巨大な文字が浮かぶ。
────────────────
【緊急未来選択】
① 残滓を今ここで消滅させる
② 情報を優先し撤退する
③ 残滓へ接触し真実を知る
────────────────
「レイ!」
アリアが叫ぶ。
「危険です!」
セレスも珍しく焦っている。
「三番だけは危ない」
だが。
レイには分かっていた。
この選択は今までと違う。
どれも正しい。
どれも間違いだ。
そして。
どれを選んでも世界は大きく変わる。
黒い目がこちらを見ている。
まるで。
選定者が何を選ぶか楽しんでいるように。
レイは拳を握り締めた。
「俺は――」
世界の運命を左右する選択が、目前に迫っていた。




