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閑話:オーガの国

森。


朝霧。


木々の間を、

重い足音が響く。


「遅い!」


怒声。


振り返る。


雌オーガ。


ツツジ。


長い黒髪を後ろで束ね、

腕を組み、

訓練中の若いオーガ達を睨んでいた。


「人間はな」


「お前らが突っ込んでくると思ってる」


一本の木枝を拾う。


地面に線を描く。


「オーガは強い」


「だが単純」


「突っ込む」


「囲まれる」


「魔法で焼かれる」


「毒を付与される」


「目を潰される」


「足を切られる」


「それが人間側の討伐方法だ」


若いオーガ達が黙って聞く。


ツツジは枝で地面を叩いた。


「なら逆をやれ」


静寂。


「囲め」


「削れ」


「逃がすな」


「突っ込むな」


「相手を疲れさせろ」


「魔法使いを最初に潰せ」


「隊長を孤立させろ」


「人間は集団じゃないと弱い」


その目は鋭かった。


「強い人間ほど」


「一人にするんだ」


―――


別区画。


木が切り倒されていく。


巨大な丸太。


ロープ。


組み上がる防壁。


登り網状。


迷路。


分断壁。


工兵役のオーガ達が汗を流していた。


「もっと角度つけろ!」


「ロープが滑る!」


「ここ隙間見えるぞ!」


木造盾を並べ。


壁と同化させる。


動く防壁。


人間から見れば森。


だが、

上から見れば。


巨大な罠だった。


―――


鍛冶場。


赤熱。


オーガ鋼。


溶解。


巨大な型へ流し込まれる。


丸い。


黒い。


鋼球。


それを持ち上げる若いオーガ。


重い。


だが。


「投げろ!」


轟音。


鋼球が飛ぶ。


丸太が砕ける。


外れた。


「脇が甘い!」


「人間の脚を狙え!」


「盾じゃない!」


「動きを止めろ!」


さらに投げる。


さらに投げる。


森に轟音が響く。


―――


別場所。


重装オーガ達。


鎧。


盾。


そこへ。


鋼球。


直撃。


鈍い音。


一体が吹き飛ぶ。


だが立つ。


「立て!」


「次!」


次。


さらに次。


肩。


胸。


脚。


受ける。


転ぶ。


立つ。


「剣はもっと痛いぞ!」


「受け流すな!受けとめろ!」


「次!」


―――


さらに奥。


魔属石。


火。


雷。


光。


爆発。


若いオーガ達が歯を食いしばる。


「避けるな!」


「受け流せ!」


「目を閉じるな!」


閃光。


轟音。


焦げた匂い。


「魔法は怖い!」


「だから慣れろ!」


「慣れた方が勝つ!」


オーガの怒声が飛ぶ。


―――


高台。


監視役。


耳を澄ませる。


地面に埋めた木筒。


振動。


「……三十」


「方向、東」


「重装あり」


「馬もいる」


別のオーガが地図へ印をつける。


伝令。


走る。


「連絡!」


「南へ移動!」


訓練。


だが、もう軍だった。


―――


中央広場。


五武人。


槍。


演習。


若い兵達を囲む。


「周囲を見ろ!」


「槍だけ見るな!」


「足音!」


「気配!」


「後ろ!」


一瞬。


槍が飛ぶ。


若いオーガの首元で止まる。


冷や汗。


「死んだぞ今」


「戦場で考えるな」


「考えるのは後だ」


―――


丸太壁の近く。


「お前はなんだ!」


「………」


「お前は壁だ!」


「………」


「動くな!壁が動くか!」


「………」


「壁に化けろ!お前は壁だ!」


「………」


「合図だ!動け!配置につけ!」


「うぉぉぉお!」


「そのまま固まれ!そこで壁になるんだ!」


「よし!良い動きだった。もう一度繰り返すぞ!」


「今の感覚を忘れるな!」


―――

村外れ。


女子ども。


老人。


荷車。


避難訓練。


怪我人役のオーガを支えながら、

森を移動する。


洞窟。


中へ。


岩を転がす。


入り口を隠す。


草を被せる。


痕跡を消す。


子ども達も黙って動く。


もう、慣れていた。


―――


そして。


ヴォイド。


高台から全てを見ていた。


工兵。


鍛冶。


訓練。


避難。


連携。


以前より。


遥かに動きが良い。


その横。


ナイザー。


メント。


二人も森を見ていた。


しばらく沈黙。


そしてヴォイドが口を開く。


「…囮になる」


二人が同時に振り向く。


「は?」


「……何言ってんだ」


ヴォイドは地図を見る。


「…俺は狙われる」


「…なら奥へ走れば」


「…追ってくる」


「…分断できる」


ナイザーが顔をしかめる。


「危険すぎる」


「囲まれたら終わるぞ」


ヴォイドは首を振る。


「…大丈夫」


「…お前らがいる」


メントが苛立ったように頭を掻く。


「だからって王がやることじゃねえ!」


ヴォイドは静かに答えた。


「…でも」


「…俺しかできない」


沈黙。


二人が黙る。


それが事実だった。


ヴォイドは速い。


強い。


目立つ。


そして。


相手は必ず追う。


ヴォイドが振り返る。


森。


村。


国。


「……守るなら」


「……危険な役は俺がやる」


ナイザーが深く息を吐く。


「……死ぬなよ」


メントも舌打ちする。


「絶対助けに行くからな」


ヴォイドが少し笑う。


そして。


角笛。


遠くで鳴る。


全員が動きを止めた。


戦の合図。


オーガ達が立ち上がる。


槍を持つ。


盾を構える。


女子どもが避難へ走る。


高台へ伝令。


工兵が壁を動かす。


全てが動き出す。


準備は終わった。


オーガの国。


ヴォイド国。


その戦が。


始まろうとしていた。

お知らせ しばらく投稿をお休みさせていただきます。 続きはかいているのですが、まとまったらまた投稿していこうかなと思います。つぎからは作者の推しが描いているキャラクターの姿をモチーフ、パロディ、二次創作させていただき、話を盛り上げていきたいなと考えています(推し様に確認は取っております)

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