賭博
裏VIPエリア。
中央卓。
国家賭博卓。
巨大な円卓。
周囲には。
王族。
商会長。
鉱山王。
海賊王。
大貴族。
冒険者ギルド長。
世界中の金と権力が集まっていた。
そして。
その全員が見ている。
オーガ王。
ヴォイド。
蜘蛛の女王。
マダム。
ディーラーが拡声器を掲げる。
「国家賭博」
「第一戦を開始します」
歓声。
拍手。
笑い声。
チップが飛ぶ。
金貨。
魔属石。
権利書。
借用証。
国家予算。
全てが飛び交う。
その中心。
マダムは楽しそうだった。
身体中の目。
その全てが動く。
カード。
ディーラー。
観客。
照明。
全部を見ている。
ディーラーは新しい魔紋札を開封した。
封印紙。
魔力印。
完全新品。
それでも。
マダムの目は離れない。
蜘蛛娘ディーラーが笑う。
「見ても無駄ですよ?」
マダムも笑う。
「見るのが趣味なの」
その瞬間。
カードが舞った。
バサァッ!!
観客がどよめく。
速い。
速すぎる。
縦。
横。
回転。
反転。
重ね。
崩し。
混ぜる。
誰も追えない。
だが。
マダムの目だけが追っていた。
そして。
気付けば。
四枚。
二人の前に並んでいた。
前。
後。
左。
右。
裏向き。
静寂。
ディーラーが告げる。
「第一戦」
「国家予算チップ」
「各百枚」
「倍率反映方式」
「開始」
歓声。
マダムが微笑む。
「先攻ね」
ヴォイド。
頷く。
分かっていない。
だが。
楽しそうだった。
マダムは左の札を見る。
いや。
見ていない。
観察している。
そして。
宣言。
「左」
「青」
倍率一・五倍。
ざわめき。
堅い。
手堅い。
観客達が頷く。
「らしいな」
「様子見か」
「まずは確率を見る」
ディーラー。
記録。
次。
ヴォイド。
沈黙。
考える。
考える。
考える。
そして。
ぽつり。
「右」
「ドラゴン」
三倍。
一気に会場がざわつく。
「おい」
「初手で?」
「三倍だぞ?」
ディスナイズが頭を抱える。
「ヴォイド様ぁ……」
マダムが笑う。
「攻めるわね」
ヴォイド。
肉串を食べながら頷く。
「なんとなく」
会場。
静まり返る。
ディスナイズ。
天を仰ぐ。
「なんとなく……」
第二宣言。
マダム。
「前」
「偶数」
二倍。
さらに堅い。
着実。
安全。
誰もが納得する選択。
そして。
ヴォイド。
札を見る。
マダムを見る。
また札を見る。
そして。
言った。
「左」
「世界樹」
三倍。
ざわっ。
観客が動く。
同じ場所。
マダムが指定した札。
そこへ被せた。
マダムの眉が少し動く。
「へぇ」
第三宣言。
マダム。
笑う。
「なら」
「左」
「世界樹奇数」
六倍。
観客が沸く。
来た。
読み合い。
相手の宣言へ乗せる。
高倍率。
これが魔紋札。
ヴォイドは少し考える。
そして。
首を傾げた。
「じゃあ」
「左」
「世界樹七」
四十倍。
会場。
完全沈黙。
ディスナイズ。
固まる。
「は?」
クライムも固まる。
「待て待て待て」
ナイザーが叫ぶ。
「当たるわけねぇだろ!!」
観客達も笑う。
「初心者だ」
「無茶だ」
「終わったな」
「四十倍なんて」
マダムだけが笑わなかった。
身体中の目。
その全てが。
初めて。
ヴォイドを見た。
ディーラー。
宣言。
「公開します」
一枚目。
後。
ゴブリン十一。
外れ。
歓声。
二枚目。
前。
ドラゴン四。
マダム成功。
拍手。
三枚目。
右。
青ドラゴン九。
ヴォイド成功。
ざわめき。
そして。
最後。
左。
ディーラーが札を返した。
そこにあったのは。
青。
世界樹。
七。
静寂。
誰も声を出せなかった。
ヴォイドの宣言。
完全一致。
四十倍。
観客席。
爆発。
「はぁぁぁぁぁ!?」
「当てたぁぁぁ!!」
「なんでだ!!」
「ありえん!!」
ディスナイズが立ち上がる。
「なぜですか!?」
ヴォイドは少し考えた。
そして。
本当に不思議そうに言った。
「マダムが」
「そこを気にしてた」
静寂。
マダム。
数秒。
ぽかんとする。
そして。
大笑いした。
「あははははははは!!」
会場が揺れる。
蜘蛛娘達も笑う。
「見てたの札じゃないんだ……」
「マダム見てたんだ……」
マダムは涙を拭った。
「面白いわ」
「本当に」
「面白い」
そして。
国家予算チップ。
第一戦。
ヴォイド国。
大幅優勢。
第二戦へ向けて。
会場の熱気はさらに上がっていった。




