反省会
オーガの村。
謁見の間。
即席で設えられた場。
その中央——
ドワーフ王ドヴェルグが座っている。
分厚い腕。
鍛え抜かれた体躯。
しかしその眼だけは、ただの武人ではなく“職人の頂”の色をしていた。
視線の先。
ヴォイド。
「……聞いたぞ、オーガの王」
低い声。
だが——抑えきれない熱が滲む。
「報告は受けておる」
一拍。
「だが——詳しく聞かせろ」
ニズムが一歩前に出る。
「承知いたしました」
静かに。
簡潔に。
誘拐。
追跡。
交渉。
そして——殲滅。
事実だけを並べる。
その間——
ドヴェルグの視線は、ゆっくりと逸れていく。
壁。
そこに掛けられた——一本の刀。
話が終わる。
沈黙。
ニズムが視線を向ける。
「……ドヴェルグ王殿?」
その瞬間。
「——あの武器はなんだ!!!」
爆発。
ドヴェルグが立ち上がる。
「話が入ってこんわ!!!」
指が刀を刺す。
「なんだあれは!!!」
側近が慌てて止めるが、意味をなさない。
「ドワーフの技術を総動員しても!!!」
「あんなものは出来んぞ!!!」
すでに王ではない。
ただの鍛冶師の顔だった。
「見せろ!!!」
——運ばれる。
刀。
ドヴェルグの前に置かれる。
触れる。
その瞬間、空気が変わる。
「……オーガ鉱」
低く。
「比率は二」
「鋼が八」
指が刃をなぞる。
「だが——」
声が変わる。
「結晶構造が違う」
刃を持ち上げる。
「打っているな」
「加熱、打撃——」
目を細める。
「繰り返し……十三以上」
吐き出すように。
「馬鹿げておる」
刃を返す。
「この硬度で片刃」
背を見る。
「衝撃を逃がし——折れぬ」
「それでいて、斬れる」
沈黙。
そして——
視線が一点に止まる。
魔属石。
「……これはなんだ」
低い。
だが熱を帯びる声。
「溶解しているのに——死んでおらん」
理解が進む。
「魔力は流す側で制御」
一拍。
「つまり——触れずとも発現する」
顔が上がる。
「刃か」
「あるいは——爆ぜるか」
沈黙。
そして——
「……はは」
小さく笑い。
次の瞬間——
「ははははは!!!」
爆発。
「なんだこれは!!!」
「こんなものは武器ではない!!」
一歩踏み出す。
「概念だ!!!」
誰も止められない。
ドヴェルグは叫ぶ。
「魔属石はこれまで“死んだ石”だった」
吐き捨てる。
「使えぬ」
「不安定」
だが——
刀を掲げる。
「これは違う!!!」
声が鍛冶場に響く。
「武器を持てぬ者が——持てるようになる!!」
「魔法を使えぬ者が——使えるようになる!!」
一歩。
「革命だ!!!」
空気が震える。
だが——
ドヴェルグの顔が変わる。
熱が、冷える。
「……だが」
低く。
「強すぎる革命は——自らを斬る」
静寂。
「均衡が崩れる」
「弱者が牙を持ち——強者もまた狩られる」
刀を見下ろす。
「世界が、変わる」
一拍。
ゆっくりと——刀を返す。
メタへ。
「よいか」
低く。
「これは制限せよ」
断言。
「作り方を見せるな」
「誰にも教えるな」
視線がヴォイドへ向く。
「余も聞かぬ」
静かに。
「教えを乞うこともせぬ」
「口外もしない」
胸に手を当てる。
「誓おう」
空気が変わる。
そこにいるのは、職人ではない。
王だ。
ドヴェルグは息を吐く。
未練を断ち切るように。
そして——
視線を上げる。
村全体へ。
囲いはない。
門もない。
風が抜ける。
静かすぎる。
眉が歪む。
「……さて」
声が変わる。
重く。
「武器の話はここまでだ」
一歩前へ。
「次は——防衛だ」
空気が締まる。
ニズムが姿勢を正す。
ドヴェルグは腕を広げる。
「村としては——いい」
一拍。
「だが」
低く。
「貴様らはもうその段階ではない」
沈黙。
「外に知られた時点で——標的だ」
周囲を指す。
「囲いがない」
「門がない」
「制御がない」
空を見上げる。
「上も空いている」
吐き捨てる。
「すべて開門しているのと同じだ」
一歩。
「兵がいる?」
鼻で笑う。
「関係ない」
低く。
「兵はいても——塀がなければ意味がない」
重く落ちる。
「侵入されたのだろう」
事実。
「つまり——守れていない」
さらに。
「一度許せば、二度目は来る」
視線がヴォイドへ向く。
「次は子どもか」
「幹部か」
「あるいは——王か」
静寂。
ドヴェルグは腕を組む。
「我が国は同盟を結んだ」
低く。
「だから言う」
一歩。
「このままでは——守れん」
沈黙。
「対策を講じろ」
短く。
「技術は貸す」
「資材も出す」
「人も動かす」
一拍。
「だが——」
指を突きつける。
「考えるのは、貴様らだ」
静寂。
ニズムが前に出る。
「……ご指摘、痛み入ります」




