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イカサマ

スパイダーウェブ。


裏VIPエリア。


賑わう会場。


歓声。


拍手。


誰かの怒号。


笑い声。


その全てを聞きながら。


俺は。


さっき蒸し上がったニクマイを口へ運んだ。


……うまい。


ほのかな甘み。


粒の一つ一つがしっかりしている。


噛めば。


もちり。


ぷつり。


心地よい食感が続く。


香りもいい。


主張しすぎない。


だから。


肉の邪魔をしない。


焼いた肉。


溢れる肉汁。


それを吸ったニクマイは。


本当に美味しかった。


不思議だった。


初めて食べたはずなのに。


どこかで知っている気がする。


懐かしい。


そんな味だった。


しかも。


一つの実から。


一人が十分満腹になるほど炊き上がる。


源種。


そう呼ばれるものなら。


もっと美味くなるらしい。


あの砂漠。


地平線まで広がっていたオーガ草。


あれを思い出す。


……楽しみだ。


みんな喜ぶ。


きっと。


いいものだ。


横では。


クリエイが何か話していた。


義手。


義足。


新しい技術。


色々言っていた。


全部は分からない。


でも。


義手を作りに来てくれるらしい。


楽しみだと思った。


すると。


マダムが止めた。


契約書。


借金。


同盟。


難しい話。


ディスナイズも真剣に話していた。


数字がたくさん出てくる。


金貨。


契約。


違約金。


よく分からない。


見ていたら。


マダムが笑った。


「なら賭けましょう。」


それは分かった。


賭け事。


面白そうだった。


ここへ来る途中。


館の中も面白かった。


豪華な部屋。


変わった飾り。


隠し通路。


壁の向こう。


光る街。


知らないものばかりだった。


見ているだけで飽きなかった。


マダムは。


難しいルールは嫌でしょう?


と言っていた。


だから。


簡単な遊びにしてくれた。


色。


数字。


絵柄。


当てる遊びらしい。


準備の時間。


ディスナイズが色々説明してくれた。


「確率」


「期待値」


「倍率」


難しい。


当たるか。


外れるか。


それだけじゃないのか。


よく分からなかった。


始まる前。


色んな人が話しかけてきた。


偉そうな人。


強そうな人。


派手な人。


ディスナイズが全部対応してくれた。


助かった。


俺は。


何を話せばいいか分からなかった。


蜘蛛娘のディーラーも来た。


真っ直ぐ俺を見て。


胸へ手を当てる。


「私は」


「ディーラーとして」


「誇りを持って勝負いたします」


そう言った。


……どういう意味だろう。


分からなかった。


勝負が始まった。


四回戦。


ほとんど互角。


マダムはすごかった。


魔王札。


迷わず当てた。


みんな驚いていた。


俺も。


すごいと思った。


でも。


やり方は分かった。


札を見ていた。


追いかけていた。


だから。


俺もやろうと思えばできた。


最後は。


数字だけわかった。


絵柄は。


よく分からなかった。


だから。


半分賭けた。


外れても仕方ない。


そう思った。


結果。


当たった。


会場は騒いでいた。


どうして。


そんなに驚くのか。


少し不思議だった。


勝負が終わる。


マダムが。


ため息をついた。


そして。


笑いながら聞いてきた。


「ねぇ」


「私をどうしたいの?」


考える。


何か欲しいもの。


……マダムにはない。


首を振る。


「……特に」


マダムが固まる。


周りも静かになる。


俺はクリエイを見る。


小さい。


目が金貨みたいになっている。


色々作れるらしい。


だから。


頭を下げた。


「……義手」


「……作ってほしい」


「……よろしくお願いします」


クリエイがぽかんとする。


マダムも。


ディスナイズも。


蜘蛛娘達も。


誰も何も言わなかった。


静かな会場。


俺は。


最後のニクマイを口へ運ぶ。


……やっぱり。


肉と一緒が一番美味い。


そう思った。

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