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各地の反応:ルインズ王国

ルインズ王国。


かつては冒険者達が行き交い、

活気に満ちていた王都も、

今はどこか沈んでいた。


人手不足。


物流停滞。


物資不足。


税の増額。


ギルド機能の低下。


冒険者の減少。


街角には、仕事を失った者達が座り込み、

鍛冶屋は材料不足で炉を弱め、

食堂では薄い黒パン入りのスープが並ぶ。


そんな中だった。


空。


王都上空。


巨大な“目玉”が現れた。


翼の生えた異形。


住民達が空を見る。


だが。


誰も騒がない。


悲鳴すら少ない。


もう、日々に疲れきっていた。


やがて。


空中に映像が映し出される。


丸太壁に囲まれた村。


幼い少女。


薄青い肌。


禍々しい角。


魔王候補。


その言葉に、ようやく人々の顔色が変わる。


不安。


恐怖。


ざわめき。


そして。


映像が切り替わった。


百体の兵士に囲まれたオーガ。


赤い巨体に二本の角。


ヴォイド。


その姿を見た瞬間。


酒場の隅。


椅子に座っていた男の肩が、大きく震えた。


元A級冒険者パーティー

『ハッピーパピー』


元リーダー。


カマセ。


彼の顔色が消える。


呼吸が浅くなる。


無意識に、片脚のない断面へ触れる。


ない。


もうない。


だが。


痛む。


存在しない足が。


胃の奥が熱くなる。


耐えきれない。


口を押さえ、床へ吐瀉した。


周囲が驚く。


だが。


カマセにはもう、周りなど見えていなかった。


映像の中。


百人を超える私兵。


包囲。


その中央。


ヴォイド。


「あの時と同じだ……」


震える声。


私兵達が襲いかかる。


だが。


オーガは止まらない。


いつの間にか武器を持ち。


斬る。


砕く。


潰す。


距離。


包囲。


数。


そんなものを、全て無意味に変えていく。


「なんだよ……あれ……」


誰かが呟く。


カマセは知っていた。


あれは。


映像より恐ろしい。


実際に目の前へ立つと、本能が理解する。


“勝てない”


と。


映像の中。


さらに。


暗殺者サタモ。


知る者は少ない。


だが、裏に生きる者なら、

誰もが名前だけは知っている。


プロ。


暗殺の怪物。


そのサタモが。


ヴォイドへ魔法を放つ。


だが。


効かない。


そして。


サタモの詠唱。


その瞬間。


ヴォイドが指を向ける。


次の瞬間。


致命傷。


カマセの背筋が凍る。


「ありえねぇ……」


「オーガが……」


「遠距離魔法……?」


彼の脳裏に蘇る。


あの日。


オーガの村へ視察へ行った時。


一万の軍勢で討ちに行った時。


あの敗走。


あの恐怖。


あの時。


自分が死んでいてもおかしくなかった。


むしろ。


生きているのが奇跡だった。


映像は続く。


魔王候補ジュワカボース。


悪魔召喚。


四体。


禍々しい怪物。


王都中がざわめいた。


だが。


ヴォイドは。


怯まない。


素手。


それだけで。


悪魔を叩き潰していく。


「なんなんだよ……」


誰かが漏らす。


さらに。


悪魔達が融合する。


巨大悪魔。


あの巨体。


あの速度。


あの破壊力。


誰もが理解した。


あんなもの。


人間なら。


肉片すら残らない。


だが。


ヴォイドは倒す。


圧倒的暴力で。


そして。


最後。


魔王。


ジュワカボースとの戦い。


カマセの呼吸が止まる。


ヴォイドの攻撃。


届かない。


あの怪物の攻撃を。


魔王は動かず、

受け流している。


さらに。


魔王の攻撃。


爆発。


ヴォイドが吹き飛ぶ。


回復する。


だが。


それすら上回る破壊。


そして。


倒れる。


ヴォイドが。


あのオーガが。


酒場が静まり返る。


誰も喋らない。


やがて。


映像の中。


魔王が手を差し伸べる。


ヴォイドがその手を取り。


膝をついた。


副魔王。


その言葉が響く。


カマセは、

震える手でポケットへ触れた。


小さなペンダント。


女物。


古びた形見。


それを強く握りしめる。


「……井の中の蛙、か」


掠れた声。


自嘲。


自分は強いと思っていた。


A級冒険者。


王国でも上位。


だが。


違った。


世界はもっと広い。


もっと深い。


もっと恐ろしい。


酒場の外。


王都の空。


誰もが、ただ静かに見上げていた。


その頃。


王城。


玉座の間。


重苦しい空気。


疲れ切った大臣達が沈黙する。


痩せた将軍は顔を伏せる。


財務官は青ざめたまま、汗を流していた。


そして。


ルインズ王だけが。


映像を見つめ。


静かに呟く。


「……魔王、か」

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