信者視点:我らが聖域の日常
我々は選ばれし者である。
この終末世界において。
奇跡の地へ辿り着いた。
湖畔の聖域。
救済の楽園。
女神の御座す地。
「違います」
女神様は今日も謙虚であられる。
なんと尊いことか。
御姿は美しく。
御言葉は慈悲に満ち。
御業は常識を超越する。
「だから違いますって!?」
この否定こそ神聖の証。
我々は知っている。
本日の朝の儀式。
感謝の巡礼。
「おはようございます女神様!」
「違います!」
なんと慎ましき御心。
聖域は今日も平和である。
湖は輝き。
噴水は天を貫き。
建築は神秘に満ちている。
突如。
──ガコン
「ぎゃあああああああ!?」
同胞が消えた。
……試練である。
「ただの穴よ!!」
女神様は我々を鍛えておられる。
深き慈悲。
さらに奇跡。
──サラサラ……
空間に舞う光の粒子。
神の御使い。
「ナノマシンです!」
物質すら癒す神威。
壁が変わる。
庭が変わる。
建物が変わる。
「勝手に最適化しないでください!」
世界創造の再演。
この聖域はやはり特別。
疑う余地なし。
だが我々は理解している。
真の奇跡は別にある。
彼である。
「朝から騒がしいな」
女神様の最側近。
選ばれし存在。
常に冷静。
常に平然。
常に動じぬ。
なんという精神性。
なんという格。
「ただの一般人だからな?」
女神様が照れておられる。
尊い。
彼の隣。
最も安全な領域。
最も神聖な場所。
最も落ち着く空間。
「……なんか誤解されてないか俺」
さすがである。
自覚なき高位存在。
我々は確信している。
この聖域の真実。
女神様。
最側近。
湖。
噴水。
奇跡。
ここは間違いなく。
神話の中心である。
「違うって言ってるでしょおおおお!!」
本日も聖域は平和であった。
解釈だけが進化し続けていた。




