大集合
オーガ国。
戦争終結より数日後。
ついに。
カルトマイコン方面へ出ていたオーガ軍が、
全軍帰還した。
国中央。
巨大な丸太広場。
そこへ。
三智将。
五武人。
オーガ兵達。
大量の荷車。
資材。
武具。
負傷兵。
すべてが戻ってくる。
若いオーガ達が歓声を上げた。
「戻ってきたぞ!!」
「ディスナイズ様だ!!」
「五武人だ!!」
「おお!!」
だが。
帰還したオーガ達は、
そこまで浮かれていなかった。
疲れていた。
戦争は終わった。
だが。
仕事は山ほど残っている。
情報交換。
先日の魔王との一件。
その後どうなったか。
広場中央。
簡易円卓。
ヴォイドが座る。
周囲には。
三智将。
五武人。
メント。
ナイザー。
ユリ。
静かな会議が始まった。
最初に口を開いたのはディスナイズだった。
「まず」
羊皮紙を広げる。
「宗教国家カルトマイコンとの講和条約は締結されました」
頷く者達。
「内容としては、我々オーガ国…
いえ、ヴォイド国を“亜人国家”として承認」
「周辺戦力の撤退」
「不可侵」
「交易制限解除」
「その他諸々」
リナイズが肩を竦める。
「まぁ、向こうは負けを認めてませんけどね」
若いオーガ兵達が笑う。
ニズムが続ける。
「ですが十分です」
「我々の目的は、国の存続です」
「達成されました」
静かな空気。
ヴォイドは黙って聞いていた。
その時。
別の羊皮紙が開かれる。
「次にドワーフ国です」
ざわめく。
ディスナイズが少し困った顔をした。
「同盟強化の申し出」
「資材援助」
「復興支援」
「鍛冶職人派遣」
「建築技術提供」
「技術交換」
「鉄道構想協力」
「その他多数」
読み上げながら疲れていた。
リナイズが笑う。
「完全に食いつきましたね」
「あの武器」
「あの魔属石」
「あとヴォイド様」
五武人達が笑う。
若いオーガ兵が嬉しそうに言った。
「やっぱヴォイド様すげぇな!」
メントが腕を組む。
「当然だ」
ユリは頷く。
「ヴォイド様、スゴイ」
ナイザーが溜息をついた。
「問題はここからだぞ」
その言葉で空気が締まる。
ニズムが机へ地図を広げた。
「今後」
「各国から使者が来ます」
「ドワーフ」
「エルフ」
「ダークエルフ」
「商人国家」
「冒険者ギルド」
「そして恐らく」
少し間を置く。
「魔族領」
空気が変わる。
ディスナイズが静かに言う。
「我々は今後、魔王候補ジュワカボース様の後ろ盾として動くことになります」
若いオーガ達がざわつく。
だが。
リナイズがすぐ続けた。
「ただし」
「最優先はオーガ国です」
「そこは絶対に変わりません」
ニズムも頷く。
「我々は魔王軍所属になった」
「ですが」
「ヴォイド国をないがしろにするわけではない」
「むしろ逆です」
「国として強くなる必要があります」
ヴォイドが静かに口を開いた。
「…城」
全員が顔を上げる。
ヴォイドは続ける。
「…壁」
「…住処」
「…整備」
短い。
だが。
十分だった。
ナイザーが地図へ印を付け始める。
「まず丸太建築を整理する」
「登り網式の仮設構造も一度解体だ」
「あれは戦時用だ」
「今後は定住前提で作る」
ディスナイズが頷く。
「オーガの恵み増産体制」
「外壁建設」
「区画整理」
「鍛冶区画」
「居住区」
「墓地区画」
「市場」
「あと」
リナイズが笑った。
「他種族用宿舎も必要ですね」
若いオーガ兵達がざわつく。
「他種族が常駐するのか?」
「エルフとか?」
「ドワーフとかがずっと…?」
「何かおこらねぇか怖ぇな」
ユリが腕を組む。
「イブンカハタイヘン」
メントが真顔で頷いた。
「わかる」
少しだけ空気が和らぐ。
その時。
五武人の一人メタが、
ふと思い出したように言った。
「そういや」
「帰り道で見たぞ」
「あの石碑」
空気が静かになる。
巨大悪魔との戦場跡。
そこへ立つ慰霊碑。
オーガ兵達も思い出したように頷く。
「見ました!」
「すげぇ立派だった……」
「ヴォイド様、敵まで弔うんですね……」
完全に勘違いしていた。
だが。
誰も訂正しない。
ナイザーが鼻を鳴らす。
「まぁヴォイド様だしな」
メントは少し誇らしげだった。
「当然だ」
ユリは拳を握る。
「サスガ、ヴォイド様」
ヴォイド本人だけが、よく分かっていない顔をしていた。
その後。
ディスナイズが別の書類を出す。
「あと」
「ボーダイ家跡地より回収した金貨についてですが」
空気が少し変わる。
リナイズが笑う。
「かなりありましたねぇ」
「腐っても大貴族」
ディスナイズは続ける。
「一部を、ジュワカボース様側への支援金として送ります」
若いオーガ達が少し驚く。
だが。
ヴォイドは頷いた。
「…もうした」
早い。
異論は無い。
ニズムが補足する。
「魔王候補様との連絡は密には取れません」
「向こうも常時狙われています」
「なので今後は」
「要請が来た時のみ対応」
「基本はこちらの国力増強を優先します」
全員が頷いた。
会議は続く。
復興。
外交。
食糧。
建築。
鍛冶。
交易。
国家としての話が次々進んでいく。
そして。
夜。
遥か北。
山を越え。
砂漠を越えた先。
ジュワカボースとは違う魔族領。
巨大賭博国家。
豪華な高層建築。
金。
酒。
煙。
欲望。
その最上階。
暗い部屋。
長い脚。
煙管。
赤い瞳。
巨大な蜘蛛の影が、
空中映像を見つめていた。
映るのは。
ヴォイド。
巨大悪魔を殴り潰す姿。
そして。
魔王候補との戦闘。
女は静かに笑う。
「ふふ……」
細い指が煙を撫でる。
「面白い男を見つけたわねぇ……」
煙が揺れる。
赤い瞳だけが、
暗闇の中で細く笑っていた。




