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VS魔王(候補)

草原。


静寂。


黒炎の残滓だけが、

風に揺れていた。


巨大悪魔。


消滅。


その中心で。


ヴォイドが立つ。


土煙の向こう。


ジュワカボースが、

楽しそうに笑っていた。


「いやぁ」


「素晴らしいのう!」


「まさかここまでとは!」


「さすがじゃ、オーガの王ヴォイドよ」


小さな身体。


幼い声。


差し向けられた細い手。


だが。


その場の誰よりも、

存在感が重い。


ヴォイドが魔王を見る。


静かに。


そして問う。


「……お前は……強いのか?」


オーガ達が息を呑む。


五武人が目を見開く。


だが。


ジュワカボースは怒らない。


むしろ。


嬉しそうに笑った。


「うむ!」


「よい質問じゃ!」


彼女が袖を揺らす。


「確かに」


「仕える者の力量が分からねば、

どうともなるまい」


「よかろう」


「かかってきたまえ」


「一対一で戦ってやろう」


笑う。


無邪気に。


「貴重な体験じゃぞ?」


ヴォイドがゆっくり構える。


腰。


刀。


抜刀。


黒い刀身。


そこに埋め込まれた魔属石が、

淡く発光する。


風。


圧縮。


ヴォイドの姿が消える。


踏み込み。


抜刀。


斬撃。


同時。


刃先から不可視の風刃が放たれる。


だが。


ジュワカボースの周囲。


虹色。


薄い膜。


小さなドーム状障壁が展開される。


風刃が接触。


瞬間。


ギィィィィン!!


空気が軋む。


衝撃。


そして。


後方。


周囲を覆っていた巨大防護壁。


そこへ二か所の亀裂が走る。


オーガ達がざわめく。


だが。


ジュワカボース本人の障壁は、

微動だにしない。


魔王の目が輝く。


「なんじゃこれは!!」


「こんなオーガ、

一万年生きてきて初めてじゃ!」


本気で感動していた。


ヴォイドが距離を詰める。


斬撃。


連続。


高速。


常人なら見えない。


だが。


全て。


止まる。


虹色障壁。


そこから先へ刃が届かない。


ギギギギギッ!!


衝撃。


空気が裂ける。


ヴォイドがさらに踏み込む。


斬る。


斬る。


斬る。


だが。


届かない。


ジュワカボースは一歩も動かない。


そして。


ふと。


小さく笑った。


次の瞬間。


刀身。


爆発。


ドォンッ!!!


ヴォイドの腕が弾かれる。


刀が吹き飛ぶ。


遥か後方。


巨大な岩。


そこへ。


キィィィン!!


刀が突き刺さる。


まるで、

溶けかけたバターにナイフを刺すように。


深々と。


ヴォイドが止まらない。


即座に近接戦へ切り替える。


踏み込み。


拳。


連撃。


空気が爆ぜる。


だが。


当たらない。


いや。


正確には。


魔王に触れる前で、

拳が逸らされている。


風圧だけが、

ジュワカボースの髪を揺らす。


彼女は。


動かない。


ただ立っているだけ。


ヴォイドが距離を取る。


呼吸。


観察。


その瞬間。


ジュワカボースが、

ゆっくり手を上げた。


ヴォイドへ向ける。


嫌な予感。


ヴォイドが即座に後方へ飛ぶ。


次の瞬間。


ヴォイド。


爆発。


ドゴォォォォン!!


地面が吹き飛ぶ。


ヴォイドの身体が後方へ弾かれる。


胸。


腹。


肉が裂ける。


血。


骨が覗く。


オーガ達が息を呑む。


だが。


ヴォイドの身体。


傷口。


蠢く。


筋肉。


肉。


血管。


みるみる再生していく。


血が止まる。


皮膚が閉じる。


ジュワカボースの顔が、

さらに輝いた。


「おおおお!!」


「それがオーガの回復力か!!」


「素晴らしい!!」


「さらに面白い!!」


彼女が両手を広げる。


「どこまでできるか、

試したくなった!」


そして。


両手。


張り手のように動かす。


「死んでくれまいな!!」


瞬間。


ヴォイドの肉体が爆ぜる!


連続爆発。


ドォン!!


ドゴン!!


ドォォン!!


ヴォイド自身、そのものが破裂する。


ヴォイドが両腕をクロス。


防御。


だが。


無意味。


爆発。


衝撃。


吹き飛ぶ。


地面を転がる。


さらに。


爆発。


爆発。


爆発。


草原が抉れる。


土が舞う。


最後。


ヴォイドの身体が、

大きく吹き飛ばされた。


仰向け。


倒れる。


焦げた煙。


静寂。


あれだけの爆発を食らっておきながら

もうヴォイドの肉体は元あったようにと

肉を盛り上がらせている。


ジュワカボースが、

ゆっくり歩く。


虹色の防護壁が消える。


彼女は笑っていた。


楽しそうに。


本当に。


「おうおう」


「無事のようじゃのう!」


倒れるヴォイドの前へ立つ。


「久しぶりに楽しめた!」


「少しは本気を出したのじゃぞ!」


胸を張る。


誇らしげに。


「誇れ!」


そして。


小さな手を差し伸べた。


「我が手を取り」


「魔王の副魔王として」


「これから共に歩もうではないか!」


静寂。


風。


ヴォイドがゆっくり起き上がる。


焦げた革鎧。


払う。


そして。


その手を取った。


立ち上がる。


魔王を見下ろす。


ヴォイドは静かに。


片膝をついた。


臣下の礼。


その瞬間。その光景を。


空。


世界中を飛ぶ、

目玉に翼の生えた魔物達。


その全てが。


この光景を映していた。


ルインズ王国。


ドワーフ国。


エルフ領。


ダークエルフ領。


そして。


宗教国家カルトマイコン。


全世界が。


目撃する。


オーガの王。


ヴォイド。


その怪物が。


新たな魔王へ、

膝をついた瞬間を。

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