第33章 封印都市エルドラ ――隠された第四の門
◆残された言葉
第二の門を後にした翌日。
レイたちはクロノシティの一室で休息を取っていた。
だが誰も落ち着けていない。
特にレイは。
『世界は君に嘘をついている』
虚界王の言葉が頭から離れなかった。
「……」
窓の外を見つめる。
時計塔はいつも通り時を刻んでいる。
街も平和だ。
だがレイには、その平和が少しだけ薄っぺらく見えていた。
◆アリアの不安
「レイ」
振り返るとアリアがいた。
手には温かい飲み物。
「少し休んでください」
「休めそうに見えるか?」
「見えません」
即答だった。
「おい」
「でも無理に考えても答えは出ません」
アリアは隣へ座る。
「虚界王の言葉を信じるんですか?」
レイは少し考えた。
「信じるわけじゃない」
「なら」
「でも気になる」
正直な気持ちだった。
「世界を滅ぼそうとしてる奴が、あんなこと言う理由が分からない」
アリアは黙る。
否定できないのだろう。
◆ノアの訪問
コンコン。
扉が叩かれた。
「入るぞ」
現れたのはノアだった。
相変わらず気軽な様子で部屋へ入ってくる。
「元気そうだね」
「お前は元気そうだな」
「そりゃ生きてるからね」
軽い。
この男は本当に軽い。
だが今日は表情が少し違った。
「選定者」
「何だ」
「面倒なことになった」
レイは嫌な予感しかしなかった。
◆第四の門
ノアが机に地図を広げる。
見たことのない地域だった。
「ここだ」
指差した先。
巨大な山脈の奥。
誰も住んでいないはずの場所。
「封印都市エルドラ」
「聞いたことないな」
「当然」
ノアは頷く。
「存在を隠されているから」
アリアが目を見開いた。
「まさか……!」
「知ってるのか?」
アリアの表情が強張る。
「伝承だけなら」
そして小さく呟いた。
「第四の門」
部屋が静まり返る。
◆失われた都市
ノアは説明を続ける。
「今から約五百年前」
地図を指でなぞる。
「一つの都市が突然消えた」
「消えた?」
「正確には封印された」
レイは眉をひそめた。
「何でそんなことを」
「世界が隠したかったからだ」
その言葉にレイが反応する。
「また世界か」
「そう」
ノアは珍しく真面目な顔だった。
「実はね」
一拍置く。
「第四の門は公式には存在しないことになっている」
「は?」
「歴史から消された」
◆記録の矛盾
ノアは一冊の古い本を取り出した。
ページを開く。
「普通、門は三つまでしか記録されていない」
「でも実際は違う」
レイが言う。
「そう」
ノアは頷いた。
「四つ目がある」
アリアが小さく震えた。
「そんな……」
「知ってたのか?」
レイが尋ねる。
アリアは首を振った。
「存在だけです」
「場所は?」
「知りませんでした」
つまり導者ですら知らされていない。
それは異常だった。
◆選定者だけに見えるもの
その時。
レイの羅針盤が光った。
突然だった。
「またか」
最近よく光る。
だが今回は違った。
針が勝手に回転を始める。
そして。
地図の一点を指した。
「……そこか」
全員が地図を見る。
山脈の奥。
封印都市エルドラ。
羅針盤は真っ直ぐそこを示していた。
◆未来接続
次の瞬間。
継承した能力が発動した。
《未来接続》
視界が揺れる。
「レイ!?」
アリアが慌てる。
だがレイの意識は別の場所へ飛んでいた。
◆見えた未来
巨大な都市。
白い壁。
黄金の塔。
そして――。
無数の棺。
「……何だ」
その中央に立つ人影。
見覚えがあった。
黒いローブ。
銀色の髪。
紅い瞳。
虚界王。
だが様子がおかしい。
王は一つの棺の前で膝をついていた。
まるで誰かを弔うように。
「……?」
未来の映像はそこで終わった。
◆新たな旅路
レイは意識を戻した。
呼吸が乱れる。
「見えた」
「何がですか?」
アリアが心配そうに聞く。
レイは少し迷った。
だが隠しても意味はない。
「虚界王だ」
空気が重くなる。
「エルドラにいた」
ノアの目が細くなる。
「なるほど」
「何か知ってるな?」
「少しだけ」
ノアは窓の外を見る。
「エルドラはね」
静かに言った。
「虚界王と最も深い関わりを持つ都市なんだ」
◆出発
三日後。
準備を終えたレイたちはクロノシティを出発した。
目指すは封印都市エルドラ。
誰も知らない第四の門。
隠された歴史。
そして世界の嘘。
全ての答えが、そこにある気がした。
出発の朝。
アリアが隣へ並ぶ。
「レイ」
「ん?」
「何が待っていても」
彼女は少しだけ笑った。
「今回は一人で抱え込まないでくださいね」
レイも笑う。
「努力する」
「努力じゃなくて約束です」
「厳しいな」
「当然です」
そんなやり取りをしながら。
選定者と導者は新たな旅へ踏み出した。
だが誰も知らない。
エルドラで待つ真実が。
これまでの常識を根底から覆すことになると。




