エルフ族の使者
すみません、以前の話とタイトルが一緒だったので修正します。
内容は確認しているのですが、タイトルみてなかったorz
オーガの村。
昼。
槍の石突きが、地面を打つ。
重く。
揃っている。
ナイザー。
メント。
号令は短い。
だが——動きは完全に統制されている。
もはや“戦い”ではない。
“運用”だ。
明確な——軍。
その外縁。
見張りが、空を見上げる。
「……来る」
低い声。
もう一体が目を細める。
空。
一点。
小さな影。
揺れている。
まっすぐ飛んでいない。
落ちているのに——落ちきらない。
「撃つか」
即答。
迷いはない。
その瞬間——
影が、崩れる。
形がほどける。
羽。
光。
鷹。
だが——実体がない。
維持が、限界を超えている。
ニズムが気づく。
「……精霊使役」
短く。
次の瞬間。
鷹は——消えた。
支えを失った“本体”が、落ちる。
真下へ。
「来るぞ」
地面へ激突——
その直前。
一体のオーガが前に出る。
腕を伸ばす。
掴む。
止める。
衝撃が、消える。
「……軽いな」
地面に下ろす。
長い耳。
細い体。
エルフ。
だが——異常。
全身に裂傷。
深いものは少ない。
だが数が多い。
焼け跡。
凍傷の痕。
矢傷。
そして——
何より。
“追われた痕跡”。
「……生きているか」
誰かが呟く。
その時。
瞼が震える。
目が、わずかに開く。
焦点は——合わない。
だが。
必死に。
何かを探す。
「……オーガ……」
掠れる声。
空気が張る。
「……村……見つけた……」
一拍。
「……やっと……」
息が乱れる。
「……盆地で……見た……」
「……帰って……報告して……」
途切れる。
「……選ばれて……来た……」
全員の視線が、揃う。
「……リーダー……に……」
最後の力で。
「……届け……」
意識が落ちる。
完全に。
沈黙。
ニズムが、即座に動く。
「運べ」
短く。
「死なせるな」
数体が動く。
慎重に。
だが速い。
村の中央へ。
簡易の寝台。
布。
水。
ノゲシが駆け寄る。
呼吸。
脈。
瞳。
傷。
そして——止まる。
「……魔力がほぼ尽きかけています」
小さく。
周囲が反応する。
ノゲシは、さらに観る。
一拍。
「……危ういです」
静かに。
「無理やり来ることだけの行動」
理解が走る。
ニズムの目が細くなる。
「……決死の覚悟か」
ノゲシが頷く。
「治療はできます」
手を当てる。
「でも——わかりません」
はっきりと。
「彼女の生命力はかなり弱い」
それでも。
「努めます」
手が動く。
傷を閉じる。
血を整える。
呼吸を安定させる。
だが——
“軽い”。
生命が、薄い。
その時、ヴォイドが来る。
ただ——見ている。
時間が流れる。
呼吸が、整う。
わずかに。
指が動く。
瞼が、上がる。
視界が戻る。
そして——
合う。
ヴォイドと。
一瞬。
恐怖はない。
確認。
そして——
安堵。
「……間に合った」
小さく。
ニズムが一歩前に出る。
「話せますか」
エルフは、わずかに頷く。
「……見ていました」
呼吸が浅い。
「盆地で……あなたの戦いを」
空気が変わる。
「あれを……国に持ち帰った」
一拍。
「議論になった」
「恐れる者」
「否定する者」
「利用しようとする者」
息を吸う。
「でも——」
視線が、ヴォイドに固定される。
「……私は希望だと思った」
言い切る。
「だから」
「私が来た」
ニズムが問う。
「なぜあなたが」
答えは、すぐ来る。
「一度……帰ったからです」
一拍。
「道を知っているのは……私だけだった」
静寂。
「海を回り」
「見つかり」
「逃げて」
「また隠れて」
息が荒くなる。
「三度、捕まりかけた」
傷の理由。
「最後は……飛ばした」
空を見る。
「精霊を……無理やり使って」
一拍。
「だから——これです」
自分の体を、わずかに見る。
魔力の限界を削った結果。
沈黙。
そして——
「我々では……届かない」
短く。
「だから来た」
視線が強くなる。
「助けを請うためじゃない」
静かに。
「選びに来た」
空気が止まる。
「あなたが関わるかどうかで——」
一拍。
「未来が変わる」
ニズム。
「……説明を」
エルフは頷く。
「我々の領域はここから南東」
「一万インフィードイル以上の山に囲まれている」
「越えられない」
「海しかない」
「だが——そこはダークエルフの海」
目が沈む。
「通れない」
一拍。
「つまり——閉じている」
完全に。
「だが今——崩れている」
空気が変わる。
「世界樹が枯れている」
ざわめき。
「原因はダークエルフ」
「黒の魔属石から生まれたという邪な存在」
「根を侵している」
拳が震える。
「時間がない」
「削られている」
ゆっくり。
確実に。
「どちらが先に潰れるか」
静かに。
「それだけになった」
沈黙。
顔を上げる。
ヴォイドを見る。
「来てほしい」
命令でも。
懇願でもない。
ただ——提示。
「解決できるのは」
一拍。
「あなたしかいない」
静寂。
全員が見る。
ヴォイドを。
数秒。
そして——
「……見たいな」
ぽつり。
それだけ。
一拍。
「……行くか」
エルフが、息を呑む。
ヴォイドは立つ。
迷いはない。
それだけで——決まる。
ナイザーが動く。
メントが頷く。
ニズムが即座に構成を組む。
エルフは——
目を閉じる。
安堵。
だが同時に、理解する。
これは——救いではない。
来るのは。
“終わらせるもの”だと。




