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マモンフダ

裏VIPエリア。


中央特別卓。


巨大な円卓。


黒曜石。


金装飾。


その周囲へ。


ヴォイド達が座っていた。


周囲では。


国家予算。


鉱山権。


港湾権。


軍事契約。


様々なものが飛び交っている。


だが。


今。


全員の視線は。


マダムへ集まっていた。


マダムは上機嫌だった。


机へ。


一組の札を置く。


カシャン。


美しい。


黒と金。


赤と銀。


独特の紋様。


クリエイが身を乗り出す。


「おおこれはこれは」


マダムが笑う。


「魔紋札」


「世界で一番有名な賭博遊戯よ」


ディスナイズの顔が曇った。


「嫌な予感しかしません」


「褒め言葉ね」


マダムは気にしない。


札を広げる。


ゴブリン。


ドラゴン。


世界樹。


エルフ紋。


四種。


そして。


一枚だけ。


異質な札。


漆黒。


巨大な角。


王冠。


玉座。


クリエイが目を輝かせた。


「魔王札や!」


「その通り」


マダムが嬉しそうに頷く。


「全部で五十三枚」


「通常札五十二枚」


「魔王札一枚」


「これで勝負するわ」


ディスナイズが眉をひそめる。


「どのような遊戯ですか」


マダムは札を混ぜた。


流れるような手つき。


観客席から歓声が上がる。


慣れている。


この女。


絶対慣れている。


「まず四枚引く」


「相手には見せない」


「そして」


札を置く。


前。


後。


左。


右。


四方向。


「配置する」


クリエイが頷く。


「ほうほう」


マダムが続ける。


「そして宣言」


「左は緑」


「前はドラゴン」


「後は偶数」


「右は七以下」


そういう風に予想する。


ディスナイズが理解する。


「推理ですか」


「半分正解」


マダムは笑う。


「問題はここからよ」


札を一枚持ち上げた。


「宣言には倍率がある」


空気が変わる。


ギャンブラー達が笑う。


来た。


そういう話だ。


「色だけなら安い」


「絵柄なら三倍」


「数字ならさらに上」


「単一数字なら十倍前後」


「完全指定なら四十倍以上」


クリエイが吹き出す。


「アホやろ53分の1やろ」


「当たるかそんなもん」


マダムが満面の笑みになる。


「そう」


「だから面白いの」


ディスナイズが頭を押さえた。


「無謀です」


「期待値が合いません」


「普通は選びません」


マダム。


即答。


「だから負けるのよ」


周囲が笑う。


完全に賭博狂だった。


ヴォイドだけが黙っている。


札を見ている。


よく分かっていない。


ナイザーが小声で聞く。


「理解したか?」


「……少し」


「本当か?」


「……たぶん?」


絶対分かっていない。


ディスナイズは察した。


だが聞かない。


怖いから。


マダムはさらに続けた。


「そして」


「疑念」


空気が少し張る。


ギャンブラー達が反応した。


「出たな」


「一番嫌いなルールだ」


マダムが笑う。


「一回だけ」


「相手の宣言へ」


「嘘読みだ」


と言える。


クリエイが首を傾げる。


「なんやそれ」


「相手が外したら倍率半減」


「当たっていたら二倍」


沈黙。


クリエイ。


固まる。


「いや怖っ」


「楽しいでしょ?」


マダムは嬉しそうだった。


完全に性格が悪い。


ディスナイズがため息を吐く。


「つまり」


「情報戦」


「心理戦」


「期待値」


「ブラフ」


「全て混ざるのですね」


「ええ」


マダムが頷く。


そして。


最後の一枚。


魔王札を持ち上げた。


空気が変わる。


周囲の客達も静かになる。


「そして」


「魔王札」


誰も喋らない。


マダムがゆっくり言う。


「これが置かれた位置」


「そこへの賭け倍率は60倍」


クリエイが叫ぶ。


「インチキやん!!」


「だから皆探すのよ」


マダムが笑う。


「でも見えない」


「だから疑う」


「だから読み合う」


ディスナイズが静かに言った。


「国家間交渉には向きません」


「向いてるわ」


「向いてません」


「向いてる」


「向いてません」


「向いてる」


子供みたいな言い合いだった。


その時。


マダムが突然。


前へ身を乗り出した。


目が輝いている。


危険な顔だった。


「例えば」


「ヴォイド国の研究予算」


「例えば」


「スパイダーウェブの防衛支援」


「例えば」


「共同鉱山開発権」


ディスナイズが嫌な顔をする。


マダムは止まらない。


「例えば」


「クリエイの所属権」


「おい」


クリエイが即反応した。


「ワイ人権あるで」


無視。


「無視すんなや…」


マダムはさらに続ける。


「例えば」


「商路」


「港」


「関税」


「軍事顧問派遣」


「全部賭けられる」


ディスナイズが頭を抱えた。


「国家間の決め事は文書で決めましょう」


「味気ない」


「味ではありません」


「面白くない」


「国家運営です」


「面白いわよ?」


全く通じない。


そして。


マダムは。


最後に。


ヴォイドへ視線を向けた。


会場が静まる。


全員が見る。


オーガ王。


新興国家の王。


魔王の臣下。


世界が注目する怪物。


マダムが微笑む。


「どうかしら?」


「国家賭博」


「受ける?」


沈黙。


ディスナイズが祈る。


断ってください。


お願いします。


本当に。


お願いします。


クリエイも見る。


ナイザーも見る。


会場全体が見る。


ヴォイドは少し考えた。


そして。


口を開く。


「……いいぞ」


一瞬。


全員が固まった。


マダムも固まった。


数秒後。


大爆笑。


裏VIPエリア全体が揺れるほどの笑い声だった。


「最高!!」


「本当に最高だわ!!」


マダムは立ち上がる。


両手を広げる。


歓声。


拍手。


熱狂。


そして。


高らかに宣言した。


「特等席は閉鎖!」


「裏VIP特別卓を開放するわ!!」


「国家賭博開催よ!!」


ディスナイズは静かに天を仰いだ。


胃薬が必要だった。

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