9「そもそも時間がありませんでした」
「オメェが狙われた理由は、知らねぇけどよ。“あれ”みたいな怨霊系のやつは自分と共感できる部分を持ったやつを契約者とする。怨霊なんてものは負の感情の塊だ。テメェが知らず知らずのうちに恨みを買ったか、それとも巻き添えを食らったか、ただの妬みか、どれかだろ」
ザクロの言葉はざっくりとしていて、原因を絞り込むことなどできない。
人に恨みを買わず、生きている人間など存在しない。合う合わないがあってこそ、社交界という戦場は成り立っているとカトレアは思っているのだ。
「なんであの女から怨恨を辿らねぇんだよ」
ザクロが呆れた声を出す。
カトレアはハッとそっちがあったかと合点する。
そもそも、あういうタイプの人間とは関わりたくないな〜と思いながら眼中にもなかったため、失念していた。
「そういえばあの方の名前すら知らないわ」
「マジかよ。アイツ親の仇のようにオメェを睨んでたぞ」
ザクロは若干引き気味である。
そう言われても、覚える気のなかった人物を覚えておく暇などカトレアにはなかったのだから仕方がない。
カトレアは必死にヴァイスの隣で苛立たしい、勝ち誇った笑みを浮かべていた女の情報を頭から引き出そうと唸る。
「たしか、なんとか・ルヴァ男爵令嬢だったはず」
「曖昧だな!?自分を殺した相手だろ!!もうちょい調べろよ!!」
ザクロの渾身のツッコミが入るが、カトレアはジトッとザクロを睨む。
「婚約破棄前に戻してくれたらもう少し、詳しいことが分かったんですがね」
時間がなかった事後に戻されても、その場から逃げる以外道はない。カトレアの棘にザクロは目線を逸らす。「代償が少なかったから…」と1人?一匹?で言い訳を始めた。
お待たせしまた。




