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戦後処理

戦の後。


しばらくの時間が流れていた。


森の焦げ跡は薄れ、土は踏み固められ、風の流れも落ち着いている。


だが——変わったものは、そのまま残っていた。


動いたのは——ドワーフ国だった。


早い。


誰よりも早く。


戦が終わったその直後から、すでに動き出していた。


山を越え。


森を抜け。


オーガの村へと至る道を——整え始める。


石が運ばれる。


切り出される。


積まれる。


均される。


ただの道ではない。


荷が通るための道。


重さを受けるための道。


崩れない道。


街道。


三つの地を繋ぐ線が、確かな“形”として刻まれていく。


ドワーフ国。


ルインス王国。


そして——オーガの地。


同時に——


建つ。


建物。


木ではない。


石でもない。


組み合わされた構造。


金属と石と木材。


それぞれの強度を活かした“骨格”。


ドワーフの技術。


強く。


早く。


正確に。


無駄がない。


歪みがない。


オーガたちは——手を出さない。


任せる。


任せて、問題がないと知っている。


実際——問題は起きない。


武具も同じだった。


運ばれてくる。


槍。


刃。


防具。


以前のものとは違う。


重く。


硬く。


そして——オーガに合わせている。


長さ。


重心。


握り。


すべてが調整されている。


すでに、“人間基準”ではない。


流れも変わる。


交易。


食料。


素材。


技術。


往来する。


止まらない。


ドワーフが整え。


ドワーフが流し。


ドワーフが繋ぐ。


ルインス王国からは——賠償が入る。


金貨。


銀貨。


物資。


人手。


数が、異常だった。


積まれる。


運ばれる。


崩れないように固められた箱。


開けば——金の光。


銀の鈍い輝き。


市場の価値を超えている。


過剰なほどに。


だが——止める者はいない。


それが“条件”だった。


受け取り。


流し。


使う。


その全てを——


オーガは、ドワーフに任せた。


直接、握らない。


溜め込まない。


回す。


その方が、速いと知ったからだ。


ドワーフは、それを理解している。


価値を止めない。


流し続ける。


結果——


金貨も銀貨も、


物資も技術も、


一度ドワーフ国を経由し、


最適な形でオーガの地へと流れ込む。


無駄がない。


偏りがない。


だから——増える。


気づけば——


家が増えていた。


以前の簡素な住居ではない。


広い。


高い。


強い。


骨組みが違う。


屋根が違う。


雨を弾き、風を流し、熱を逃がさない。


ヴォイドの家も——変わっていた。


広い。


以前とは比べものにならない。


柱が太い。


空間が大きい。


だが——


本人は気にしていない。


「……広いな」


それだけ。


他の家も同じだった。


整っている。


並んでいる。


機能している。


村だった場所は——


もう、村ではなかった。


囲いはない。


壁もない。


だが——


機能している。


統率され、


流れがあり、


役割がある。


それはもう——


国だった。


しばらく経った今では、


それは“当たり前”として存在している。


違和感はない。


最初からそうだったかのように。


人が行き来する。


ドワーフ。


人間。


そしてオーガ。


交わる。


物が流れる。


情報が走る。


止まらない。


 


その中心。


広間。


ヴォイドは座っている。


いつもと同じ場所。


同じ姿勢。


変わらない。


横では——


ナイザーとメントが立っている。


静かに。


その前。


ニズムが報告を終える。


長い。


正確な言葉。


街道の延伸。


交易量の増加。


金貨の流入。


銀貨の分配。


技術移転。


人員配置。


すべてを述べる。


滞りなく。


「——以上です」


静かに締める。


沈黙。


ヴォイドは——


少しだけ、視線を動かす。


「……そうか」


短い。


それだけ。


ニズムは頭を下げる。


「滞りなく進めます」


一言。


 


ヴォイドは、細かいことを知らない。


街道がどこまで伸びたかも。


どれだけの金貨が積まれたかも。


銀貨がどこへ流れたかも。


知らない。


ただ——


すべてが、うまくいっていると感じている。


だから、任せる。


それで——回る。


 


周囲は知っている。


理解している。


この構造を。


この流れを。


価値がドワーフ国を経由し、


最適化され、


オーガの地を肥やしていることを。


だが——誰も言わない。


言う必要がない。


 


「……うまくやったな」


ヴォイドが、ぽつりと言う。


それだけで——


全てが肯定される。




オーガの村は国として、すでに完成していた。


豊かさは、流れとして定着している。


拡張も、成長も、止まらない。


王だけが、


それを深く理解しないまま——


ただ、中心にいる。


それで——


すべては、回っていた。

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