間に合わない戦い
宗教国家。
中枢。
石造りの大広間。
高い天井。
光は差し込むが——冷たい。
その中央。
円卓。
重鎮たちが並ぶ。
そして——
扉が開く。
四人。
ガリョウホースー。
無傷無敗。
だが——今回は違う。
つかれている。
そして。
沈黙。
チシャが一歩進む。
「報告を」
短く。
枢機卿が頷く。
「聞きましょう」
静かに。
チシャが語る。
「対象——オーガ集落」
「侵入成功」
一拍。
「結論から言う」
「通常個体ではない」
ざわめき。
だが——止まる。
チシャは続ける。
「理性あり」
「夜間巡回あり」
「防衛構造あり」
「リーダーの所在、特定可能」
コースイが引き継ぐ。
「非戦闘個体と戦闘個体が明確に分離」
「役割分担あり」
「戦闘個体の装備——異常」
一拍。
「ドワーフ製最新装備でも貫通不可」
空気が変わる。
「ただし」
チシャ。
「関節、隙を狙えば切断可能」
「実証済み」
コーゲン。
「侵入時、監視複数」
「配置合理」
「警戒度は低かった」
一拍。
「だが——今回で上がる」
ジシレが軽く言う。
「削れたよ」
空気にそぐわない軽さ。
だが——内容は重い。
「約五十」
「そのうち十以上」
「戦闘不能レベルまで損傷」
チシャが補足する。
「致命ではない」
「だが戦力としては排除済み」
枢機卿の指が机を叩く。
「続けてください」
チシャが頷く。
「最後に接触した個体」
「二体」
「強度、反応、精神力——高」
一拍。
「リーダー格と判断」
コースイ。
「現状、個別処理は可能」
「魔法は通し、支援があれば優位維持可能」
チシャが結論を出す。
「“今なら落とせる”」
沈黙。
重い。
だが——明確。
「時間が経てば」
一拍。
「困難になる」
静寂。
誰も動かない。
その中で。
枢機卿が——笑う。
わずかに。
「……なるほど」
ゆっくりと立ち上がる。
「存在してはいけないもの」
一拍。
「排除対象と認定します」
空気が凍る。
「聖女を動かします」
「聖十三字軍、出動準備」
一気にざわめきが広がる。
だが——止まる。
枢機卿が手を上げる。
静かになる。
「ただし、情報は価値です」
視線が鋭くなる。
「警戒度が上がった“今”、どのように変化するか」
「それを確認する」
頷きが広がる。
合理。
正しい判断。
その時——
扉が開く。
光が差す。
白。
静寂。
一人の女性が入る。
聖女。
空気が変わる。
全員が頭を下げる。
聖女は微笑む。
柔らかく。
だが——揺るがない。
「人の世は、脆い。だからこそ守らねばなりません」
一歩。
前へ。
「人類の繁栄のために我らは進みます」
その声は。
優しい。
だが——絶対。
その時。
別の扉が開く。
息を切らした情報員。
膝をつく。
「報告!」
枢機卿が視線を向ける。
「述べなさい」
情報員が叫ぶ。
「オーガ集落周辺!」
「変化あり!」
一拍。
「負傷個体!」
「軽装で各方面へ分散!」
ざわめき。
「さらに——」
喉を鳴らす。
「森を伐採!」
「集落方面に運搬を始めています!」
空気が凍る。
誰も言葉を出さない。
「……木材?」
誰かが呟く。
情報員。
「はい!」
「明確に——防壁構築の動き!」
沈黙。
重い。
あまりにも——早い。
チシャの目が細くなる。
(……もう動いたか)
コーゲンは何も言わない。
ただ——
目を閉じる。
枢機卿。
ゆっくりと笑う。
「……よろしい」
一拍。
「やはり“今”です」
聖女が静かに頷く。
「導きましょう」
その言葉が落ちる。
決定。
戦争が。
始まる。
だが——
誰もまだ知らない。
それが。
“間に合わない戦い”だということを。
聖十三字軍ってなんだ?




