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進軍。


聖十三字軍。


足並みは揃っている。


装備は万全。


士気も高い。


祈りは済んでいる。


勝利は——疑われていない。


だが——


森は、静かすぎた。


風が通る。


葉が揺れる。


それだけ。


生き物の気配が、ない。


虫も。


鳥も。


獣も。


「……妙だな」


軍団長が呟く。


その声は、抑えられている。


だが——経験が言っている。


これは“自然”ではない。


チシャも、同じ違和感を抱く。


「警戒を上げろ」


短く命じる。


だが——


遅い。


すでに。


“中に入っている”


―――


最初の違和感は


“視界”だった。


開けている。


不自然なほどに。


木が、間引かれている。


伐採ではない。


整理されている。


戦場として。


遮蔽物が、ない。


「見やすいな」


誰かが言う。


その言葉は——半分正解で、半分間違いだ。


見やすいのではない。


“見られている”


高台。


伐られた切り株。


緩やかな傾斜。


どこからでも、見通せる。


どこからでも——撃てる。


―――


その瞬間。


音。


低い。


短い。


「——来るぞ!」


次の瞬間。


上から。


横から。


斜めから。


“石”が降る。


違う。


投石だ。


だが——質量が違う。


速度が違う。


オーガ鉱石。


硬質鉱石。


密度が違う。


オーガの腕力。


人間の投石とは、比較にならない。


直撃。


一撃。


騎士が吹き飛ぶ。


盾ごと。


鎧ごと。


骨が砕ける音が、遅れて響く。


「なっ——」


防げない。


受ければ壊れる。


弾けば次が来る。


数が、多すぎる。


位置が、分からない。


高台。


木の陰。


土嚢のように積まれた切り株。


配置は——完全に分散。


射線が、重なっている。


「進め!もどるな!罠だ!」


軍団長が叫ぶ。


判断は正しい。


止まれば削られる。


だが——


その判断すら


“読まれている”


兵が、散開する。


統制を保つための動き。


だが——


次の瞬間。


矢。


重い。


太い。


短距離用の、貫通特化。


盾を、抜く。


鎧に、刺さる。


肉に、届く。


「ぐぁっ!」


悲鳴。


加護がなんのその。


速さ × 質量 = 破壊力


単純。


だが——絶対。


敵は見えない。


姿を晒さない。


徹底して。


“削る”


―――


「前に出ろ!」


チシャが踏み込む。


ここで止まれば崩れる。


だから前へ。


突破。


一点突破。


戦術として正しい。


だが——


その“正しさ”を利用されている。


前方。


わずかに開ける。


通路。


自然に見える。


だが人工。


幅が一定。


徐々に狭くなる。


誘導。


誘い込む構造。


抜ける。


広がる。


また同じ構造。


上から見れば——


“登り網”


進むほどに、選択肢が減る。


逃げ道が、減る。


だが内部にいる者は気づかない。


視界が“前”しかないからだ。


―――


「前に出ろ!」


チシャが踏み込む。


ここで止まれば崩れる。


だから前へ。


正しい判断。


だが——


その判断すら


“読まれている”


前方。


わずかに開ける。


通路のような隙間。


だんだん狭くなっているがその先は広い。


抜ける。


同じ構造が広がる。


上から見ると登り網の構造。


まさか自分が狩られる立場とは見えない。


自然に見える。


だが——誘導だ。


コーゲンが先行する。


速い。


異常な速度。


バフが乗る。


さらに加速。


「——いる」


気配。


村の奥。


黒い影。


ヴォイド。


一瞬。


目が合う。


―――


消える。


奥へ。


すさまじい身体能力。


爆発的な加速力。


「逃がすか!」


コーゲンが踏み込む。


追う。


迷いなく。


その後ろ。


コースイ。


ジシレ。


チシャ。


順に続く。


速度差。


バフによる“差の拡大”


隊列が——伸びる。


「待って!」


チシャが言う。


だが——届かない。


―――


その瞬間。


“遮断”


横から。


盾。


木造だが、周囲の壁と同化していた。


オーガ兵。


重装。


突き出す。


壁が動き出す。


物理的に。


道を断つ。


「っ!」


ジシレが止まる。


次の瞬間——


別方向からも。


同時に。


遮断。


完全分断。


「囲まれた!?」


違う。


囲いではない。


“分けられた”


登り網状に組まれた防壁が動き出す。


―――


その時。


後方。


本隊。


「聖女様!」


聖女が手を上げる。


光。


祝福。


全軍へ。


身体能力上昇。


治癒促進。


士気上昇。


完璧なタイミング。


だが——


噛み合わない。


理由は単純。


戦場が“繋がっていない”


戦場が“見えていない”


個別に分断されている。


強化されても。


合流できない。


活かせない。


―――


村の奥。


コーゲン。


単独。


速い。


だが——


その速さが仇になる。


「……チッ」


気づく。


後続が遅い。


その時。


左右。


同時。


投石。


回避。


一つ。


二つ。


三つ目。


足。


直撃。


「——っ!」


骨が鳴る。


バランスが崩れる。


その瞬間。


さらに。


雨のように。


石。


武器を落とす。


立てない。


―――

後方、コースイ。

 

コーゲンを追いかけるが、速い。

 

と、突然壁が動き。通路がふさがれる。

 

木製の盾が同化していた。

 

(罠だ)

 

 冷静に判断し、後方と合流しようと足を止め

 

 後続と合流するため後方に向き走り出す。

 

 そこには今まであった道がない。

 

 同様に囲まれている。


 そこに、槍を構えた二体のオーガ。

 

 ナイザーとメントが跳躍して現れる。

 

「まさかこんなにうまくいくとは」

 

「こうなることが分かっていたような作戦だ」

 

―――


さらに後方。


ジシレと聖十三字軍軍団長と取り巻き。

 

投石。

 

数が多い。


「やばっ……!」


足に命中。


転倒。


杖を手放す。


「くっ……!」


「ぐわあああああ」

 

「目が、目がああ」

 

「ぐえええ」


援護が来ない。


当然。


分断されている。


―――


チシャ。


十三字軍達と追いかける。


最も後ろ。


冷静。


状況を読む。


「これは——」


理解した瞬間。


上から。


横から。


後ろから。


石。


頭部。


直撃。


視界が白く弾ける。


意識が落ちる。


―――

聖女と本隊。


一番後方。村の入り口。

全体にバフをかけられる位置。

 

敵にデバフをかけられるように位置取りをする。

 

しかし、事前の作戦では本隊がオーガを削る。


オーガリーダーを出したところで、S級冒険者が狩る。

 

その際に、冒険者にバフ、オーガリーダーにデバフを掛ける。

 

成功の後押し、完全にするはずだった。

 

まさか、オーガリーダーが入り口に現れるとは。

 

全軍でかかれば対応可能と軍の統括が崩れた。

 

オーガの性格上そのまま全員を相手に戦うと思われた。

 

しかし、オーガリーダーは逃走。

 

S級冒険者たちが追いかけ、軍団長達も追いかける。

 

私の周りの守護兵たちも場の状況に困惑しながらも周囲に対して警戒を強める。

 

そこに、

メタ。

ノイド。

クロル。

ガンジー。

クライム。

 

地面よりとび出す。

 

今までなかったところから完全に気配を絶っていた。

 

囲まれている。


聖女を中心に構える兵たちが5人の槍の円舞に巻き込まれる。

 

血しぶきを上げていく。


聖女は驚きと同時に神を讃え兵たちにバフを掛けようとする。

 

その間に敵は槍を投げ捨て、腰の剣に持ち替えた。


兵が倒れる速度が上がる。


盾で剣を止める。

 

都度小さな爆発が起こり盾ごと両断される。


聖女は焦り詠唱ができない。


中心ということが全方位から迫りくる剣儀の最終到達地点と理解する。


魔法も弓も剣も槍とも何もかもが違う恐怖が彼女を襲う。


彼女を乗せた馬がいななき立ち上がる。


あわせて彼女が血の海に落ち、泥だらけになる。

 

それは、聖女というにはあまりにも汚れていた。

 

―――


静寂。


一瞬だけ戻る。


その中心。


コーゲン。


片膝。


血。


動けない。


その前に。


ヴォイド。


ゆっくり歩いてくる。


音がない。


気配がない。


だが——重い。


止まる。


見下ろす。


「……」


一拍。


「……お前」


少しだけ首を傾げる。


「見たことあるな」


沈黙。


コーゲンの目が細くなる。


ヴォイドが続ける。


「……ああ」


一歩、近づく。


「この前の」


一拍。


「最後にいたやつに……」


視線が刺さる。


「……似てる」


空気が凍る。


そこで——


場面が切れる。

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