表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/108

宴会

オーガの村。


数日後。


昼。


ノゲシは——立っていた。


包帯はもうない。

痩せは残る。だが、血の色は戻っている。


風に揺れる髪。

その奥の目だけが、確かに前を向いている。


子どもたちが、周囲を埋める。


「ノゲシせんせー!」

「よかったぁ……!」

「もうどこにもいかないでね!」


小さな腕が伸びる。

抱きつく。

泣く。

笑う。


そのすべてを、ノゲシは一度受け止め——

ゆっくりと息を吐いた。


「……ごめんなさい」

「心配、かけましたね」


一人ずつ。

頭を撫でる。


弱い力。

だが——確かに“ここにいる”手。


少し離れた場所。


ニズムが見ている。


評価ではない。

計算でもない。


ただ——確認。


ノゲシが顔を上げる。


視線が合う。


一瞬。


そして——微笑む。


ニズムは何も言わない。


だが——肩の力が、わずかに抜ける。


夜。


宴。


酒。

肉。

火。


笑い声が広がる。


王国からの書状が読み上げられる。


「ボーダイ家の行動は、王国として関知していない」

「爵位剥奪」

「当主逃亡」

「財産接収、補填に充当」


ざわめき。


「逃げたか」


吐き捨てる声。


ニズムは静かに盃を置く。


「……想定の範囲内でございます」


それ以上は言わない。


ヴォイドもまた——沈黙。


酒を一口。


その時。


子どもたちが駆け寄る。


「ヴォイドさま!」

「なんかやって!」

「すごいの!」


制止の声が上がる。


「やめろ」

「今は——」


ヴォイドが、手で止める。


空気が止まる。


少し離れた場所へ。


胸当てを置く。


戻る。


座る。


指を向ける。


緑。


——発射。


空気が裂ける。


胸当てが弾き飛ぶ。


無傷。

だが——衝撃だけが残る。


一拍の静寂。


次の瞬間——


「すげぇぇ!!」

「まほうだ!!」

「むえーしょーだ!!」


歓声が爆発する。


ヴォイドはわずかに目を細める。


次。


中指。


赤。


炎。


——着弾。


再び胸当てが跳ねる。


熱だけが残る。


子どもたちは跳ねる。


「ぞくせーいっぱいつかえる!!」

「ちがう!!いろがちがう!!」

「まほうつかいだ〜!!」


笑い声が弾ける。


だが——


大人たちは違う。


誰も、笑っていない。


酒を持つ手が止まる。


視線が、揃う。


ヴォイドへ。


「……あり得ん」


ナイザーが低く。


メントが続く。


「オーガに、魔力はほぼない」


三智将の一人。


「詠唱もない」

「媒体もない」


五武人の一人。


「なのに——発動している」


沈黙。


(普通は、できるはずがない)


理解が——拒否される。


それでも、現実はそこにある。


夜。


深夜。


火は落ちる。


静寂。


集まる。


ナイザー。

メント。

三智将。

五武人。


中央。


ヴォイド。


ニズムが前へ。


「ご無事の帰還、ならびに奪還——お見事にございます」


一拍。


「加えて、遠方より観測していた者たちからの報告がございます」


視線が鋭くなる。


「戦闘中——武装の“突然の出現”を確認」

「高い機動力。跳躍、加速ともに常識外」

「そして——魔法の行使」


静かに。


「いずれも、オーガでは本来不可能な挙動でございます」


一歩、踏み出す。


「……あれは、魔力でございますか」


沈黙。


ヴォイドは答えない。


ただ——


小刀を取る。


腕へ。


刺す。


沈む。


肉が、飲む。


消える。


数秒。


塞がる。


完全に。


静寂。


ヴォイド。


「……違う」


短く。


空気が揺れる。


ニズム。


「では——何でございますか」


一拍。


ヴォイド。


「……命」


沈黙。


意味が、遅れて落ちる。


誰かが息を呑む。


ニズムの目が細くなる。


「生命力を——変換している」


試す者が出る。


石を持つ。


意識を向ける。


発動。


——できる。


だが。


「っ……!」


息が乱れる。


膝が揺れる。


視界がぶれる。


止まる。


「……重い」


肩で息をする。


「削られる……」


別の者。


「体力じゃない」

「もっと奥だ」


胸を押さえる。


「……生きる力だ」


ニズムがまとめる。


「生命力の一部を消費し、現象へ変換している」


一拍。


「それを擬似的に“魔力”として扱っている」


沈黙。


理解と同時に——


恐怖。


ヴォイドが石を拾う。


撃つ。


止まる。


五秒。


再び撃つ。


変わらない。


ニズムの声が低くなる。


「……回復速度が異常」


静かに。


「生命力の再生に特化している」


結論。


「ゆえに——枯渇しない」


空気が変わる。


同じ行為。


だが——意味が違う。


他は削る。


ヴォイドだけが、回る。


循環する。


沈黙。


そして——


ヴォイドが言う。


「……やめとけ」


短く。


全員が見る。


「…使いすぎるな」


一拍。


「…削れる」


さらに。


「…疲れる」


それだけ。


だが——


誰も軽く受け取らない。


命を使う力。


それを“疲れる”で済ませる存在。


理解する。


これは——武器ではない。


代償だ。


ニズムが、ゆっくりと頭を下げる。


「……お見事にございます」


敬意。


理解への。


ヴォイドは少しだけ考え——


小さく笑う。


「……大変だった」


その一言で。


すべてが、静かに締まった。

ネタばらし回になります。

オーガの魔法行使には体力を魔力に変換して打ち出すという設定でいこうかと

魔法を使うためには体力が削られるみたいな

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ