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インタビュー ウィズ ユリ

異世界のマナーは作者が決められるんだ!うん!だからこれが「まなー」なんだー!

ユリにスポットライトが当たる。


雌オーガ、ユリは悩んでいた。


深く。


本当に深く。


丸太を削った椅子に腰掛け、

指を組み、

眉間に皺を寄せ、

唸っていた。


「うぅむ……」


今のユリは、

明らかに“語りモード”だった。


そして。


ユリはゆっくりと顔を上げる。


「……あれは、地獄だった」


誰に向けるでもなく、

語り始めた。


「いつものように、

ヴォイド様の監視業務をしていた時のことだ」


真顔。


「寝付かれるまで、

物陰から見守る大切な任務」


完全に真顔。


「その日も、

ヴォイド様の部屋の外で、

気配を消して監視していた」


一見すると完全に不審者だった。


「すると突然、

部屋の中が赤黒く光り始めた」


ユリの目が細まる。


「魔法陣だった」


空気が変わる。


「すぐに夜番のメントが異変に気付き、

部屋へ入っていった」


「なので私も入った」


自然だった。


あまりにも自然だった。


「なんという自然な侵入……」


ユリは当時を思い出し、

少しだけ頬を緩める。


「しかも、

ヴォイド様の部屋の空気を、

肺いっぱい吸えた」


幸せそうだった。


「木の香り。

鉄の匂い。

革。

血。

肉。

そして微かな土の匂い……」


恍惚。


「まさにヴォイド様空間」


危なかった。


「……」


一瞬静まり返る。


ユリは咳払いした。


「それでだ」


「魔法陣は、

完成までかなり時間がかかった」


「その間、

ずっとヴォイド様の部屋にいられた」


嬉しそうだった。


「で、完成した」


ユリの顔が引き締まる。


「出てきたのは――」


「白旗を持って土下座した少女」


沈黙。


「私は思った」


「“なんだコイツ”と」


率直だった。


「しかも開口一番、

敵意はない!である」


「武器を構えていたメントも困惑していた」


だが。


ヴォイドは静かに頷いた。


その瞬間。


メントが武器を下ろす。


ユリは目を細める。


「あれが、

ヴォイド様とメントの信頼関係」


「いい……」


ちょっと話が逸れた。


「その後、

少女は軒下へ移動した」


「そして」


ユリは姿勢を正す。


右手を前へ。


腰を落とす。


「――正式な仁義」


空気が変わる。


「ノゲシが昔、

“魔族の古い挨拶”として教えていたものだった」


「私は正直、

こんなの今どき使わないだろと思っていた」


「だが」


「いた」


衝撃だった。


「しかも、

めちゃくちゃ上手かった」


メントも応じる。


空気が締まる。


言葉の間。


礼。


視線。


所作。


全部本物だった。


「メントも普通に返してた」


ユリは遠い目をする。


「なぜお前も出来る」


しかも。


「その後、

少女はヴォイド様へ土下座して頼み込んだ」


「内容?」


ユリは無表情になる。


「めちゃくちゃ厚かましかった」


断言。


「助けてほしい」


「守ってほしい」


「魔王軍に入ってほしい」


「副魔王になってほしい」


「お金も援助してほしい」


「あと負けたフリしてほしい」


「あと世界中に配信したい」


「あと魔王っぽく見せたい」


「あと私弱いから守ってほしい」


ユリは真顔だった。


「厚かましさの権化だった」


だが。


ヴォイドは。


「……わかった」


即答だった。


「優しい……」


ユリは両手で顔を覆う。


「優しすぎる……」


そして。


泣き止んだ魔王候補。


その瞬間。


ぐぅぅぅぅ……


魔王候補、

ジュワカボースのお腹が鳴った。


沈黙。


「……」


「……」


「……かわいいな?」


ユリは立ち上がる。


「なので私は料理を作ることにした」


最近。


この国にも、

使者や他種族が来る。


そのため。


ノゲシ主導で、

他種族向け食文化を学んでいた。


パン。


魚。


野菜。


スープ。


保存食。


そして。


作法。


「ヴォイド様の隣に立つには、

必要だから」


ユリは真面目に練習していた。


なので。


夜中。


竈に火を入れる。


パン種をこねる。


魚を焼く。


壺漬け野菜を盛る。


スープを温める。


「あと、

小さいパンを別皿に乗せた」


これは。


おかわり用。


ノゲシから、

何度も叩き込まれた。


「これが出来ないと、

“田舎者”扱いされる」


恐ろしい世界だった。


そして。


持っていく。


ジュワカボースは、

手を合わせて礼を言った。


そこまでは普通。


問題は。


そこからだった。


「作法が完璧」


ユリの目が死ぬ。


「完璧だった」


魚。


切り分け。


骨をまとめ。


懐から懐紙を取り出しはさむ。


パン。


端から千切る。


途中で中をくり抜く。


そして。


無言で皿を両手で差し出す。


ユリは反射で動いていた。


「作法にかなったおかわり、

ありがとうございます」


小さいパンを中へ入れ、

返す。


完璧。


ジュワカボースも頷く。


「通じた……!」


感動した。


「私の努力が……!」


食事をかたずけた後…


問題はここからだった。


ユリは遠い目をする。


「茶番劇」


重い声。


「少女が出した最初の脚本」


ユリは頭を抱える。


「ひどかった」


回想。


ジュワカボース:

「悪いやつめ!悪魔をいじめるのはやめるのじゃー!」


ヴォイド:

「グオオオオ」

 

悪魔:

「ぎゃー!」


ジュワカボース:

「魔王ぱーんち!」


ヴォイド:

「ぐわー!」


ジュワカボース:

「ふはははは、われ最強!」

 

ジュワカボース:

「オーガと仲良くなった!」


沈黙。


「誰が信じる」


ユリは即座に止めた。


「ヴォイド様の威厳が死ぬ!!」


ヴォイドが立ち上がろうとしていたので、

慌てて止めた。


ヴォイドは不思議そうだった。


なぜ止める?


みたいな顔だった。


「なので、私が脚本を書くことになった」


そこからが地獄。


「まず、出来ることを全部聞いた」


ジュワカボース。


・障壁

・召喚

・映像魔物の召喚

・転移


以上。


「少なっ」


しかも。


ヴォイド様。


「長台詞が言えない」


致命的。


「まず順番を間違える」


「途中で尻すぼみになる」


「感情を込めると低くなりすぎて聞こえない」


「タイミングが合わない」


「黙る」


「急にセリフが短くなる」


「あと普通に噛む」


ユリは頭を抱えた。


だが。


ジュワカボースは、

どんどん上手くなった。


威厳。


間。


声。


笑い。


全部成長する。


「天才か?」


対して。


ヴォイド。


「……」


「……お前は…強いのか?」


終わり。


「これだ!!」


ユリは閃いた。


「ヴォイド様は、

喋らない方が威厳が出る!!」


歴史的発見だった。


なので。


全部ジュワカボースに喋らせた。


ヴォイドは一言。


「……お前は…強いのか?」


だけ。


「今思えば英断だった」


本当にそう。


だが。


被害は出た。


最終日前。


ユリは台本確認を繰り返しすぎて。


「普通の喋り方ってなんだ?」


となった。


完全に壊れた。


「ワレ……ココ……ドウ……?」


全部カタコト。


メントに。


「休め」


と言われた。


ユリは遠い目をする。


「だが」


「頑張った」


「私は頑張った」


そして。


あの日。


世界中が見た。


魔王。


悪魔。


ヴォイド。


副魔王。


世界を震わせた戦い。


その裏で。


「ヴォイド様そこです!!」


「今です!!」


「台詞!!」


「あの爆発はなに!!」


「そこ倒れる!!」


「もっと威厳を出したい!!」


「ヴォイド様喋らないで!!」


と、裏方が死にかけていたことを。


知る者は少ない。

このマナーはフィクションです、現実でやればめちゃくちゃ怒られるものになります。

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