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各地の反応:宗教国家

宗教国家カルトマイコン。


中央大神殿前広場。


そこには、

異様な空気が漂っていた。


聖女ダラク。


女騎士オーレナイ。


捕縛から戻された聖十三字軍。


S級冒険者達。


そして。


オーガ国より訪れている、

三智将、

五武人、

オーガ兵達。


本来ならば、

敵同士。


だが今は、

誰もが同じ空を見上げていた。


空に浮かぶ、

巨大な“目”。


翼を持つ異形。


その眼球が、

ゆっくりと開く。


次の瞬間。


空中へ映像が広がった。


ざわめき。


国民達が息を呑む。


映し出されたのは、

幼い少女。


和装。


薄青い肌。


巨大な角。


身体を走る紋様。


そして。


その少女は、

不敵に笑った。


『我はジュワカボース!

次代の魔王候補である!』


その瞬間。


広場の空気が凍る。


「魔王……」

「本当に存在したのか……」


司祭達ですら顔色を失う。


だが。


映像の中に、

さらに別の存在が映った瞬間。


空気は、

恐怖へ変わった。


ヴォイド。


オーガの王。


聖十三字軍を壊滅させた怪物。


その姿を見た瞬間。


後方の敗残兵達が、

息を止める。


「ッ……!」


「う、あ……」


腰を抜かす者。


吐き出す者。


震え出す者。


S級冒険者の一人、

耳長の弓使いチシャですら、

顔を青くしていた。


隣。


魔法使いジシレが、

乾いた唇を震わせる。


「……あれ、

本当にオーガなの……?」


その声には、

恐怖しか無かった。


そして。


静かに呟いた。


「……俺達、

あんなのを相手にしようとしてたのか…」


聖十三字軍の生き残り達は、

無意識に首元を押さえていた。


黒い鉄球。


投石。


潰れる鎧。


吹き飛ぶ仲間。


思い出したくもない。


だが、

忘れられない。


あの日の地獄。


その時。


映像の中で、

ジュワカボースが笑った。


『まずは我が部下達と戦ってもらおう!』


魔法陣。


悪魔召喚。


四体の禍々しい悪魔が、

現れる。


その瞬間。


オーガ兵達の顔色が変わった。


「……悪魔だと?」


「ヴォイド様がいる場所、

今ほとんど守りがねぇぞ……!」


「戻るか!?」


「無理だ!

急いでも四日はかかる!」


広場の端で、

オーガ兵達がざわつき始める。


彼らは理解していた。


今。


オーガ国は手薄。


女子ども。


老体。


最低限の守備。


その中心へ、

魔王候補が現れた。


しかも。


悪魔を召喚して。


焦り。


動揺。


五武人の一人が、

歯を剥いた。


「チッ……!」


だが。


三智将リナイズが、

静かに口を開く。


「……ヴォイド様を信じよ」


一言。


それだけで。


ざわついていたオーガ達が、

静まり返る。


ディスナイズも続ける。


「ヴォイド様は、

我らより遥かに強い」


ニズムが、

眼鏡を押し上げる。


「焦るな。

映像を見ろ」


そして。


ヴォイド様と魔王候補と悪魔四体だけが消える。


街道が作られた付近へ転移。


防壁が展開。


戦闘が始まった。


悪魔達が飛ぶ。


紫の魔弾。


土煙。


瞬間。


悪魔の頭が叩き潰される。


広場が悲鳴に包まれた。


「うそだろ!?」


「悪魔を素手で……!?」


「速すぎる!」


オーガ兵達は、

逆に歓声を上げる。


「流石だ!!」


「ヴォイド様ァ!!」


「見ろ!!

もう一体沈んだぞ!!」


悪魔が吹き飛ぶ。


投げ飛ばされる。


叩き潰される。


国民達が絶句する中。


オーガ達だけが、

誇らしげだった。


だが。


若いオーガ兵の一人が、

映像を見ながら呟く。


「……俺達も、

いつかああなれるのかなぁ……?」


その声には、

憧れと焦燥が混じっていた。


五武人の一人が鼻を鳴らす。


「訓練しろ。

死ぬほどな」


そして。


巨大悪魔。


融合。


禍々しい巨体。


それを見た瞬間。


オーガ達の空気が変わる。


「……デカすぎる」


「アレはまずいだろ……!」


「ヴォイド様でも……」


だが。


ヴォイドは止まらない。


避ける。


流す。


投げる。


叩き込む。


巨大悪魔を、

圧倒する。


その光景に。


オーガ兵達ですら、

息を呑んだ。


「……底が知れねぇ」


「ヴォイド様、

どこまで強いんだ……」


人間側は、

完全に沈黙していた。


希望も。


戦意も。


何も残っていない。


そして。


魔王候補。


ジュワカボース。


ヴォイドが刀を抜く。


その瞬間。


オーガ兵達が、

一斉に拳を握る。


「来るぞ……!」


風刃。


連撃。


爆発。


だが。


魔王候補には届かない。


「止められた!?」


「ヴォイド様の攻撃が……!?」


ざわめくオーガ達。


そして。


爆発。


吹き飛ぶヴォイド。


広場全体が静まり返る。


「ヴォイド様ァ!!」


若いオーガ兵が、

思わず前へ出る。


五武人が腕を掴んだ。


「行くな!!」


「でも!!」


「ヴォイド様を信じよ!!」


怒号。


若い兵が、

歯を食いしばる。


映像の中。


ヴォイドの肉が裂ける。


再生。


さらに爆発。


吹き飛ぶ。


倒れる。


オーガ達が、

青ざめる。


「……ヴォイド様が、

やられてる……」


「初めて見た……」


「嘘だろ……」


誰も。


こんな光景を知らない。


ヴォイドは、

常に最強だった。


絶対だった。


その存在が。


押されている。


それだけで、

オーガ達の呼吸が乱れていた。


そして。


最後。


ヴォイドが倒れる。


静寂。


ジュワカボースが、

手を差し伸べる。


『副魔王になれ』


国民達が震える。


司祭が膝をつく。


ダラクが、

絶望したように目を閉じる。


だが。


ヴォイドは。


その手を取った。


瞬間。


オーガ達だけは違った。


広場の端。


捕虜監視として残っていたオーガ兵達。


彼らは映像を見ると、

まず静かに拳を胸へ当てた。


そして。


「ヴォイド様だ」


「やはり勝てねえな」


「副魔王か……

すげえなぁ……」


誇らしげに笑った。


そこに恐怖は無い。


ただ。


“自分達の王”への信頼だけがあった。


五武人の一人が鼻を鳴らす。


「まけないと思ってた」


三智将ディスナイズは、

静かに目を閉じた。


「これで外交はさらに難しくなるな」


リナイズは小さく笑う。


「だが抑止力としては完璧だ」


ニズムは周囲の人間達を見渡す。


震えている。


泣いている。


祈っている。


その様子を見て、

静かに呟いた。


「これで、“戦争”がどういうものか、

少しは理解したでしょう」


ダラクは、

苦しそうに目を閉じた。


今まで自分達が振りかざしていたもの。


正義。


神意。


討伐。


それらがどれほど危ういものだったか。


彼女は、

理解してしまった。


そしてオーレナイは、

静かに空を見上げる。

 

(世界が変わる)


国も。


宗教も。


価値観も。


全部。


あのオーガを中心に、

動き始めていた。

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