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羅針盤が示す異世界で。  作者: AIで書い太郎
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第21章 「羅針盤が示すもの」

 夜の森は、昼とはまるで別の世界だった。

 焚き火の火が小さく揺れるたび、木々の影が生き物のように伸び縮みする。風が枝葉を鳴らし、その隙間から覗く月光が淡く地面を照らしていた。

 ユウマは膝を抱え、火の向こう側に座るセリアを見た。

「……さっきの、魔物。本当にこの辺りじゃ珍しいのか?」

「ええ。少なくとも、街道近くに出る種類じゃないわ」

 セリアは剣の手入れをしながら答える。刃についた黒い血が布に染み込み、静かに拭い取られていく。

「まるで何かに追われていたみたいだった」

「追われてた?」

「恐怖していたのよ。あれは“狩る側”の動きじゃなかった」

 言われてみれば、あの魔物は一直線に突っ込んできただけだった。知性も戦術もなく、ただ逃げ場を失った獣のように。

 ユウマは無意識にポケットへ手を入れる。

 そこには、あの羅針盤があった。

 取り出すと、淡い光がゆっくりと脈打つ。

「……また光ってる」

 昼間よりも、わずかに強い輝きだった。

 針は落ち着きなく震え、一定の方向を指そうとしては揺れ戻る。

 まるで――迷っているように。

「ねえ、それ」

 セリアが顔を上げた。

「やっぱり普通の道具じゃないわね。魔力の反応がある」

「魔力……?」

「この世界の力よ。生き物にも、大地にも流れてる。でも、それは……少し違う」

 彼女は眉をひそめた。

「例えるなら、“この世界のものじゃない魔力”」

 ユウマの胸が小さく跳ねた。

 異世界から来た自分と関係があるのは、もう疑いようがなかった。

「これ、俺をここに連れてきたんだと思う」

「……そうでしょうね」

 セリアは驚く様子もなく頷いた。

「問題は、“なぜ”かよ」

 焚き火が弾け、小さな火の粉が夜空へ舞う。

 沈黙が落ちた。

 遠くでフクロウの鳴き声が響く。

 その時だった。

 羅針盤の光が――強く脈打った。

「っ!?」

 針がぴたりと止まり、森の奥を指す。

 今までにないほどはっきりと。

 そして次の瞬間。

 ――ズン。

 地面が揺れた。

「地震!?」

「違う!」

 セリアが立ち上がり、剣を抜く。

「何か来る!」

 森の奥から重い足音が響く。

 一歩。

 また一歩。

 木々が揺れ、鳥たちが一斉に飛び立った。

 ユウマの喉が乾く。

 暗闇の向こうに、巨大な影が現れた。

 月明かりに照らされたそれは――

「……嘘だろ」

 三メートルはあろうかという巨体。

 岩のような皮膚。

 赤く光る単眼。

 昼間の魔物とは比べ物にならない圧倒的な存在感。

「ストーンオーガ……!」

 セリアが低く呟く。

「なんでこんな場所に……!」

 怪物が唸り声を上げた瞬間、空気が震えた。

 ユウマの足がすくむ。

(勝てるわけない……)

 そう思った瞬間。

 羅針盤が、眩い光を放った。

 熱が掌に走る。

「うわっ!?」

 針が高速で回転し、突然止まる。

 指しているのは――怪物ではない。

 地面。

 自分の足元だった。

「下……?」

 次の瞬間、頭の中に声が響いた。

 言葉ではない。

 けれど意味だけが流れ込んでくる。

 ――導け。

 ――進むべき方向を、選べ。

「選ぶ……?」

 無意識に一歩踏み出す。

 その瞬間、足元に淡い光の線が走った。

 地面に描かれる光の軌跡。

 まるで道を示すように。

「ユウマ、下がって!」

 セリアが叫ぶ。

 ストーンオーガが腕を振り上げる。

 巨大な影が落ちた。

 だが。

 ユウマは逃げなかった。

 羅針盤の光が強くなる。

 胸の奥で、確信が生まれていた。

(これが……俺の力?)

 光の線が伸び、怪物の足元へ到達する。

 次の瞬間。

 地面が爆ぜた。

「――ッ!?」

 オーガの足場が崩れ、巨体が大きく体勢を崩す。

「今よ!」

 セリアが跳び込んだ。

 銀の軌跡が夜を裂く。

 一閃。

 岩の皮膚の隙間を正確に斬り裂いた。

 怪物が咆哮を上げ、倒れ込む。

 地響きとともに森が揺れ、やがて静寂が戻った。

 焚き火の火だけが、ぱちぱちと音を立てている。

 ユウマはその場にへたり込んだ。

「……今の、何だよ」

 手の中の羅針盤は、もう静かだった。

 まるで役目を終えたかのように。

 セリアがゆっくり近づき、真剣な顔で言った。

「確信したわ」

「……何を?」

「あなた、その羅針盤に“選ばれてる”」

 夜風が吹き抜ける。

 森の奥――羅針盤が指していた方向から、かすかな光が見えた。

 まるで、まだ先へ進めと誘うように。

「ねえ、ユウマ」

 セリアは小さく笑った。

「どうやら旅は、ここから本番みたいよ」

 ユウマは立ち上がり、羅針盤を握り直す。

 針は再び、静かに回り始めていた。

 次の“行き先”を探すように。

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