進軍前
進軍前
宗教国家カルトマイコン
前線拠点
巨大な陣。
整然。
無駄がない。
旗が並ぶ。
白。
十三字。
風に揺れる。
兵。
五千。
その背後に——補給。
祈り。
信仰。
すべてが揃っている。
その中心。
天幕。
重厚。
静か。
中。
円卓。
集う者たち。
聖女 ジャソス=ダラク
聖十三字軍 軍団長
そして——
ガリョウホースー
四人。
空気が違う。
静かだが——張り詰めている。
軍団長が口を開く。
「最終確認に入る」
低く。
通る声。
机に広げられた地図。
山岳地帯。
森。
そして——一点。
「目標」
指が落ちる。
「オーガ拠点」
一拍。
「戦力は約百から10体減り90体」
「戦闘個体中心」
「加えて——」
視線が上がる。
ガリョウホースーへ。
「高位個体 二体」
チシャが頷く。
「確認済みだ」
コースイが補足する。
「個体性能は高い」
「だが問題はそこじゃない」
軍団長が続ける。
「さらに——」
資料をめくる。
「外交個体の存在」
「情報統制を担う個体がいると推測」
沈黙。
枢機卿が口を開く。
「つまり」
「“頭”が複数存在する可能性」
チシャが否定しない。
「少なくとも二系統以上だな」
ジシレが軽く笑う。
「やりがいあるじゃん」
軽い。
だが——場は引き締まる。
軍団長が続ける。
「加えて重要情報」
一拍。
「オーガ側より通達」
空気がわずかに動く。
「ドワーフ国」
「ルインズ王国」
「両国に対し——」
「国家樹立の宣言」
沈黙。
コースイが目を細める。
「……は?」
コースイが静かに言う。
「正式に“国”を名乗った」
一拍。
「そして——受諾された」
空気が変わる。
ジシレの笑みが消える。
「え、ちょっと待って」
「それって——」
チシャが言い切る。
「“交戦対象が国家になった”」
重い。
軍団長が頷く。
「さらに」
「襲撃者の捜索要請」
一拍。
「ドワーフ国には“協力”」
「王国には——“命令”」
静寂。
コーゲンがいない。
その空白が際立つ。
コースイが低く言う。
「強気ね」
枢機卿が笑う。
「未熟な国家ほど、よく吠える」
だが——
チシャは笑わない。
「……違うな」
一言。
重い。
その時——
気配。
いつの間にか。
コーゲンがいる。
誰も気づかない。
ただ——そこにいる。
「情報は」
一拍。
「新鮮なものに価値がある」
全員の視線が集まる。
軍団長。
「報告しろ」
コーゲン。
「周辺偵察——成功」
「未検知」
一拍。
「外周に変化」
「木製防壁」
「急造だが——合理」
コースイが即座に理解する。
「境界を作った……」
コーゲンが続ける。
「周辺の森」
「間引き済み」
「視界——確保」
軍団長の眉が動く。
「早いな」
チシャが低く言う。
「対応が異常だ」
コーゲン。
「出入口——限定」
「導線固定」
「迎撃前提」
沈黙。
コースイが呟く。
「完全に“戦場設計”ね」
ジシレが小さく息を吐く。
「ちょっと楽しくなってきたかも」
チシャが結論を出す。
「正面から行くしかないな」
軍団長が頷く。
「その通りだ」
一拍。
「我々が削る」
「崩す」
「道を開く」
視線が聖女へ向く。
「その後」
「中枢へ突入」
チシャが引き継ぐ。
「リーダーを叩く」
コースイ。
「その瞬間に戦場は崩れる」
ジシレ。
「合図は?」
チシャ。
「鏑矢」
一拍。
「音で伝える」
軍団長が深く頷く。
「それを勝利の合図とする」
沈黙。
そして——
チシャが静かに言う。
「一つ約束する」
全員の視線。
「聖女には」
一拍。
「血の一滴も降りかからせない」
空気が張り詰める。
軍団長が拳を握る。
「この命に代えても」
強い。
絶対の覚悟。
聖女が微笑む。
柔らかく。
だが揺れない。
「皆で乗り越えるのです」
静かに。
「それが人の強さです」
司祭たちが続く。
「カルトマイコンは」
「防壁、補給、情報」
「すべてが整っております」
「皆様の戦いを——全力で支えます」
祈りの声。
重なる。
「神に感謝を」
「人の団結に祝福を」
空気が一つになる。
圧。
正義。
完成された軍。
だが——
誰もまだ知らない。
その正義が。
何にぶつかるのかを。




