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文明が滅びた近未来で、俺の万能ナノマシンが便利すぎて静かに暮らせない  作者: 月灯り庵


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変わらないための選択

朝。


湖畔。


いつもの光。


いつもの水面。


……のはずなのに。


「……」


妙に落ち着かない。


理由は明白。


昨夜の会話。


楽園。


世界。


選択。


「……」


俺は湖を眺めていた。


特に意味はない。


……はずだった。


「珍しいわね」


背後から声。


リナ。


「難しい顔してるじゃない」


「そうか?」


「ええ」


隣に並ぶ。


自然な距離。


いつも通りの空気。


「……」


この距離。


この時間。


このどうでもいい日常。


それがこの拠点の全てだった。


「……なあ」


「もしさ」


言葉を探す。


うまくまとまらない。


「この拠点をどうにかしろって言われたら」


「どう思う?」


リナは少しだけ考えて。


すぐ答えた。


「却下」


即答。


「理由を聞いてもいいか?」


「面倒だから」


「それだけか」


「それだけよ」


あまりにもこの拠点らしい答え。


「私たちさ」


湖を見ながら続ける。


「世界を変えるために生きてないでしょ」


「……」


「ここで」


「バカやって」


「騒いで」


「だいたいノアに振り回されて」


「それだけで十分じゃない」


妙に胸に刺さる。


「……」


世界。


楽園。


選択。


未来。


全部どうでもよくなる言葉。


「……変わらないために」


気付けば呟いていた。


「何かを変える必要があるのかもな」


リナが一瞬だけ目を細める。


「……なにそれ」


「自分でもよく分からん」


だが。


感覚だけははっきりしていた。


この拠点を守る。


世界のためではない。


誰かのためでもない。


ただ今のままでいるために。


遠くで。


──ボンッ!!


「ぎゃああああああ!?」


「なぜですか!?」


「……だよな」


「ええ、だいたいいつも通りね」


楽園は今日も平和だった。


基準だけが狂っていた。

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