丁寧すぎる来訪者
「接近する車両反応を確認」
エリシアの声。
朝の拠点。
珍しく緊張感のある報告。
「外部?」
「はい」
真顔。
「……珍しいな」
この拠点。
普通は避けられる側である。
主に爆発と噴水のせいで。
「敵対反応は?」
「……不明です」
「一番困るやつじゃない」
リナ即答。
荒野側。
砂煙。
ゆっくりと接近する車両。
「警戒態勢を」
エリシアが言いかけた。
その時。
──キキィィ……
車両停止。
距離十分。
非常に慎重。
「……?」
次の瞬間。
──スッ……
白旗掲揚。
「え?」
「え?」
「え?」
全員困惑。
「なぜ丁寧」
「敵じゃないのか?」
車両から人影。
ゆっくり。
両手を見せながら歩いてくる。
完璧な非敵対ムーブ。
「……礼儀正しすぎない?」
「逆に怖いな……」
来訪者、深々と一礼。
「突然の訪問、失礼いたします」
「誰だよ」
「我々は交渉を希望します」
「交渉!?」
意味不明展開。
この拠点で最も似合わない単語である。
「……なにかした?」
リナが俺を見る。
「してない」
即答。
自信がないのが悲しい。
「敵対意志は確認できません」
エリシア分析。
「ですが……」
「ですが?」
「極めて警戒しています」
「なぜ」
来訪者の視線。
拠点を見る。
湖を見る。
噴水を見る。
ノアを見る。
「……」
微妙に震えている。
「この聖域の管理者様とお見受けします」
「違う」
ノア即否定。
だがもう遅い。
「やっぱり誤解じゃない!!」
「我々は争いを望みません」
「賢明だな……」
外部勢力の評価:
危険拠点扱い確定。
こうして。
拠点史上もっとも丁寧で、
もっとも警戒心に満ちた来訪者が現れた。




